イントロダクション
80歳を超えてなお旺盛な創作活動を続ける、日本を代表する現代詩人・吉増剛造。本作は彼が、ECD、灰野敬二、劇団・地点、飴屋法水とのコラボレーションでも知られる先鋭的なオルタナティブロックバンド・空間現代と、京都の小さなライブハウス「外」で2019年に行った、ある朗読ライブ《背》の記録だ。
吉増剛造はその年の夏、かつて津波を引き起こした海に面する宿の小部屋で、窓の向こうの海に浮かぶ霊島・金華山を眺めながら、その地に足を踏み入れることなく、「詩」を書いた。それは今、世界が閉ざされる経験をした後の我々には、予見的で、象徴的にも感じる。
その「詩」に歌人・斎藤茂吉の短歌からの引用を加え、マスクや目隠しを用いながら、声の限りに叫びまた朗読し、録音を再生し、ありったけの力で透明なガラスにドローイングする……鬼気迫るライブ・パフォーマンスの全編を凝視して、詩人の言葉の「背」後を浮き彫りにする。
監督は七里 圭。デビュー作『のんきな姉さん』で注目を集め、初公開以来15年間毎年アンコール上映を繰り返す、声と気配で物語を綴る異色の作品『眠り姫』などの先鋭的な作品で知られる鬼才。他のジャンルのアーチストとのコラボレーション作品も多く、「音から作る映画」プロジェクト、舞台上演「清掃する女」など実験的な映画制作、映像パフォーマンスも手掛けている。
自身初のドキュメンタリー映画となる本作で、生身のふたつの魂の激突をありのままに映し出す。またすでに、吉増剛造との次の作品制作も始まっており、京都・春秋座での劇場実験が2023年2月に予定されている。
(2021年、日本、上映時間:62分)
キャスト&スタッフ
監督・撮影:七里 圭
出演:吉増剛造、空間現代
公開表記
企画・製作・配給:チャーム・ポイント
2022年10月8日(土)、新宿K’s cinemaほか全国順次公開
オフィシャル・サイト
http://keishichiri.com/se-back/ (外部サイト)