インタビュー

『真木栗ノ穴』木下あゆ美 単独インタビュー

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怖いというより不思議な感じの映画です。もしかしたら自分にも起こるんじゃないかな、という身近な怖さがあります

 ロマンスと死をテーマにして書かれた異色ホラー作品、山本亜紀子原作「穴」(01)の映画化。第20回東京国際映画祭「日本映画・ある視点に公式出品された『真木栗ノ穴』。主人公の小説家真木栗勉(西島秀俊)担当の編集者役で出演した木下あゆ美に会って、話を聞くことが出来た。

木下あゆ美

 1982年、愛知県生まれ。高校生のときにモデルにスカウトされ芸能界入り。テレビTVドラマ「顔泥棒」(00)で演技初挑戦。「特捜戦隊デカレンジャー」(04~)で人気を得た。「ガラスの仮面」で声優も経験し、「怨みや本舗」では主演を努める。映画『マスターオブサンダー』で得意のアクションも披露した。多方面で活躍中。

『真木栗ノ穴』に出演された感想を聞かせて下さい。

 私、推理小説がすごく好きなんですが、謎めいたお話で、最後は考えさせられるような結末になっているんです。ぜひ出演したいと思いました。

本作はサスペンス・ホラーということですが、どちらの要素が強いのでしょうか?

 私はホラーという感じがあまりしないのですが、観たり読んだりする方によってそれぞれの印象が違うんじゃないかな、と思います。

ホラーは苦手ですか?

 怖がりなので、すすんで観たりはしないですね。でも、演じるのは好きです。「キャーッ」って叫んだりするのって、普段はあまり出来ないので、やってて気持ちいいなって思います(笑)。

モデルから女優に転身されましたが、演技をしていく上での楽しさや苦しさは感じてられていますか?

 楽しいことが多いです。いつまでも発見があるというか、答えが出ないというか、それが楽しみでもあり、難しいところでもありますね。ホラー、コメディー、ロマンスといろんなジャンルがあるので、もっと知りたい、もっとやりたいと、ドンドン演技にのめり込んで、欲が出てきています。

本作では編集者の役ですが、役作りは?

 編集者ということは特に意識はしないで、普通の新入社員というところを意識して演じました。自分自身、仕事に対しての初心というのはどんなものだったかな、というのを考えましたね。

主演の西島秀俊さんはどんな方でしたか?

 最初はスゴク爽やかで、真面目で、ちょっと近寄りがたい方かな、と思っていたのですが、実際にお会いしてみるといつも自然体で、力の抜けた方なんです。誰にもきさくで距離感を感じないというか、気負わずにそのままでいいんだ、と思わせてくれる方で、とてもやりやすかったですね。

西島さんの演技から学んだことはありますか?

 私はどうしてもいろいろ考えすぎてしまったりするのですが、西島さんはそういうのが全くない方だったので、力を抜くことも大事なんだな、と教えられました。お芝居を始めるとすごい集中力を出す方なので、見ていて勉強になりました。

あなたは集中力を出すためにやっていることってありますか?

 現場は緊張感が漂っているので自然と気が引き締まります。今回の現場は空気のように自然に入ってほしい、と監督に言われ、そこが難しくて、どうしても力の入ってしまう自分がいて、「もっと空気を感じて」と監督に何度も言われてしまいました。

他の共演者の方との面白いエピソードはありますか?

 松金よね子(食堂のオバさん役)さんがきさくな方で、普段も常にしゃべっていらして、その内容もとても面白かったです(笑)。ホラー映画なので松金さんとキムラ緑子さんと西島さんが、「あのホテルはお化けが出るのよ」なんて、ちょっと怖い話をされているときがありましたが、西島さんは霊能者の方に「一番、霊の近寄ってこないタイプだと言われた」と話していられましたね(笑)。

本作の怖さの一番のポイントはどんなところですか?

 怖いというよりは不思議な感じなんです。どうしたんだろう? どういう風になっちゃったんだろう? って……。主人公がドンドンおかしくなっていっちゃうんですが、もしかしたら自分にも起こるんじゃないかな、という身近な怖さがありますね。

タイトルにもある「穴」ですが、人間は誰にも好奇心があって覗いてみたいものですが、どんな穴なら覗いてみます?

 いきなり顔を近づけることはできないですね。怖いものや汚いものが見えると、イヤじゃないですか(笑)。見えるのが万華鏡みたいな美しいものだといいんですが(笑)。

どんな演技が難しいですか?

 人を笑わせることがいちばん難しいと思います。私は自分がよく笑ってしまうほうなんです。ストーリーの流れの中で、これはないだろう、おかしい、と思っても演じなければいけないときがあって、この映画のそんな場面で笑ってしまっている西島さんを見て、私も笑ってしまいました(笑)。

サスペンス・ホラーという新しいジャンルの映画ということで、監督から特別な指導はあったのでしょうか?

 たくさんのことを教えていただきました。いままで自分には“こういうクセがあるな”と感じていた部分をすべて指摘されて“やっぱりそうなんだ”と改めて知らされました。私は声優もやっているんですが、滑舌だったりとか、声の部分をどうしても意識してしまうんところがあるんですが、「声で芝居をするな」と言われました。監督はとても繊細な方で、人をよく見ていられる方だと思います。

撮影現場は日々変化していると思いますが、どんな雰囲気でしたか?

 スタッフも素晴らしい方たちが揃っていて、すべてが完璧なまでに準備されていました。“さあ、どうぞ! 後は、あなた次第”という印象を受けました。

撮影期間はどのくらいでしたか? セットとロケの割合は?

 撮影は2週間で、ほとんどがロケでした。真木栗の住むアパートもロケなんですよ。鎌倉でのロケは、雰囲気があって、気持ちよくて(笑)、待ち時間も苦になりませんでした。みんなで楽しくおしゃべりしながら待っていられました。

女優として普段から心がけていることってありますか?

 体形は気になりますね。最近は半身浴に凝っています。肩こりがひどかったので、血行を良くするために湯船に入るようにしているんです。アクションを撮るときは集中して運動しますね。気分が落ち込んでいるときは運動すると気持ちがいいです。本もよく読みます。東野圭吾さんの「クライマーズ・ハイ」を読みましたが、面白かったですよ。面白い小説を読むと、是非やってみたいと思いますね。

主人公の小説家のように、自分で世界を創り上げて行くことに興味はありますか?

 空想したりするのは好きで、たまに絵や詩を書いたりしています。休みの時は本を読んだり、映画や舞台、いろいろなものを観たり聞いたりしています。

何をしているときの自分が好きですか? 今後はどんな役柄を演じてみたいですか?

 アクションをやっているときは夢中になっていて、頭で考えるよりはまず、身体で反応してしまいます(笑)。今後は今回のようなナチュラルな役もまたやってみたいんですが、大人っぽい役もやってみたいですね。

最後にこの映画の見どころを教えてください。

 前半はほのぼのした中に、笑いがあったりするんですが、後半にかけて主人公がドンドンおかしくなっていくんです。お話の展開が読めなくて、最後は“どうなっちゃうんだろう?”というところがいちばんの見どころです。いろいろ楽しめる要素がいっぱい詰まっている映画なので、是非観てください。私も毎日の撮影で成長できたと思いますので、そんな私も見てください。

 『マスター・オブ・サンダー』(2006)では元気いっぱいのアクションで魅せてくれたが、今回はナチュラルで女らしい雰囲気で演じて、魅せてくれた。今後は大人っぽい役にも挑戦した姿を是非見せて欲しい。今後の活躍が楽しみな女優だ。

 (取材・文・写真:福住佐知子)

公開表記

 配給:(株)ベンテンエンタテインメント
 ユーロスペースにてロードショー中ほか、全国順次公開

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