『渋谷怪談』シリーズの脚本を手掛けて高く評価され、映画監督、小説家としても活躍の場を広げている福谷 修が、その成り立ちや解釈において謎の多い童謡に着目、物語を表と裏で構成し、表の謎を裏で解くという、デュアル・ホラー・ムービーを生み出した。
子供の遊び歌として今も受け継がれている童謡。「かごめかごめ」「はないちもんめ」「ずいずいずっころばし」「とうりゃんせ」など、不思議な歌詞と旋律をもった“うた”に導かれるようにして、名門女子高内で次々に起こる陰惨な事件を描いた『こわい童謡 表の章』、そして音の分析を通して謎解きを展開していく『こわい童謡 裏の章』が一度に観られる完成披露試写会が7月3日(火)、都内ホールにて行われた。
上映前の舞台挨拶には、『表の章』に多部未華子の友人役で登場する悠城早矢、ミステリアスな合唱部の顧問を演じている霧島れいか、『裏の章』で主役を務めた安めぐみと主題歌を担当したキリト、そして福谷 修監督が登壇した。
今回が映画初主演となった安めぐみ。「もともと怖がりで、ホラー映画は正直苦手でしたが、台本を読んでみると、音響分析官という謎を解いていく役柄で、すごく面白いと思ったのでやろうと決めました。音響分析官がどういった職業なのか分からなかったので、自分なりに調べたり、プロの方が現場に来てくださったので、結構お話を伺ったりしましたね」と、映画の中でのキリリとした表情とは打って変わって、いつもの柔らかな笑顔で役作りについて語った。
会場に詰めかけたファンから歓声を浴びたキリトは「低血圧でして……」と前置きしつつ、『裏の章』の主題歌「拍動」について「ただ怖いだけの歌詞なのはつまらないかなと思って、自分なりに謎について想像を巡らせながら書きました」と熱く語った。7月25日にリリースされる初回限定盤にはPVのDVDが付いているという。「映画のシーンが結構入っていて、僕の曲ですけど、割合で言うとキリトより安さんのほうがたくさん出ている……(笑)。そのほうが売れるかな……」とつぶやき、笑いを誘った。
廃校での撮影中、怖い経験をしたかと聞かれた悠城早矢は、「トイレに夜、一人で行ったんですけど、三番目の便器の所に何かが落ちていて、ビックリしちゃったんですよ。すっごく怖くて“キャー!”と叫んじゃって。そしたら、雑巾だったっていうオチが……(笑)。夜の学校にこだまする叫び……みたいな」と、自嘲気味に笑いながらこぼれ話を披露。
一方、「怖いのが大好き」という霧島れいかは“こわい”空間を満喫できたようだ。「学校での撮影はずっと夜にやってましたから、すごく楽しみだったんですね、何か起きるんじゃないかって。で、待ち時間には結構一人でウロウロしていたんですけど、おトイレに行ったとき、鏡を見ながら手を洗っていたら、黒い影がふっと通ったんです。それがうれしくて」と、共演者仲間や観客の驚きをよそに、涼しげな笑顔で語った。
「Jホラーから一歩突っ込んだものにしたいと思い、童謡に関しても実際にある話を基にし、音響分析シーンも全て本物の機械を使用することで、リアリティーを出すことに腐心しました」という福谷 修監督。音響効果に怖い仕掛けを施したり、主題歌に謎解きを潜ませたりと、監督のこだわりが随所に発揮された『こわい童謡』。それは映画にとどまらず、小説、コミック、ケータイフィルムコミック、4Dアトラクションと、さまざまな形態でその世界を広げているので、そちらも併せて楽しむことができる仕組みだ。まずは、監督が仕掛けた恐怖を劇場で体感してみては?
登壇者:安めぐみ、悠城早矢、霧島れいか、キリト、福谷 修監督
(取材・文・写真:Maori Matsuura)