インタビュー

『HERO~2020~』西条みつとし監督 オフィシャル・インタビュー

©「HERO」~2020~製作委員会

 映画『HERO~2020~』は、6月19日(金)よりシネ・リーブル池袋ほか全国順次公開を予定している。本作は、昨年7月に上演された舞台『HERO ~2019夏~』を映画化し、誰かが誰かに支えられ、誰かが誰かに支えられ、誰かが誰かの“ヒーロー”になるという気持ちを届けてくれるハートウォーミング・コメディ。監督・脚本を務めるのは、国内外の映画祭で絶賛された斎藤 工の初長編監督映画『blank13』(18)の脚本を手掛けた西条みつとし。芸人活動、放送作家やコント作家を経て、劇作家・演出家として活躍する彼が、主宰する劇団TAIYO MAGIC FILMの旗揚げ公演作品「HERO」(再演タイトルは「HERO ~2019夏~」)を自ら映画化、長編映画監督デビューを果たす。この度、西条みつとし監督のオフィシャル・インタビューが届いた。

「HERO」は2012年に初演された、西条さんが主宰の劇団TAIYO MAGIC FILMの第1回公演作品ですが、どのような思い入れのある作品ですか?

 自分の主宰する劇団の旗揚げ公演ですので、すごく想い入れがあります。内容も、父親の存在というものを真剣に考えるキッカケとなった作品ですので、僕にとって特別な作品です。
 脚本を作る時、僕自身、自分の父親みたいなカッコ良い人間になりたいというのがずっとあり、その想いを詰め込もうと書きました。父親本人に直接「お父さんみたくなりたい」と言うのは、照れ臭く恥ずかしいので、舞台作品にし、父親に舞台を見てもらおうと作った作品です。
 父親は、調理師なのですが、週6で毎日夜中12時に出勤し、夕方5時に帰ってくる、というのを30年間以上、1日も休むことなく、続けているのですが、何の文句も言わず、コツコツとひたすら家族のために働いている父親は、尊敬でしかありません。なので、父親への想いを込めた作品です。

ご自身にとって、ヒーローは特別な存在なんですか?

 ヒーロー自体は、特別な存在ではありませんが、この作品同様、自分にとってのヒーローは、父親なので、父親は特別な存在です。
 子どもの頃、テレビで、スーパー戦隊シリーズを見ていました。そして、小学校で、戦隊ごっこになると、皆、「赤」の取り合いになっていました。スーパー戦隊の「赤」と言えば、主人公で、リーダーシップがあり、社交性があって、目に見える優しさと強さがあります。しかし、僕には、「青」が一番カッコよく見えていました。「青」は、無口だが、頼りになって、言葉じゃなく行動で示し、流されないヒーロー。まるで父親のようでした。

今回、再演と映画化のお話が来た時の感想を教えてください。

 再演のお話を頂いた時は、僕が33歳の時に、全力を注いで作った舞台作品を、41歳になった僕が、改めて演出するのかぁ、じゃあ、どのような作品に変化するのだろう、という自分自身への期待で、ワクワクしたのを覚えています。
 映画化のお話をいただいた時は、『HERO』で伝えたかった想いを、舞台より映画のほうが、より強く届けられると思っていたので、とても嬉しかったし、映画化によって、よりこの作品を観ていただける人が増えるので、これもまた大変嬉しかったです。

劇団の名前がTAIYO MAGIC FILMですが、映画監督というのは、以前から目標にしていたのですか?

 TAIYO MAGIC FILM という団体名は、映画のような舞台を作るという意味でつけました。僕自身、映画監督が目標ということはないです。しかし映画を撮ってみたいという想いはあったので、映画監督をやれたことは大変嬉しいです。綺麗事に聞こえるかもしれませんが、僕の目標は、誰かの幸せに繋がる作品を作り続けることです。作ることは出来ても、作り続けることは難しいと思うので、それが目標です。映画監督や、演出家や、脚本家などの、職業へのこだわりはないです。誰かの幸せに繋がる作品を一生作り続けるという目標には、こだわり、作品作りをしています。

松尾 諭さんが、主人公・広樹のお父さん役で出演しました。映画版で追加となった、広樹の心理を丁寧に描くシーンですが、お父さんを登場させた理由をお教えください。

 元々は、お父さんが川に飛び込むシーンは、舞台でも入れたかったのですが、舞台で表現するには、かなりのハードルの高さなので、実現はしませんでした。映像だからこそ撮ることが出来ました。撮ってみて思いましたが、やはり、このシーンが実際にあるのと、ないのでは、映画の印象や、主人公の想いの伝わり方が、全然違ってくるなと感じました。
 実は、実際のエピソードを基にしています。僕が小3の時に、家族4人で千葉の海に行きました。そして自分一人で海に入っていって、溺れて死にかけた時がありました。そのことに家族は気づいていなく、どんどん僕は沖に流されていったんです。もうダメだと思った瞬間、知らないおじさんが、溺れかけている僕を見つけ助けてくれ、僕を抱えながら、海から引き上げてくれました。岸には、そのおじさんの子どもがいました。当時の僕と同じくらいの年齢の子どもでした。僕は礼も言えず、家族のところに走って行ったんです。落ち着いてから、助けてくれたおじさんかっこよかったなと思うのと同時に、「あの子ども、どんな気持ちなんだろうな、誇らしかったんだろうな」と思ったのを覚えています。

松尾 諭さんとの撮影でのエピソードはありますか?

 僕はかなりの人見知りなんですが、スタートしてみたら不安は全くなく、すごく気さくでフラットにコミュニケーションしていただいたので、すごくやりやすかったです。

映画版では斎藤 工さんが死神大佐を演じますが、広樹が2年間で別れなくてはいけないという理由についての心理を描くシーンになっています。死神大佐に込めた想いをお教えください。

 勇気を出して一歩踏み出すときの最大の敵は、自分自身なので、自分の中の、もう一人の自分という大きい壁の象徴として、死神大佐という悪役を作りました。見事に斎藤 工さんに演じてもらうことで、圧倒的な存在感ある悪役になったと思います。

ドラマ部分とコメディ部分のバランスというのが難しいかと思いますが、本作は、「笑いあり、涙あり」という言葉がぴったりという位、バランスがよく感じました。ドラマ部分とコメディ部分のバランスで心がけていることはありますか?

 自分の中では、バランスに関しては、あまり意識していないです。笑いも好きだし、人間対人間というドラマも好きだし。どちらの内容も良ければバランスなんて関係なく見ていただけるんじゃないかなと思って作っています。

2019年版では広樹役の廣瀬さんが、初演には松島竜司役で出演していたようですが、廣瀬さんご自身が7年の間に主演クラスの俳優になったというのも理由の一つかと思いますが、廣瀬さんに広樹役をお願いした理由をお教えください。

 7~8年前は、舞台の稽古中も暇があったらすぐ昼寝をするような子だったんです。けど7~8年経って、主演になる位、人間も成長しているし、弱そうな子のイメージだったんですけれど、いつの間にか逞しくなったなと、思いました。今回一緒にやれることになって、広樹の役がぴったりだなと本当に思います。

監督から見た廣瀬さんの魅力を教えてください。

 本当に素直な子だと思います。芸能界にいて、あのポジションで、あのマスクを持っていて、よくあんなにキラキラまっすぐな感じでここまで来たなと思います。だから可愛いし、素敵だなと思います。
 今回松島役の小松準弥君も、昔の智紀みたいなイメージです。あの子もイケメンなわりに、真っ直ぐで、いやらしくなく、芸能界に染まっていない感じが魅力的だと思います。

廣瀬さんが泣くシーンは、クランクアップのシーンだったみたいですね?

 ドア前で泣く智紀のシーン、「こんな表情できるなんて、うまくなったな」って本当に思いました。いろいろな経験が出てよかったです。

監督から見た北原さんの魅力も教えてください。

 経験値が圧倒的だからこそ、いろいろなことに気を遣えたりしてすごいなと尊敬しています。役者さんは自分の世界に入っている時が多いと思うのですが、いつも明るく、いつも気を遣って、団体に対しての行動がすごいなと思いました。もちろん、芝居もとても素敵で上手でした。

本作で特に注目してもらいたい部分はありますか?

 松尾さんの子どもを抱えて、河から上がってくるシーンです。ぜひ、注目してください。松尾さんがカッコ良すぎなので(笑)。
 もう1つは、廣瀬智紀君と北原里英さんの目の芝居です。舞台の時は大きい会場でしたので、細かい芝居は見えづらかったと思いますが、2人の目の芝居が上手なので、映像だと心情が伝わりやすく、舞台と比べ、より感情移入しやすくなっているので、ぜひ注目してみて下さい。

アップを多用しているように感じましたが、意図的ですか?

 心情を見せたいシーンが多かったので、結果的にそうなっていたかもしれません。

読者の方にメッセージをお願いします。

 コメディの部分も多いので、シンプルにエンタメとして楽しんでくれたらいいなと思います。何も考えずに楽しんでもらって、ちょっとだけ勇気をもらえるような作品として皆さんに届いたらいいなと思います。

公開表記

 配給:ベストブレーン
 6月19日(金)よりシネ・リーブル池袋ほか全国順次公開

(オフィシャル素材提供)

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