6月20日より全国公開が決定している映画『いけちゃんとぼく』で、いけちゃんの声を演じている蒼井 優が、作品と役柄への想いをオフィシャル・インタビューで語った。
今回いけちゃん役の声優としての出演依頼があった時は、どのように思いましたか?
いろいろなことに驚きました。キャラクター的なもの声を演じるのは初めてなんです。まず最初は、自分が演じるキャラクター「いけちゃん」のビジュアルにも驚きました。今まで、少年とか少女とか、自分と年齢は違っていても人の役でしたが、今回は人と言えば人ですが、最初の出だしはよくわからない物体なので、これに声をあてるのかと思ったし、実写映画になるということにもすごく驚きました。面白い試みをされるんだなと思って。その中でいけちゃんという大事な登場人物を私に任せてくださったってことは、すごい光栄なことだしうれしいから、すぐに“やりたい!”と思いました。
すぐこの役をやろう!と思った一番の決め手は何でしたか?
特に何かということではなかったですが、なんとなく直感で、“やりたい!”って思って。台本をもらう前に事務所の方から西原理恵子さんの「いけちゃんとぼく」の原作を渡されて、それを読んでる段階から、自分の頭ではやるという気持ちで動いていて、読み終わってやりたいなって。気持ちを後押ししてくれたのは西原さんの本でした。
原作を読んだ時の感想をもう少し教えてください。
実は自分がもうこの役をやる気で読んでいたので、“いけちゃんってどんな声なんだろう?”とかいろいろ考えながら読んでしまって、ストーリーに集中しきれなかったんです。周りの人から面白いという話をだいぶ前から聞いていたので、お仕事の話が来る前に読んでいたらもっと感動したかなとか。いろんな事を考えながら読んでたから、読み終わった時にはこれを映画でどう実写化するのかなということと、いけちゃんがどういう風に動くのな、かどういう世界観で、どうなるんだろうって。ワクワクしましたね。
脚本を読んだ時には、どう思いましたか?
言葉が活字的だなと。西原さんの言葉から使われていたところがあったので、目で読んで楽しい言葉でした。いまの子供たちが普段使わないんじゃないかな?っていうような言葉も書かれていたので、みんなこれをどういう風にやるんだろうって、それも楽しみでした。子供たちが、面白い言葉をしゃべっていることが、この作品にとってすごく面白い引っかかりを作ってくれて、原作を読んだ時に話もすごく面白いし、「いけちゃんとぼく」という世界って西原さんの書く絵と文字とストーリーという3つのどれが欠けてもいけないんだなって気がしました。これを実写化する時にまず文字とビジュアルが消えるてしまって、ストーリーしか残らない。この二つを補うには、何に変換させるのかなと思っていたんですけど、きっと監督はそこの部分で、面白い言葉を子供たちにしゃべらせたのかなって気がして、すごく面白かったです。
「いけちゃん」というキャラクターを自分の中でどんな風に作っていきましたか?
今回はオフラインを何回も見て、自分の中でいけちゃんの声が聞こえて来るまで待ったんです。脚本を読んで、いけちゃんの声ってこんな感じかなと思っていて、私もいろいろ考えましたが、その中できっとこのトーンかなっていうのを監督の前でやってみたら、監督も「そんな感じで」ということだったので、いけちゃんの元となる声、通常のテンションの時の声はこれ、と決まりました。でもいけちゃんがすごくテンションが高くなる時がたまにあるので、そういう時は監督が「もっと声を高く」とか、「そこは、もうちょっと押さえて」とか指示を出してくれました。
自分の中で、具体的に聞こえてきたいけちゃんの声というのは、どんな感じだったんですか?
やわらかい声でした。でも自分が実際にこの声を出せているか分からないから不安でした。声の変化にはとても気をつけました。
終盤になるといけちゃんに母性が出て来ますが、女性としての声とか、その変化はどんなところを意識しましたか?
台詞も今までのいけちゃんの声のトーンじゃ言えないっていう台詞だったので、脚本の台詞に忠実に演じたいと思っていました。
「いけちゃん」というキャラクターを演じるにあたり一番難しかった点はどんなところでしたか?
いけちゃんはヨシオにしか見えない存在だから、いけちゃんとヨシオの距離感で正しい声のボリュームで会話をする時と、ヨシオといけちゃんの距離は遠いけれど心の中で会話をしている時とか、そのバランスが難しかったですね。いけちゃんが空に帰っていく時は、本当ならあの距離だとあの声の大きさじゃ絶対に聞こえないはずなんだけど、その時はいけちゃんとヨシオは心の中で繋がって会話が出来ているから……。それは私が今までに経験したことがなかったことです。距離感が二つあって。こんな経験ができたこともとても面白かったですね。でも本当にあのシーンは胸が苦しくなります。ヨシオの叫び声も良いんです。思いのこもったセリフですよね。また、それをいけちゃんが言うから良いんですよね。あれが、人間と人間だったら……。私もよりいけちゃんを愛おしく思ったシーンでした。難しさについてはどのシーンも難しかったので、特にあのシーンが難しかったということではないけれど、やっぱり最後の言葉にいけちゃんの全部の思いが入らなきゃ!と思ったので、ほかのどの台詞よりも大事に扱った感覚はあります。
女性の目線で見るといけちゃんとヨシオの関係をどんなふうに思いますか?
西原理恵子さんいわく、男の子にはそういう物が見えて、女の子は現実主義だから男の子のほうが目に見えないものと会話をしてることが多いとか。目に見えても見えなくても、他の人が入れない関係の二人がすごくいいなって思います。映画でもそういうことが描かれているものはやっぱり力をくれると思うから。とても良いお話ですね。
ラブ・ストーリーとしてのヨシオといけちゃんの関係については、どう思いますか?
いけちゃんは原作が絵本でありながらラブ・ストーリーじゃないですか。恋愛ものが苦手でファンタジーものも苦手な私にとっては、こういう見せ方があったんだって、素直にすてきな話だなって思いました。夢もあるし、子供にも見ていただきたいけど、女性に一番見てほしいです。恋愛を経験した女性の心に届くと思います。本当にすてきな恋愛。すごく深い愛を描いた作品だと思います。
蒼井 優さんから『いけちゃんとぼく』についてのメッセージをお願いします。
この映画を観ると、自分の隣にいてくれる人のことをより深く見えるかなって、私は思います。その人の過去を知るとかいうだけじゃなくて、昔があって今の彼なんだって見えてくる感じがしているから、その人の今をより深く感じるんではないでしょうか。それと、主人公ヨシオのお友達の京ちゃんをより多くの人に見てもらいたいですね。「本当にかわいい」といろいろな所で話してます。いけちゃん並みに得体が知れない感じがお気に入りです。
6月20日より全国公開が決定している映画『いけちゃんとぼく』の原作者である、西原理恵子の漫画家生活25周年を記念して、渋谷パルコファクトリーにて5月1日開催の展覧会、その名も「バラハク」のオープニング・イベントが行われ、映画『いけちゃんとぼく』のキャストである、ともさかりえ、深澤 嵐と大岡俊彦監督が駆けつけた。サイバラ・ファミリーらしいアットホームな雰囲気の中、全員によるテープカットとともさかりえから西原への花束贈呈が行われた。
西原理恵子は、現在放送中のテレビアニメ「毎日かあさん」、『いけちゃんとぼく』ほか映画化公開作が2本、「この世でいちばん大事なカネの話」の大ベストセラー、連載本数は30本以上!など。今年は各方面での活躍が目覚しく、2009年はまさに〈サイバラ・イヤー〉となる。
●漫画家25周年の集大成ともなる展覧会初日を迎えた西原理恵子の談話
「昔の写真が出ていて、恥ずかしいですね。私の25年の蓄積ですが、よく働いたと思います。印刷では出ない色があるので、ぜひ原画を見てください。漫画家生活25年間の自転車操業のすべてが詰まっています(笑)。
映画『いけちゃんとぼく』を観たときは、泣きっぱなしでした。自分の生まれ故郷で撮影しているし、やられちゃいましたのでね。こんなにいい映画になるなら、もっと「いけちゃん」の絵をちゃんと描いておけば良かった(笑)。お母さん役がともさかさんでびっくりしました。こんなきれいな人はなかなかいないです」
●会場に一番乗りして展示を見て、大感激のともさかりえの談話
「西原先生の作品、展示物がすごくかわいくて、記念に写メをいっぱい撮ってしまいました! 息子と一緒に改めて来たいですね。映画『いけちゃんとぼく』ではちょっと駄目なお母さんの役でしたが楽しんで演じられました。ヨシオ役の嵐君と一緒に、すばらしい映画を監督に撮ってもらえたと思います。関西弁で話すのは大変でした」
●主人公ヨシオ役の深澤 嵐の談話
「高知の海とか山とか、とてもきれいでした。お母さんのともさかりえさんはとてもきれいで、いいお母さんでした。撮影はとても楽しかったです」
●昔は漫画家になりたかった大岡俊彦監督の談話
「やっぱり原画はいいですね。感動です。『いけちゃんとぼく』はいい映画にできあがったと思いますが、それはやっぱり西原さんの原作の力ですね」
登壇者:西原理恵子、ともさかりえ、深澤 嵐、大岡俊彦監督
公開表記
配給:角川映画
2009年6月20日より角川シネマ新宿ほか全国ロードショー
(オフィシャル素材提供)