ロングラン上映を続けていた映画「あん」が、2月6日(土)よりイオンシネマにてアンコール上映されることが決定し、主人公・徳江を演じた樹木希林が、イオンシネマむさし村山にて舞台挨拶を行った。イオンシネマむさし村山の所在エリアは、映画の撮影場所ともなった国立療養所多磨全生園の近隣ということもあり、映画にとって思い出深い場所だ。舞台挨拶は、樹木希林の一声でお客様との質疑応答に変わるなど、サプライズな展開になった。
主人公・徳江の衣装をまとい、颯爽と登場した樹木希林の第一声は「まさかね、またここに戻ってくるとは思わなかったわ! 本当に今日はありがとうございました」だった。
そして「この作品は南極大陸以外の全ての場所に行ったって聞いたんです」と本作が長く世界中で愛されていることをアピールし、本作で海外にもいろいろと足を運んだエピソードとして、外務省に渡航を見合わせて欲しいと言われるウクライナに行ったことやカタールに行った話が、希林節で語られた後、「私がしゃべってたって仕方がないから、皆さん私に聞いてみたいことなあい? つまんない質問でもいいから」といきなり来場者に投げかけ、台本とは違う来場者からの質疑応答といった流れに変わった。
まずは女性客から「役作りで難しかったことは?」と尋ねられると、「私はね、難しいことはほとんどないの。そのまま出てくるだけだから。批評の中に「樹木希林は、結局、樹木希林だった」と書かれているのですけれどね。「7~8割りは扮装で役作りが決まる」と、サラ・ベルナールが言っていたのね。あたしが言ってないのね」とお茶目に答え、「そんな具合で扮装が決まって、これでいけるなあと思いましたから。役作りにあたって一番ポイントを置いたのは、悲惨な過去。何十年も枠の中で生活しなければならなかった人の哀しみを、他人からみて演じた場合には、哀しそうに演じてしまうのね。そして本当のモデルは鹿児島の「敬愛園」(国立療養所星塚敬愛園)という所にいた人だったんだけれど、それは過酷なものだなあと思った。でも、そこにいる私のモデルになったウエノさんが本当に普通の明るいおばちゃんなのね。ウエノさんを思うと、私の役作りというのはあまり間違ってなかったかなと思うわね。どんな環境でも生きていかなきゃならない。そういう人を演じたつもりだったの。そこはポイントだったかなと思います」と自分自身が役に臨む姿を明らかにしてくれた。
続いて、二人目の女性客から本作で初共演となったお孫さんについて尋ねられると、「孫はね、ホントに孫という感覚ではなかったわね。河瀬さんが「あんまりおばあさんと口きかないように」っていうもんだから、休憩の時も遠くのほうにいて、「あ、帰ってきたの」っていうような感じ。14歳ではちょっと可哀想でした。本人がね、演じたいと言ってやったわけでなくて、14歳のちょうどこの時期を残してもらえるからオーディション受けてみたらっていうような引っ張り方だったから、ちょっと可哀想かなあという感じがしてましたけど、いま16歳になってイギリスでこの映画を観た人の反応を聞いたりすると、「ま、やってよかったかな」と思っているみたいで、ちょっとホッとしているという感じです」。
次に撮影現場での思い出については「どこにでもある街並が連なっているのをみると、なんか日本ってこんな国だったかなあと思って。街自体への思い入れはもちにくかったけど。河瀬さんが選んだ撮影の場所というのは、日差しとか風とか雰囲気とか、実によく選んでいたなあと思います」と語った。
そして最後に映画について「あたしは遅れて来た映画人なのね。映画に関わったのは、ここ10年なんですよね。だからあまり偉そうなことは言えないけど、映画はある意味、国の財産でもあるんだなあと思いました。世界をまわってみて、映画が交流の場をつくれるのだなあと実感しました。映画というのは、ぜひ足を運んで観ていただきたいです」と締めくくった。
登壇者:樹木希林
公開表記
配給:エレファントハウス
2016年2月6日(土)より順次、全国のイオンシネマ82館にて アンコール上映
(オフィシャル素材提供)