『犬鳴村』(20)、『樹海村』(21)に続いて、今回新たな恐怖が生まれるのは、富山県魚津市に実在する北陸最恐心霊スポット・坪野鉱泉が舞台の『牛首村』。「牛首村」と呼ばれるおぞましい場所の秘密と風習が、狂気と恐怖となり、まとわりついてくる……。清水 崇監督が極限の恐怖で観客を追い詰める――。
本作は、『呪怨』『THE JUON/呪怨』『輪廻』などを手掛けたホラー映画の巨匠・清水 崇監督が手掛ける「恐怖の村」シリーズの最新作。メガホンを取った清水監督と出演者の1人で、「恐怖の村」シリーズ3作すべてに出演している大谷凜香とのツーショット・インタビューが実現した。
清水監督が今作で特に苦心したところは「台本作り」だと明かす。清水監督は「シリーズの3作目なので、前の2作とは違うようにしなければいけないし、やっぱり前作のほうが良かったと言われたくないと思いました。主演が初めての方(Kōki,)だったこともあって、初々しい気持ちで一緒に撮影することができました。出演者たちからこの作品に出て良かったと思われるように撮りたかった」と笑顔で話す。
大谷は、「恐怖の村」シリーズ3作すべてに出演しており、今作では主演のKōki,が演じる三澄詩音(しおん)のクラスメイト・アキナ役で出演。YouTuberの機材も作品ごとにグレードアップしているという本シリーズおなじみのアキナを演じている。本作では、今までで一番若い設定の高校生の役での出演となる。そんな大谷に撮影現場での清水監督の印象について聞いてみると、「一作目の『犬鳴村』での話ですけど、私の役アキナは彼氏の部屋に住んでいるんですね。衣装合わせの時にその彼氏の服を着てみたんです。ブカッとしていて、監督から『一番キライな萌え袖だぁ~』って言われました(笑)。監督はいつもポップなことを言って現場の緊張感を解きほぐしてくれる方です」と楽しそうに打ち明けた。
清水監督は「ホラー映画を撮っていても現場はいつも和気あいあいとしています」と出演者たちへの気配りをみせる。
ホラー映画の撮影時によく起きるという不思議なことや恐怖現象は、今回は起きなかったのか、聞いてみると、清水監督は「劇中で、Kōki,が演じる奏音の携帯が勝手に鳴り、『私には聞こえません』とAIが喋り出すという場面があるのですが、本作の編集作業に入ってから僕の携帯にもそっくり同じことが毎日1~2回あったんです……。周りは怖がってましたけど、『ホラーのいい風が吹いているな』(笑)と思いました」と打ち明けた。それを聞いていた大谷は思わず「監督、ポジティブですね~」と感心しきり。
さらに清水監督は、劇中重要な役どころで登場する奇子という女にまつわる話になると、「作曲家が“奇子のテーマ”を作っているときに、突然パソコンが壊れたり、フェーダーが上下し、RECボタンが点滅したりしたらしいです」と恐怖をあおる。清水監督は、奇子を演じている芋生 悠が役作りのために7~8キロ痩せてくれたことも話した。
主演のKōki,について聞いてみると、清水監督は「とても素直な姿勢で臨んでくれました。普通初めてだと『これで、大丈夫ですか?』と心配や不安が露わになるものなんですが、そういったことは一切なかった。とは言え、自分で疑問に感じたところなんかは個別に僕に言ってきますし、僕の指示や提案もしっかり受け止めて考えているなという印象を受けました。でも初めてなので(気持ちが高ぶって)抑えることができない癖が出た時などは指摘して……すると、きちんと直して見せる力量を持っている」と印象を語った。Kōki,は初めての演技とは思えないほど渾身の演技で魅せており、他の共演者を圧倒する場面も見られた。
Kōki,と共演した大谷は「クラスメイトの役なので、友達の空気感や女子高校生のノリをどう出そうか、同じ感覚でいられるようにと3人(ミツキ役の莉子も含め)で考えました」と言う。撮影が地方だったこともあって、控え室では楽しくおしゃべりをしていたことも明かした。
そんな大谷が今後目指している女優への道は「小さい頃から空手をやっていて、ずっとアクション女優になりたいという強い思いがあります」ときっぱり。清水監督が「初めて聞きました!」と驚きの顔を見せた。次回作では大谷のアクション・シーンのお披露目を大いに期待したい。
また、大谷は作品について「SNSを駆使すると、もう一人の自分の姿を見ることができます。誰かの視線を感じる、自分一人の空間でない時間、そういった世界の延長線をドキドキ、ワクワクして観ることができます」とアピール。作品を観終わった後、大谷は「ずっと誰かの視線を感じるようなカメラ・ワークが多いので、今までとは違った感覚に陥りました」と話していた。
劇中の怖いシーンの一つに大谷の顔が水溜りに映し出される場面があるのだが、「どうやって撮っているかはメイキングを見ないと分からないよね。スタッフも彼女も混乱していたし」と清水監督。清水監督は「地下のエレベーターの鏡のシーンも注意して見て欲しい……相当念入りに組んだ凝った1カットを一日かけて撮っていたりするので」と特別な要注目シーンも教えてくれた。
最後に、清水監督は「“私がもうひとりいる……?そんなことが”。今では、SNSで誰でも別のもう一人になれる……もう一人の自分を怖いと思うか、もう一人の自分がいて良かったと思えるか、もう一人の自分に対して責任を持てるように、というメッセージを込めています」と作品への熱い思いを伝えた。
不可解な出来事に巻き込まれる女子高生姉妹の一人二役という難しい役柄に挑戦した映画初出演で主演を務めたKōki,。彼女とホラー映画がどのような化学反応を起こしているのか、その熱演ぶりにぜひ注目してほしい。
他の共演者で恐怖に対峙するのは萩原利久、高橋文哉ら若手実力派俳優たちと松尾 諭、堀内敬子、ココリコの田中直樹、麿赤兒らベテラン俳優陣が顔をそろえている。
(取材・文・写真:福住佐知子)