イントロダクション
ユダヤの地にアラブ人が迷い込むという、いかにも政治的な設定ながら、ここから希望と癒しの物語を作り上げたことで無名の新人監督エラン・コリリンは、世界中の映画祭で審査員と観客から温かい喝采を浴びている。2007年カンヌ国際映画祭ではある視点部門で国際批評家連盟賞、ジュネス賞、そして本作のために映画祭が特別に設けた“一目惚れ”賞の3冠を勝ち取り、新人監督としては彗星のようなデビューを飾った。
その快挙はカンヌにとどまらず、その後、ミュンヘン映画祭やカルロヴィヴァリ映画祭などでもさまざまな賞を受賞。エルサレム映画祭では作品賞を含む4冠に輝き、イスラエル・アカデミー賞では、主要8部門を総なめにするという、もはや新人にとどまらない活躍ぶりを見せつけている。そして、満を持して出品した第20回東京国際映画祭コンペティション部門では見事、東京サクラグランプリ(最優秀作品賞)を受賞。
新人監督をがっちりと支えてこのヒューマン・ドラマを作り上げたのは、イスラエルのトップ俳優たち。誇り高く、音楽一筋に生きているストイックな団長トゥフィークを演じるのは、イスラエル映画界を代表するアラブ系俳優サッソン・ガーベイ。突然現れた異国の旅人たちを温かく迎え入れる食堂の女主人ディナにはイスラエルとフランスで活躍するロニ・エルカベッツ。
ストーリー
文化交流の演奏旅行のためにイスラエルを訪れたエジプトのアレキサンドリア警察音楽隊。彼らはおそろいの水色の制服に身を包み空港に降り立つが、なんの手違いか出迎えはない。自力で目的地にたどりつこうとするが着いたのは、目指す〈ペタハ・ティクバ〉とヘブライ語で一字違いの別の町〈ベイト・ティクバ〉。ホテルすらない小さな町で音楽隊は偶然知り合った地元民の家で一泊させてもらうことになるが、相手は言葉も宗教も違い、しかも歴史的に対立してきたユダヤ民族。かみ合わない会話。ぎこちなく流れる時間……。しかし、そんな彼らを音楽がつないでいく。ジャズの名曲「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」や「サマー・タイム」、トランペットの名手チェット・ベイカーの話など、国境を越えて愛されてきた音楽が彼らを結びつけ、愛、友情、家族……人生を語り合う、忘れられない一夜が始まる。
(原題:BIKUR HATIZMORET、2007年、イスラエル=フランス合作、上映時間:87分)
キャスト&スタッフ
監督・脚本:エラン・コリリン
出演:サッソン・ガーベイ、ロニ・エルカベッツ、サーレフ・バクリ、カリファ・ナトゥール、イマド・ジャバリン、ターラク・コプティほか
ギャラリー
公開表記
配給:日活
2007年12月22日(土) シネカノン有楽町2丁目ほか全国順次ロードショー
(オフィシャル素材提供)