映画『夏へのトンネル、さよならの出口』の完成披露舞台挨拶が都内で行われ、声優キャストの鈴鹿央士と飯豊まりえが出席した。メガホンをとった田口智久監督も参加予定だったが、体調不良で欠席となり、代わりに企画・プロデュースを担当した小山直紀氏(ポニーキャニオン)が出席してクロストークに参加した。
本作は、第13回小学館ライトノベル大賞でガガガ賞と審査員特別賞を受賞した八目 迷(はちもくめい)の同名小説が原作。中に入ると、欲しいものがなんでも手に入るという不思議なトンネル“ウラシマトンネル”の中に願いを叶えるために、足を踏み入れた少年少女のひと夏の体験ガ描かれる。主人公の塔野カオル役を鈴鹿、ヒロインの花城あんず役を飯豊が演じた。2人はオーディションを3回受けて役を射止めたという。
試写の上映後に登壇し、声優として初めてのアニメ作品に参加した鈴鹿は、客席からの大きな拍手に「いちばん嬉しいです」と感謝の言葉を述べた。続いて、「声優は、踏み入れていい世界なのかなぁと思いつつも2日間のアフレコが尊くて楽しくて、こんなに充実した時間があっていいのか、と思いました」と幸せだったというアフレコ時を振り返った。
飯豊は、「周りはプロの声優さんばかりなので、浮いていないか心配がありましたが、順撮りで、鈴鹿さんと2人で収録できたのが心強かったです」と振り返る。また、「アフレコしたときはまだ映像も完成していなかったので、イマジネーションが必要で、ちょっと難しくもありましたが、楽しい作業でした」と語った。
企画・プロデュースを担当した小山氏は「主人公の決めては、本作は、アニメですが、どっちかというと実写寄りの世界で、2人の演技がはまりました」とコメントした。
完成作品を観た感想を聞かれ、飯豊は「音楽の力ってすごいですね。素敵!」と感激仕切り。作画の美しさも絶賛した。役作りについては「あんずはツンデレで、気になっている人に対して冷たくするという甘酸っぱい感じは私は、今まで経験したことがなかった。2人が重なり合って本当はドキドキしているのに『どいてもらえる?』って……。でもメールでは本音を送信するところが可愛いかったです。胸キュンしました」と話した。
鈴鹿も完成作品を観て、「こんなに美しい作品になったんだなと感動しました」と話し、ワクワクが止まらなかったことを明かした。役どころについては「カオルの家庭環境にグサッと刺さりました。声のトーンというか、常にロー・トーンで、その中に広がっている波というか、細かな波動が僕なりに頑張って出せればと……。花城さんと出会って変化していく中で、胸の内にあった傷をちょっとずつ癒していく作業に寄り添っていきたいと思いました」と語った。
小山氏は「本作の見どころは光の演出へのこだわりです。ストーリーが進むに連れてちょっとずつ光の量が増えていくんです……」と田口監督のこだわりを明かした。
ストーリーにちなんで、夏の思い出について質問があり、鈴鹿は花火のシーンを上げ、「僕も小さい頃、母方の祖父母の家が海の近くにあって、毎年港から花火が打ち上げられるので、家の前で親戚で集まって見上げていました」と懐かしそうに思いを馳せた。
飯豊は夏祭りに浴衣を着ていったと言い、「盆踊りに率先して参加するタイプなんです」と明かした。千葉出身の飯豊は、「千葉おどり」の「やっさほっさ」という節を身振り手振りで見せて、「(コロナ禍で中止のため)また復活してほしいなあ」と願った。
最後に、鈴鹿は「人生を歩んでいく道の中で、壁にぶち当たって、どう乗り越えていこうかと考えている2人がいます。一人ひとりに寄り添ってくれる物語です。(観客が)3人目の主人公です」。試写上映後なので、「ここからは皆さんとの共同戦線なので! よろしくお願いします」と劇中のセリフを用いて呼びかけた。
飯豊は「この作品は、立ち止まってしまった人たち、取り戻したい過去を持った人たちが目の前に向かって進める一歩になる作品だと思います。この作品がたくさんの方に届きますように!」と願った。
登壇者:鈴鹿央士、飯豊まりえ、小山直紀(企画・プロデュース)
(取材・文・写真:福住佐知子)
公開表記
配給:ポニーキャニオン
9月9日(金) 全国公開