米軍統治下に置かれていた沖縄が日本本土に復帰して50年を迎えたことを記念して公開された『乙女たちの沖縄戦~白梅学徒の記録~』の東京都写真美術館ホールでの初日舞台挨拶に、ドキュメンタリーと再現ドラマの両方に出演した森田朋依、同じくドラマパートで白梅学徒を演じた永井ゆみ、負傷兵を演じた城之内正明、看護師を演じた藤真由美、ドラマパートの監督をした松村克弥、ドキュメンタリーパートの監督をし、ドラマパートの脚本を担当した太田隆文が登壇し、撮影の裏話を語った。
ドキュメンタリー部分の聞き手を担当し、再現ドラマで白梅学徒の一人・上原友子役を演じた森田朋依は、「去年の12月に取材に行くまで、恥ずかしながら、沖縄戦のことをほとんど知らなかったんです。私の他にも知らない方はたくさんいると思うので、この映画を通して、沖縄戦のことや戦争が終わった後もどれだけ傷が残っているかが伝わればと思います」と熱く挨拶。
実際には6月23日に沖縄での組織的戦闘は終結したが、再現ドラマパートに関しては、「関東で大雪が降った次の日の1月6日で撮影した」と仰天の事実も話し、また、森田が「人生で初めて本物のウジ虫を触りました」と話すと、松村監督が「接着剤で止めていたんです」と撮影の裏話を公開した。
再現ドラマで同じく白梅学徒の一人・島袋博子を演じた永井ゆみは、現役の高校3年生。「生まれる前の話なので、当事者の方々の気持ちがわからず、ドキュメンタリー・パートの動画を見たり、作中に出てくる漫画を読んで、気持ちを理解するのに苦労しました」と役作りの難しさを話し、一番印象的だったシーンとして、「自分でトイレができない兵隊を手伝ったシーン」を挙げた。
負傷兵役を演じた城之内正明は、「軍人役は結構やっているんですけれど、自決する役はなかったので、青酸カリを飲んだらどうなるのかは調べたんですが、そんなに出てこなかったです。『ひめゆりの塔』などの映画を見ました」と影の努力について話した。
婦長役を演じた藤真由美は、「10代の女の子たちを相手にああしなさいこうしなさいと言いながらも、自分も看護師としてすべきことをしているという精神状態だとか、自決をさせてしまう心理をすごく考えました。絶対に戦争はしてはいけないとみんなに自覚してほしく、100年後、200年後もこの映画が上映されることを願っています」と熱弁した。
「婦長さんが青酸カリを与えて殺すシーンは、自分の気持ちとしては殺したくなくても、自分の行為によって死んでしまった。一生傷となって抱えて生きていかなくてはいけない辛さを考えて、その方を思う気持ちが募ったシーンでした」と涙を浮かべる場面も。
松村監督は、「チューブの巻き方に時間がかかるので、省略していいか聞いたら、藤さんが『見る人が見たら分かるからリアルにやりたい』と熱心に実際の看護師さんの指導を受けていて、最後も鬼気迫る演技だった」と藤の役者魂を絶賛した。
映倫でG指定だったという話に及ぶと、太田監督は「お子さんも大丈夫です。残酷なシーンもあるけれど、現実を見て欲しいという映倫の思いではないか」と推察した。
密室で追い詰められた人間模様の演出が得意と自負する松村監督は、「(役者さんたちが)自分たちですごく勉強してきてくれたので、撮影はスムーズに行った。末端の庶民がこれだけ悲惨な思いをして苦しむということを太田さんが脚本でうまく描いていた。(医師役の)布施 博さんの切なさの表情も流石だなと思いました」とキャストと太田監督の脚本を絶賛。
松村監督は「太田さんがドキュメンタリーで撮った実際の洞窟の手術台と、再現ドラマで出てくる手術台は雰囲気が似ていますよね?」と確認すると、太田監督は「(再現ドラマ部分を)見ていて違和感はなかった」と太鼓判を押し、松村監督は「(ドキュメンタリー部分の)きくさんの言葉は、再現ドラマ部分を超える言葉だった」とお互いが担当したパートを讃えあった。
最後に永井が、「沖縄戦の過酷さを1人でも多くの人に届けられればと思います」と力強く語り、初日舞台挨拶は終了した。
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配給:渋谷プロダクション
東京都写真美術館ホールにて公開中 全国順次公開