イントロダクション
人生に悔恨を残さぬために、伝説のヘアメイクドレッサーが親友のための最後のメイクへ――。実在の人物をモデルにしたハートフル・ロードムービー『スワンソング』が、8月26日(金)より全国順次公開となる。
ヘアメイクドレッサーとして活躍してきたパトリック・ピッツェンバーガー、通称“ミスター・パット”にとっての「スワンソング」は、はたしてわだかまりを残したまま亡くなってしまった親友であり顧客のリタを、天国へと送り届ける仕事になるのか?
パトリック・ピッツェンバーガーは実在の人物がモデル。監督のトッド・スティーブンスは17歳の時にオハイオ州サンダスキーのゲイクラブで、ミスター・パットが踊っているのを見て、衝撃を受けたという。映画の道へ進んでから、いつか同郷のこの人気ヘアメイクドレッサーを題材にしたいと思い続け、その念願を叶えたのだ。自身もゲイであるスティーブンス監督による本作は、エイズが蔓延した1990年の時代から現在に至るゲイカルチャーを真摯に見つめ、ゲイカップルの描き方にも愛が満ちあふれている。社会的な立ち位置や相続問題などリアルなトピックも物語に取り込むことで、LGBTQ+映画の一本として、この『スワンソング』は誠実な仕上がりが達成された。
自身の内面と葛藤しながら、観る人に感情移入させる、まさに俳優冥利につきる主人公のパット役。これを託されたのは、ドイツ出身でハリウッド作品でも活躍する世界的名優、ウド・キアー。初期の『悪魔のはらわた』から、近年はラース・フォン・トリアー作品まで怪優ぶりも発揮するキアーが、その強烈な個性はそのままに、人生最後の仕事への逡巡をエモーショナルに表現。時には激しく感情をあらわにして、時には静かに哀感を漂わせ、共感を誘う名演技を披露する。
ストーリー
オハイオ州の小さな町、サンダスキーの老人ホーム。パトリック・ピッツェンバーガー(ウド・キアー)は、静かな余生を送っていた。ホームの職員から何か注意を受けても聞き流し、日課といえば食堂の紙ナプキンを自室に持ち帰り、丁寧に折り直すことくらい。しかしパトリックの心には過去の思い出がつねに去来していた。ヘアメイクドレッサーだった彼のサロンは街でも大人気。「ミスター・パット」と呼ばれ、顧客から愛されていたこと。そして愛する恋人デビッドとの生活と、早くに彼を失ったこと……。
そんなパットを、ある日、弁護士のシャンロック(トム・ブルーム)が訪ねて来る。かつてのパットの顧客で、街でも一番の金持ちであったリタ・パーカー・スローン(リンダ・エヴァンス)が亡くなったというのだ。リタは「死化粧はパットに頼んでほしい」と遺言書に残していた。シャンロックによると、その報酬は2万5000ドルだという。驚くパットだが、リタへの複雑な思いや、すでに現役を引退した現実から、「ぶざまな髪で彼女を葬って」と言い捨て、申し出を断ってしまう。
しかしパットはリタの遺言に動揺を隠せない。思い出の写真やジュエリーなどを久しぶりに手に取って眺めるうちに、輝いていた時間に思いを馳せる。そして同じホームに暮らす女性の髪を美しくセットし、自分の腕が衰えていないことにも気づく。本能に突き動かされるように、パットは老人ホームを抜け出すのだった――。
(英題:SWAN SONG、2021年、アメリカ、上映時間:105分)
キャスト&スタッフ
監督:トッド・スティーブンス
出演:ウド・キアー、ジェニファー・クーリッジ、マイケル・ユーリー、リンダ・エヴァンスほか
ギャラリー
予告編
オフィシャル・サイト(外部サイト)
公開表記
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
2022月8月26日(金) シネスイッチ銀座ほか全国順次公開!
(オフィシャル素材提供)