世界24ヵ国語に翻訳され大ベストセラーとなった、アンドリュー・ソロモン著「FAR FROM THE TREE」を原作にしたドキュメンタリー映画『いろとりどりの親子』が11月17日(土)、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開となる。
10年をかけて、身体障がいや発達障がい、LGBTなど、親とは“違う”性質を持った子を抱えた300以上の親子に取材し、家族の本質を探った本書を、これまで数々の社会派ドキュメンタリー作品を手掛けてきたエミー賞受賞監督レイチェル・ドレッツィンが、深い感銘を受け映画化。自閉症や、ダウン症、低身長症、LGBTなど、さまざまな“違い”をどう愛するかを学んでいく6組の親子の姿を映しながら、マイノリティとされる人々の尊厳と権利に光を当てた本作は、しあわせの形は無限に存在していることを、私たちに気づかせてくれる。
この度、11月6日(火)に本作の公開にあわせて来日したレイチェル・ドレッツィン監督と、女優であり、一般社団法人 Get in touch代表として、誰も排除しない「まぜこぜの社会」を目指し、長年障がい者アート等のボランティア活動をしている東ちづるとのトークイベントが開催された。
「東京都自閉症協会」「日本ダウン症協会」「アクセプションズ(ダウン症のある子を持つ親の有志団体)」の3団体を対象に招いた『いろとりどりの親子』特別試写会場のアキバシアターは親子連れの観客の熱気に包まれ、多くの拍手で迎えられたのは、東ちづるとレイチェル・ドレッツィン監督。
本作を二度鑑賞した東が映画について感想を尋ねられると「初めて観た時に号泣しました。今日も泣いちゃうなと思っていたけど、実は今日はとてもハッピーに観ることができました。今、経済的なことだとか、障がいとか特性とか、いろいろなことでカテゴライズして無自覚に分断している社会があると思っています。そんな中でこの映画は光だな、希望だなと感じました」と今の日本を取り巻く社会の環境から、本作が希望であり観るべき映画であると語る。それに対し監督は「実は本作をアメリカ以外の試写で皆さまに触れ合える機会は初めてです。アメリカと日本では違う文化ですし、社会も違う。ある意味、真逆の部分もあると思うんです。この作品が希望の光のように感じていただければ、まさにそれはこの作品を作りたかった理由ですので、とても嬉しいです」と笑顔で監督も語った。
続けてアンドリュー・ソロモン氏の原作本「FAR FROM THE TREE」に影響を受け、この作品を映画化したいということについて、書籍のどの部分に惹かれたのか尋ねられたレイチェル監督は、「一番の理由は、原作を読んだときに、自分自身が思いやりや親切心でやっていた行動や言葉が、人によっては上から目線や哀れみに感じられてしまっていることもあるのだと気づかされました。何らかの複雑な状況にある方が生きる人生というのは、苦労や葛藤が多大にあると同時に、祝福されるべきものであるということをこの作品を読んで知ったとき、自分がいかに部分的なものの見方をしていたかということに気づいたのです。その体験を、映画を観る方にも知っていただきたいと思いました」と、原作を読んで自身の価値観についての新たな発見をした経験を、映画を鑑賞する観客にも同様に感じて欲しいと述べた。
東はその話を受けて、「こういうテーマのドキュメンタリーやドラマは日本でもたくさんあるんですよね。障がいを持った友人がドキュメンタリーの対象になって、放送された時、それがとてもお涙ちょうだい的な、素晴らしい親子間を映しているんだけど、まるで当の本人が社会と繋がっていないような描き方をされて、すごい違和感というかショックだったんですね。そういう人は弱い人であって欲しいという描き方だったんです。今は生産性ですとか、そういう言葉で生きる意味とか価値をジャッジしようとする、その流れがめちゃめちゃ怖いなぁと思っているんですね」と、マスメディアでの描かれ方や、今の日本を取り巻く社会の環境について危機感をつのらせている思いを語った。
映画で一番印象に残ったシーンについて尋ねられた監督は、「ダウン症のジェイソンと、彼の二人の親友が裏庭で友情について語り、自分たちが家族のような存在になっていると話すシーンが大好き」と言い、続けて「低身長症のジョセフとリアたちカップルが公園で食事をしているシーンも好き。ジョセフはジョークばかり言うタイプでしたが、映画のなかでも笑いを取る発言をしているところが好き」と語ると、東は「『不幸は似通っているけど、幸せは多様だ』といった、映画では素晴らしい台詞が本当にたくさんある。印象に残ったシーンはいっぱいあるんですけど、ジョセフとリアのカップルが街を電動車椅子で颯爽と移動し、ベランダかどこか、下からライトがあたっている場所でキスをするところが、すごい素敵で好き」と見どころに触れた。
オフィシャルスチールの時間には、東ちづるが本作を多くの人に観ていただきたいからと、会場にいた観客全員にスマートフォンで撮影を促し、SNSなどで本イベントを拡散していただくよう呼びかけた。最後に観客からの大きな拍手で見送られ、イベントは幕を閉じた。
登壇者:東ちづる × レイチェル・ドレッツィン監督
公開表記
配給:ロングライド
2018年11月17日(土)、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
(オフィシャル素材提供)