9月6日は、ジャン=ポール・ベルモンドの命日、一周忌にあたる日、傑作選上映作品の新字幕を数多く(20作品中9本)担当した松浦美奈さんと、長年交渉を続け傑作選を実現させた配給プロデューサーの江戸木純さんによる、“ベルモンド映画”と“ベルモンド愛”をめぐるトークイベントが行われた。今年のカンヌ映画祭で追悼上映され、名優ジャン・ギャバンと若きベルモンドが共演している『冬の猿』上映後、16時過ぎよりスタートした。
上映中の『ブレット・トレイン』はじめ、メジャー作品等数多くの作品の字幕を手掛け、多忙の松浦美奈さんが、傑作選1の時に観客として『オー!』を観に来た際、配給プロデュ-サーの江戸木純さんと劇場でばったり会い、ジャン=ポール・ベルモンドの話で盛り上がり、傑作選2から字幕をお願いしたというといういきさつから話しが始まった。
このエピソードからも、二人のベルモンド映画愛が感じられるスタートとなった。
昔は、洋画がテレビでオンエアされることが多く、特にフランスの娯楽映画が数多く放映されていた。松浦さんもそこでベルモンド映画と出合い、劇場では二本立ての名画座で『大頭脳』を見て、もともとお目当てあったジュリアーノ・ジェンマ主演の作品よりもそちらが面白くて驚いたそう。70年代にはベルモンドが大人気で彼の主演作はお茶の間に浸透していた話が出ると、江戸木さんが、テレビでオンエアされなくなりベルモンド映画を観ることができる機会がほとんどなくなったので傑作選への思いが始まったという経緯を話した。
松浦さんは、劇場公開時に字幕を手掛けた作品で、ベルモンドがジャン・バルジャンを演じた、クロード・ルルーシュ監督の『レ・ミゼラブル』(1995年)が大好きと話すと、江戸木さんが「今回の上映に入れたかったけどできなかった!」とベルモンド通から、上映作品以外の名作についても語られた。
トーク前に上映された『冬の猿』の話になると、松浦さんより「皆さん、この映画の時、ジャン・ギャバンがいくつだったか知っていますか? 58歳ですよ!」と名優の貫禄ある演技について語ると、江戸木さんが、「ベルモンドは29歳だった。あの酔っぱらい方に運動神経や体幹の良さが出ている。この作品公開が公開された直後にノルマンディー上陸作戦を描いたハリウッド超大作『史上最大の作戦』が公開されるが、当時ノルマンディーがブームだったのかも?」という映画史の小ネタも披露された。
ベルモンド作品を数多く翻訳している松浦さんより、ベルモンド映画は、説明台詞が多くなく、見せる映画が多いことや、今回の上映作品の『薔薇のスタビスキー』翻訳の際には、時代背景や人名などの日本語資料がなく、苦労したという話、名脚本家が脚本や台詞を担当しているベルモンド映画のフランス語はスラングが少なく美しいという翻訳者ならではのエピソードも聞かせてくれた。
また、ベルモンド28歳の『勝負をつけろ』は、ベルモンド39歳の『ラ・スクムーン』と同じ暗黒街映画の巨匠ジョゼ・ジョヴァンニの原作であり、この2作を見比べるのが面白いという、傑作選3の楽しみ方が語られた。その後は、松浦さんからは「ベルモンド映画は、ロングショットでアクションをしっかり撮り、スターだから、必ずベルモンドがアップになる。もうそれで満足」「『怪盗二十面相』のベルモンドは植木 等みたい」と、江戸木さんからは「『パリ警視J』なんか、警視なのに法律破りまくりで、あれはほぼ犯罪者でしょう」「『怪盗二十面相』と『薔薇のスタビスキー』はベルモンドが全編嘘をつきまくる嘘とホラ吹きのスペクタクル」と、笑える見どころについて盛り上がった。
最後は、何をやっても、ベルモンドの演技が上手いからベルモンド映画全部面白いと二人の絶賛で締めくくった。
9月2日より新宿武蔵野館はじめ全国5ヵ所でスタートしている「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選3」。
フランスの“至宝”と呼ばれ、世界中の映画ファンから愛され、あのジャッキー・チェンやトム・クルーズも彼の映画から学んだと言われるアクション映画界の伝説(レジェンド)、ジャン=ポール・ベルモンドが惜しまれつつ、昨年その生涯を閉じた。あれから1年、コロナ禍にもかかわらずスマッシュヒットを続ける大好評企画「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選」もこの第3弾でファイナルとなる。
公開館の新宿武蔵館には、ベルモンド・ディスプレイ前に献花台が設置され、ご希望の来場者の方に、折り紙で折っていただいた花が飾られている。
ジャン=ポールベルモンド傑作選3 公開情報
9/2(金)より新宿武蔵野館、テアトル梅田、名演小劇場ほか全国順次公開中
東京・新宿武蔵野館、大阪・テアトル梅田、愛知・名演小劇場、京都・京都シネマ、福岡・中州大洋劇場、9月2日公開
現在、北海道・サツゲキ、青森・フォーラム青森、宮城・フォーラム仙台、山形・フォーラム山形、福島・フォーラム福島、神奈川・ジャック&ベティ、千葉・キネマ旬報シアター、長野・長野松竹相生座/長野ロキシー、新潟・シネウインド、神戸・シネ・リーブル神戸、岡山・シネマ・クレール、広島・サロンシネマ、愛媛・シネマルナティック、鹿児島・ガーデンズシネマほか公開決定
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上映作品
※全作品、完全新訳日本語字幕版となります。
『華麗なる大泥棒』
原題:LE CASSE
監督:アンリ・ヴェルヌイユ
音楽:エンニオ・モリコーネ
共演:オマー・シャリフ、ロベール・オッセンほか
(1971年、仏・伊 合作映画、125分)※ベルモンド総選挙第3位
アテネを舞台に繰り広げられる3億フランのエメラルドの争奪戦! ジャッキー映画の原点にして、まさに実写版「ルパン三世」ともいうべきベルモンド・アクションの決定版!! これまでビデオ化、TV放映されてきた英語版より11分長い“フランス語オリジナル完全版”を上映!
★未ソフト化(フランス語完全版)
★HDリマスター版による51年ぶりの劇場公開
『ラ・スクムーン』
原題:LA SCOUMOUNE
原作・脚本・監督:ジョゼ・ジョヴァンニ
音楽:フランソワ・ド・ルーベ
共演:クラウディア・カルディナーレ、ミシェル・コンスタンタンほか
(1972年、仏・伊 合作映画、106分)※ベルモンド総選挙第10位
<死神>と呼ばれた男の壮絶な生き様! 『勝負をつけろ』から11年、巨匠ジョヴァンニが自作『ひとり狼』を自らリメイクした、男泣きノワールの最高傑作!
★未ブルーレイ化
★HDリマスター版による49年ぶりの劇場公開
『勝負(かた)をつけろ』
原題:UN NOMMÉ LA ROCCA
監督:ジャン・ベッケル
原作:ジョゼ・ジョヴァンニ
共演:クリスチーネ・カウフマン、ミシェル・コンスタンタンほか
(1961年、仏・西独 合作映画、106分)※ベルモンド総選挙第3位
28歳のベルモンドがクールに演じた<死神>と呼ばれた伝説のギャングの愛と友情。ジャン・ベッケル監督が初めてメガホンを取った『ひとり狼』最初の映画化にしてフレンチ・フィルム・ノワールの傑作!
★未DVD&ブルーレイ化
★HDリマスター版による60年ぶりの劇場公開
『冬の猿』
原題:UN SINGE EN HIVER
監督:アンリ・ヴェルヌイユ
音楽:ミシェル・マーニュ
共演:ジャン・ギャバンほか
(1962年、仏映画、104分)
ジャン・ギャバン&ベルモンドが、最高の演技で魅せる愛すべき酔っ払いたちの挽歌。冬のノルマンディを舞台に、迷える男たちが人生最大の花火をあげる哀愁の感動作!
★未ブルーレイ化
★4Kリマスター版による26年ぶりの劇場公開
『薔薇のスタビスキー』
原題:STAVISKY…
監督:アラン・レネ
音楽:スティーヴン・ソンドハイム
共演:シャルル・ボワイエ、アニー・デュプレーほか
(1974年、仏・伊 合作映画、117分)
フランスを震撼させた実話を名匠アラン・レネが華麗に描く傑作犯罪サスペンス! 野望とロマンに生きた謎の実業家スタビスキーの実像。
★HDリマスター版による47年ぶりの劇場公開
『ベルモンドの怪盗二十面相』
原題:L’INCORRIGIBLE
監督:フィリップ・ド・ブロカ
音楽:ジョルジュ・ドルリュー
共演:ジュヌヴィエーヴ・ビジョルドほか
(1975年、仏映画、100分)
変装、変装、また変装。ベルモンドが稀代の詐欺師を豪快に演じ、ノンストップの口八丁手八丁で無責任に暴走する“陽気なベルモンド映画”の究極点! 日本初公開以来、VHSにもなったことがない幻の1本!
★国内未ソフト化
★HDリマスター版による46年ぶりの劇場公開
『パリ警視J』
原題:LE MARGINAL
監督:ジャック・ドレー
音楽:エンニオ・モリコーネ
共演:ヘンリー・シルヴァほか
(1983年、仏映画、102分)
ベルモンド式スタント&アクションのすべてを網羅したポリス・アクションの到達点! フランスでオープニング興行新記録樹立、1983年フランス興行成績第3位、ベルモンド後期最大のヒット作品して、最後のハード・アクション!
★未ブルーレイ化
★HDリマスター版による37年ぶりの劇場公開
公開表記
配給・宣伝:エデン
提供:キングレコード
9/2(金)より新宿武蔵野館、テアトル梅田、名演小劇場ほか全国順次公開中
(オフィシャル素材提供)