イントロダクション
1973年、日本をはじめ世界中を震撼させた誘拐事件があった。人質は【世界一の大富豪】であるアメリカ人石油王ジャン・ポール・ゲティの孫、ジョン・ポール・ゲティ三世。イタリア人左翼ゲリラの犯人から要求された1700万ドル(約50億円※)という破格の身代金もさることながら、50億ドル(1.4兆円)の資産を持つゲティがその身代金の支払いを拒否したことでも有名で、日本の新聞、週刊誌でも大きく報道された。
しかしこの事件の裏側で、誘拐犯と身代金を拒むゲティの間で戦い続けた人質の母親がいた。アビゲイル・ハリス。ゲティの息子ゲティJr.の元妻で、離婚により一族からは離れていたが、愛する息子の誘拐事件に直面し、ゲティに身代金の支払いの協力を求める。しかしそれを拒否された彼女には、息子の救出のため、誘拐犯に加えて、冷酷な大富豪もが立ちはだかることに……。“一般家庭の母”はいかにこの2つの強敵に立ち向かったのか――。(※事件が発生した1973年11月当時の為替レート1ドル=278.263円で算出)
当時、世界中で話題となったこの衝撃の事件を現代のスクリーンに蘇らせたのは、『オデッセイ』、『アメリカン・ギャングスター』、『グラディエーター』、『エイリアン』など、数々の不朽の作品を世に放つ、巨匠リドリー・スコット監督。
主人公ゲイルを演じるのは、『マリリン 7日間の恋』でゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞、アカデミー賞®ノミネートを果たした実力派女優ミシェル・ウィリアムズ。世間の好機の目に晒されながらも気丈に大富豪と誘拐犯に立ち向かう強い母親を演じた。また、元CIAの交渉人チェイス役には、『ディパーデッド』『テッド』と、コミカルな役からシリアスまで幅広い演技に定評のあるマーク・ウォールバーグが名を連ねる。そして、億万長者であり狂人という、本作の裏の主人公ともいえるジャン・ポール・ゲティを演じるのは、アカデミー賞®受賞の名優ケビン・スペイシー……のはずだった。
2017年11月、ハーベイ・ワインスタインのセクハラ問題に端を発した騒動により、ケビン・スペイシーが突如降板。映画は既に完成しており、全米公開はその1ヵ月後に予定されていた。この非常事態に御年80歳のリドリー・スコットは即座に決断した。「再撮影だ」。その数日後にはアカデミー賞®俳優、クリストファー・プラマーの出演が決まり、1週間後には撮影がスタート、その2週間後には映画を完成させる。お蔵入りをも危惧された危機的状況をこの短期間で乗り越え、アカデミー賞®(助演男優賞:クリストファー・プラマー)、ゴールデングローブ賞(監督賞:リドリー・スコット/主演女優賞:ミシェル・ウィリアムズ/助演男優賞:クリストファー・プラマー)、英国アカデミー賞(助演男優賞:クリストファー・プラマー)でノミネートされるという、史上空前の快挙を果たすこととなる。なおC・プラマーはアカデミー賞®演技部門ノミネートの歴代最高齢記録を更新した。このピンチを大逆転劇に変えたのは、代打出演を快諾したC・プラマーはもちろんのこと、M・ウィリアムズ、M・ウォールバーグといった実力派俳優と再撮影に携わった多くのスタッフ、そして彼らまとめ上げたリドリー・スコット監督だからこそ成し遂げられた奇跡とも言える。
ストーリー
“世界中のすべての金を手にした”といわれる大富豪ゲティ。17歳の孫ポールが誘拐され1700万ドルという破格の身代金を要求されたゲティは、こともあろうことかその支払いを拒否。彼は大富豪であると同時に稀代の守銭奴だったのだ。
離婚によりゲティ家を離れ一般家庭の人間となっていたポールの母ゲイルは、息子のために誘拐犯のみならず【世界一の大富豪】とも戦うことに。警察に狂言誘拐を疑われ、マスコミに追い回され、疲弊していくゲイル。
一方、一向に身代金が払われる様子がないことに犯人は痺れを切らし、ポールの身に危険が迫っていた。それでもゲティは頑なに支払いを拒む。愛する息子を助け出すため、母は一か八かの賭けに出るのだった……。
(原題:All the Money in the World、2017年、アメリカ、上映時間:133分)
キャスト&スタッフ
原作:ジョン・ピアースン「ゲティ家の身代金」(ハーパーコリンズ・ジャパン刊)
監督:リドリー・スコット
脚本:デビッド・スカルパ<
出演:ミシェル・ウィリアムズ、クリストファー・プラマー、ティモシー・ハットン、ロマン・デュリス、チャーリー・プラマー、マーク・ウォールバーグほか
ギャラリー
予告編
公開表記
配給:KADOKAWA
2018年5月25日(金) TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー