15歳の元日に集団レイプに遭い、加害者の男たちへの復讐だけを胸に生きてきたという雪村葉子による衝撃的な手記(ブックマン社刊)を、精神科医の和田秀樹監督が映画化した映画『私は絶対許さない』。主人公の葉子役の平塚千瑛のオフィシャルインタビューが到着した。
本作は主人公目線ですべてが撮影される主観(POV)撮影で、よりリアルにレイプ・シーンなどを描いており、精神科医ならではのトラウマを描く新感覚社会派エロス作品。
脚本には、寺島しのぶがベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した『キャタピラー』(監督:若松孝二)の共同脚本や『花芯』(監督:安藤 尋)、『四十九日のレシピ』(監督:タナダユキ)等の黒沢久子、撮影監督には、『ラヂオの時間』で日本アカデミー賞優秀撮影賞を受賞した高間賢治、音楽には、2008年プッチーニ国際賞を日本人で初受賞した世界的音楽家・三枝成彰、編集にはほとんどの北野武作品を手がけ、日本アカデミー賞最優秀編集賞を受賞した太田義則など、実力派が集結した。
平塚千瑛
1985年山形県出身。 2011年「ミスアース・ジャパン」ファイナリスト。2012年「ミスユニバース・ジャパン」セミファイナリスト。 2013年「ベストボディジャパン」グランプリを受賞、2017年にはファースト写真集「Birth」が発売。 現在は映画、ドラマ、舞台など芝居芝居を中心とした活動を積極的に行っている。
本作の脚本はどのタイミングで読んだんですか?
オーディションを受けた後にすぐ原作を読みました。読み終わった後に、「この役は私が絶対やりたい!」と思っていたところに、合格の通知が来て、すぐ脚本を頂きました。
最初に原作・脚本を読んだ時の映画全体と葉子役についての感想はいかがでしたか?
原作の雪村葉子さんは、考えられない程いろいろな経験をされています。「全身整形をしたから自信を持って強くなった」と捉える方もいらっしゃるんですけれど、私はそうじゃないと思っています。葉子さんは、小さい頃から厳格な父の下で育ったこともあり、誰も味方になってくれないという状況は、レイプ事件の際に始まったことではなく、元々どこかで自分で自分を守らなくてはいけないという場面に何度も遭遇して生きてきた方だと思うんです。なので、一人の女性としても、一人の人間の生き方としても、雪村さんの強さにはすごく共感できます。
本作ではヌードシーンや濡れ場などがあり、出演するのにガッツがいる作品だったかと思いますが、オーディションに応募することにした理由はどこにありましたか?
写真集を出させていただいた後にオーディションの話が来まして、マネージャーさんと話し合った中で、「脱ぐものであったら、社会派の映画がいい」という理想がありました。「実話を元にした、共感を得られるこの作品であれば、ぜひ私を使っていただきたい」という想いがあったので、今回の映画には迷いがなく、むしろちょっと前のめりで、「ぜひお願いいたします」と言ったくらい、挑戦させていただきたい役でした。この映画で今までの自分の殻を破れてよかったなと思います。
精神科医でもある和田秀樹監督とはどのような話をしましたか?
SMのシーンは「鬼の形相でやってくれ」と一言だけ頂きました。わからない時は監督や原作の雪村葉子さんにアドバイスしていただいて撮影を進めていくことができました。私の感性で自由にやらせていただいたと思います。
原作者の雪村さんとはどのような話をしましたか?
クランクイン前にご挨拶させていただいて、その後も現場に何度か足を運んで下さったので、分からない心情などを聞く機会を頂けました。そんなこと聞いていいのかなと言うようなこともお聞きしました。本当に雪村さんは、とても性の被害に遭われたとは思えないような太陽みたいな方で、場を和ませてくださいました。ニコニコしながら、「なんでも聞いて」と言って下さる方だったので、恐縮しました。
役作りはどのようにされたのですか?
雪村さんの実体験を聞いたり、何回も原作の本を読んだりしました。また、トラウマを抱えている方の、一人でいる時と、そうでない時の振る舞い方を専門誌を読んで勉強しました。
同じ役の整形前を演じた西川可奈子さんとはどのような話をしましたか?
(原作の雪村さんが、15歳の時の自分が話しかけてくるように感じた言葉を、実際に15歳の役を演じた西川さんが演じて、葉子役2人が画面に映る)客観撮りもあるので“今の私”、“過去の私”という接点の中で、西川さんともお話をしたんですけれど、過去の葉子と今の葉子で癖や所作などは統一したほうが良いという話になり、お箸の持ち方は統一しました。
いろいろ考えた結果、客観撮りをする意味というのは、過去の自分との対立というか、西川さん(過去の自分)を見て睨んだと思ったら、急に笑っちゃうシーンもあったので、何の打ち合わせもせず、自身の葉子でいいんだろうな、という結論にお互い辿り着きました。完成した作品を観た時に、これで良かったんだなと思いました。
この役を演じる上で、一番難しかったところはどこですか?
全部が難しかったです。(ほぼ全編主観撮りなので)声だけの出演が多く、なおかつ私は自分の声があまり好きではなくコンプレックスなので、声での演技という部分で劣等感を感じていました。けれど、今後に活かせる、学べるいい機会でした。難しいことはたくさんあったんですけれど、女優としてこれからの自分を考えたらプラスしかなかったです。
風俗のシーンでの初めての脱ぎの場面だとか、脱ぐということに関しては私はたぶん大丈夫だろうと思っていた部分があったんですけれど、脱ぐだけでなく、「脱ぐ+演技+触られる」というものが入ると、私が思い描いていた演技では到底太刀打ちできないという壁にぶつかって、ショックも受けました。現場で放心状態になり涙が止まらなかったこともあります。皆さんが支えて下さったので、本当に皆さんのお陰で出来たことに感謝しています。
POV撮影に臨んだカメラマンの高間賢治さんとはどのような話をしましたか?
私は(ほとんどカメラに映らないながら)演技はしているんですけれど、相手役の俳優さんにカメラを見て演技をしていただかなくてはいけないのに、私が目を見てしまうと、俳優さんも私の目を見てしまうんです。それを避けるために、テイクを重ねました。高間さんは見事に私と同じ動きをして下さいました。私は基本は鏡越しだとか客観のカットにしか映らないけれど、洋服とか爪とかメイクを毎シーンばっちりしていただいていたので、高間さんはちょっとでも、私の服の端っこでも映るようにと考慮して撮って下さり大変感謝しています。
夫役の佐野史郎さんとの共演はいかがでしたか?
刺激的でした。実力派個性派俳優さんなんですけれど、目が全然笑っていなかったり、「どこからその声を出しているんだろう」と、ゾクゾクしました。雪村さんの旦那さんも本当にこういう顔をしていたんだろうなと思わせて下さり、演じている時は一気に引き込まれました。佐野さんがお相手で本当に良かったです。
他に、撮影中のエピソードはありますか?
サービスエリアで隆 大介さんと東てる美さんが喧嘩するシーンがあるんですけれど、「よーい、スタート」という声が掛かってから喧嘩を始めたのに、サービスエリアに来ていたお客さんが止めに入ったんです! 私はそういう場面に出くわしたことがなくて、サービスエリアのお客さんが止めに入るような本物の演技を目の当たりにした衝撃で、「これが演技なんだ! 私もこういうふうにならなきゃいけないんだ! 私もこの方々の背中を追わなくてはいけないんだ!」と心から思いました。スタッフが「撮影なんで、撮影なんで」と言っても止めてたんです! ああいう場面に直面したことが今後の私の財産になると思います。
SMのシーンは、本物のSM女王様が指導してくださって、3~4時間で歩き方、鞭、ロウソク、聖水を教えていただきました。「筋がいい」と言われちゃって(笑)。私は教えられたことをやっただけなので、教え方が上手だったんだと思います。M男役の俳優さんが非常にお上手で、私のプレイを受け止めて下さいました。彼がこのシーンには大変重要な役割を果たしていると思います。
読者の方々にメッセージをお願いいたします。
この映画は、冒頭から大変ヘビーなストーリーで、目を覆いたくなるようなシーンが飛び込んで来ます。大スクリーンで、あの音響で観ていただきたいです。男性でも女性でも、本当に自分がレイプに遭っているというのを体感していただかないと、主観撮りの意味がなくなってしまうと思います。この映画は、VRの体験に近いのではないかと思います。家で観たら、恐らく早送りや止めることもできるんですけれど、映画館というあの空間の中でぜひ雪村葉子さんの壮絶な半生を知っていただきたいと思います。ぜひ映画館でご覧ください!
(オフィシャル素材提供)
公開表記
制作・配給:緑鐵
4月7日(土)よりテアトル新宿にて公開ほか全国順次公開