15歳の元日に集団レイプに遭い、加害者の男たちへの復讐だけを胸に生きてきたという雪村葉子氏による衝撃的な手記(ブックマン社刊)を、精神科医の和田秀樹監督が映画化した映画『私は絶対許さない』の初日舞台挨拶が行われ、W主演の平塚千瑛と西川可奈子、父親役の友川カズキ、本作で劇場映画復帰の隆 大介、そして葉子と結婚する夫役を怪演した佐野史郎、和田秀樹監督が登壇した。また、元SKE48の出口 陽がフォトセッション後、主題歌「迷宮」を作曲者:近藤 薫と特別セッションで歌い上げた。
本作で映画初主演を務めた平塚と西川は、それぞれ、「雪村葉子さんが見たままの世界なので、最後まで皆様の目で観ていただければと思います」、「本作への出演で、性犯罪について改めて考えさせられる機会をいただきました。演者として、葉子さんのメッセージを作品を通してどんどん世に発信していけたらと思います。皆様からも一言でも世にお伝えいただければと思います」と挨拶。
隆は、「この場をお借りして、お詫びしたいと思います。3年前に不祥事を起こしました。その節はお騒がせしまして申し訳ございませんでした。映画は、社会的な意義深い作品だと思っています。この役で、和田組に参加できたことを俳優として誇りに思います」と挨拶した。
佐野は、「何よりもこの2人の体当たりの演技は、頭が下がるばかりです。性犯罪を扱った映画ではありますけれど、もっと大きい暴力そのものについて描いた映画ではないかと受け止めています」と想いを語った。
出口は、「映画の主題歌を歌わせていただくのは初めてで、光栄なことだと思っています。音楽を通して、この作品の良さをたくさんの方に届けていきたいなと思います」と話した。
「本作は、15歳の元日に集団レイプに遭い、加害者の男たちへの復讐だけを胸に生きてきたという雪村葉子さんの手記の忠実な映画化ですが、原作を読んで、映画化したいと思った理由についてお教えください」と聞かれた和田監督は、「日本ではトラウマとは、レイプの後PTSDになり、悪夢を見るとか多重人格になるだとか、そういう通り一辺倒な捉え方をする映画・ドラマが多いですが、トラウマは時間の連続性を断ち切ってしまう怖さがありますし、自分が被害者なのに、自分が落ちた人間になってしまったかかのような感覚を持ってしまって、意外にレイプの被害者が風俗の世界に入るだとか、AVの世界に入ることが多いとか聞いていました。すると、『もともと(セックスが)好きだったんじゃないか』と言われ、さらに傷ついていくとある程度見聞きしていたものですから、この手記に出合って、納得できるものがありました」と語った。
「主演のお二人は、レイプシーンなどで体当たりの演技を披露されていますが、本作は、主人公の見た目で撮影されていて、お二人は演技をしていても、あまりスクリーンに映りません。それでも本作に出演したいと思った本作の魅力はどこにありましたか?」と聞かれた主演の2人は、平塚は、「まずは実話であることです。あと、境遇に負けずに戦いながら生きてきた生き方そのものが、生きる強さを教えてくれていると思いました。雪村葉子さんに魅力を感じました」、西川は「雪村葉子さんの内側、世界観を映し出す主観撮りならではの臨場感や目に映る生々しさは主観撮りならではと思いました。撮影中、監督の演出に妥協が全くなかったので、監督が思いをぶつけた作品というところも魅力だと思います」と語った。
役作りに関しては、平塚は「私自身は性犯罪のトラウマを知らないので、本も読んだんですが、原作の雪村さんご自身に会わせていただき、聞いたことを役作りの参考にさせていただきました。昔の傷をえぐってしまうんですけれど、私たちのためになるのなら、と心情を話してくださったので、何が何でも私たちが再現しないと、という気持ちになりました」と語り、西川は「事件に遭ってからもう1人の人格が現れるので、同じ自分でも違う人格の使い分けを意識しながら役作りに励みました」と話した。
主人公に厳しく当たるお父さん役の友川は、「私の役は、インテリで東北の大学を出た大地主の役です。私は高卒で学歴もないので、ちょっと演技力はいりましたけれど!」と話して会場を笑わせた。「殴ることが威厳だと勘違いしている父親なので、そんなに難しかったです。ただ、私自身気が小さいものですから、スタッフや共演者の方に迷惑をかけられない。特に白川和子さんは怒ったら怖そうだから、一つ間違えたら大変とスタッフとセリフの練習をしました」と話し、再度会場を笑わせた。
歌手の友川は、「今日“主観撮影”だと初めて知りました。怖くて一生懸命やっただけです」と天然ぶりを発揮して、会場は笑いの渦に! 和田監督は、「(主観撮影なので友川さんは)カメラマンに向かって殴るので、カメラマンのほうが強いと言っていた」とエピソードを話した。「友川さん、美保 純さん、白川和子さんが演じる主人公の両親とおばあさんのシーンを絶賛していらっしゃいましたが、どう素晴らしかったのでしょうか?」と聞かれた佐野は、「いーっすよ! 僕も暴力的なシーンは随分やってきましたけれど、友川さんもすごすぎて」と話した。
隆は、「20年後のシーンのことを思うと、彼女に援助交際を申し込んだ時、所詮やくざ者だから、下心を持ったまんまでいいのではないかと思いまして、一つひとつの場面を彼女と楽しむということに徹するようにしました」と話した。
整形後の主人公と結婚する雪村役の佐野は、「主観撮りなので、あえて棒読みにしたとお聞きしましたが、どういうお考えからだったのですか?」と聞かれ、「見ている人に見えているものと実際に起こっていることの差がすごくあるんじゃないかなと思っていて、優しいつもりで言ったことが、どういうつもりで言ったかは別として、受け止め方によって事実が正反対にもなってしまう。自分の“つもり”は入れないで、葉子が見ているふうに聞こえればなと思いました」と話した。
出口は主題歌『迷宮』を、作曲者の近藤 薫と特別セッションで歌ったが、「どのような想いを込めて歌われますか?」と聞かれ、「人は辛いことや悲しいことからどうしても目を背けたくなるものだと思います。私はこの作品を見て、主人公の女性がどんな暗闇の中でも生きていこうという想いを感じて、勇気をもらいました。その想いを込めて精一杯歌います」と話した。
最後に、登壇者を代表して、和田監督から「編集の太田さんは、北野 武さんの映画をずっと手がけられた方なんですけれど、つなげてみた時に自分からすると、とても好きな映画に仕上がりました。主観で撮っている映画ですが、観客の方がこの人の世界に入ってどう感じるかは、一人ひとり違う作品だと思います。この世界に入り込める映画だと思うので、最後まで御覧ください」と挨拶した。
登壇者:平塚千瑛、西川可奈子、友川カズキ、隆大介、佐野史郎、出口 陽(主題歌/元SKE48)、和田秀樹監督
主題歌ギター演奏:近藤 薫
公開表記
制作・配給:緑鐵
テアトル新宿にて公開中ほか全国順次公開
(オフィシャル素材提供)