第72回ベルリン国際映画祭エンカウンターズ部門に出品され、世界が熱視線を送る三宅 唱監督の最新作『ケイコ 目を澄ませて』の公開初日が12月16日(金)に決定、テアトル新宿ほかにて全国公開される。
本作は、聴覚障害と向き合いながら実際にプロボクサーとしてリングに立った小笠原恵子さんをモデルに、彼女の生き方に着想を得て、『きみの鳥はうたえる』の三宅 唱が新たに生み出した物語。ゴングの音もセコンドの指示もレフリーの声も聞こえない中、じっと<目を澄ませて>闘うケイコの姿を、秀でた才能を持つ主人公としてではなく、不安や迷い、喜びや情熱など様々な感情の間で揺れ動きながらも一歩ずつ確実に歩みを進める等身大の一人の女性として描き、彼女の心のざわめきを16mmフィルムに焼き付けた。2月に開催されたベルリン国際映画祭でプレミア上映されると「すべての瞬間が心に響く」「間違いなく一見の価値あり」と熱い賛辞が次々に贈られ、その後も数多くの国際映画祭での上映が続いている。主人公・ケイコを演じた岸井ゆきのは、厳しいトレーニングを重ねて撮影に臨み、新境地を切り開く。そして、ケイコの実直さを誰よりも認め見守るジムの会長に、日本映画界を牽引する三浦友和。その他、三浦誠己、松浦慎一郎、佐藤緋美、中島ひろ子、仙道敦子など実力派キャストが脇を固める。ケイコの心の迷いやひたむきさ、そして美しさ。全てを内包した彼女の瞳を見つめているうちに、自然と涙が込み上げてくる――。
この度、本作の場面写真を一挙解禁。映画人から寄せられた本作への絶賛応援コメントも到着!
解禁したのは、ケイコと彼女のまわりに生きる登場人物たちの日常を切り取った場面写真。河川敷でのロードワークやシャドーなど、会長と二人三脚で練習に励むカットが印象的だが、注目すべきは、友人たちとカフェで楽しそうに会話する姿、同居する弟とのやりとりなど、ケイコの日常を切り取った何気ないシーンである。その何気ない日常が美しい事を思い起こさせてくれるようなシーンの連続で、ケイコをストイックなアスリートとしてではなく、不安や迷い、喜びや情熱など様々な感情で揺れ動く、どこにでもいるような等身大の女性として描く。家族や友人、ジムの仲間と関わりあいながら一歩ずつ前に進んでいくケイコの姿、そしてその様々な表情、〈まなざし〉が印象的なカットが揃った。
また、各国の映画祭で続々上映が決定し、10/24から開催される第35回東京国際映画祭へも出品が決まった本作だが、映画人から早くも注目を集めている。濱口竜介監督、𠮷田恵輔監督をはじめ、映画祭ディレクター、映画評論家などから、「こんなに熱く、美しいなんて」「その表情から目が離せない」「きっと誰かの人生をかえるだろう」「ぐちゃぐちゃに泣いてしまった」など熱いコメントが到着した。
コメント一覧
濱口竜介(映画監督)
光と闇と運動を求める三宅 唱の歩みは留まるところを知らず、この国ではもはや他の追随を許していない(が、何とかついていきたい)。
『ケイコ 目を澄ませて』は流れる時間を柔らかにフィルムへと定着させた傑作だ。
岸井ゆきのの瞳の輝きと、手と腕の動きとともに渦を巻くような粒子の蠢きを存分に感じるには大画面で見る以外の選択肢はない。
𠮷田恵輔(映画監督)
岸井ゆきのは、間違いなく天才! ボクシングは練習の積み重ね。 地味な努力を継続する才能が必要。岸井さんが、ケイコさんが積み重ねた、その日々に泣いた。静かな世界が、こんなに熱く、美しいなんて。 間違いなく傑作!
市山尚三(東京国際映画祭プログラミング・ディレクター)
1作ごとに驚異的な進化をとげる三宅 唱の現時点での最高傑作。いろいろと素晴らしい点は多いが、特に日記の使い方に感動した。
坂本安美(アンスティチュ・フランセ日本 映画プログラム主任)
ケイコの一挙手一投足、その表情から目が離せない。
そして彼女には聞こえないはずの音が彼女を通してこんなにも強く響いてくる。
ひとつの動きがもうひとつの動きを導く、リズムを踏んで、まるでフレッド・アステが導くダンスのように。
あなたの呼吸、あなたの動きにこの闇の中、この光の中で目を澄ましていきたい。
佐久間宣行(テレビプロデューサー)
素晴らしかった。あっという間の99分。
岸井ゆきのの強さと熱さと怒りと悲しさに、一瞬も目が離せない。
小さな小さな映画なのに、とんでもないパンチを胸に打ち込んでくる。
しっかり痛いし、その痛みはきっと誰かの人生を変えるだろう。
こういうのを代表作っていうんだろうな。
相田冬二(Bleu et Rose/映画批評家)
岸井ゆきのは、拳だ。
彼女の貌からは、拳の音が聴こえる。
このフィルムは、蕾だ。
握った拳に、花を咲かせる蕾。
拳と蕾のメロウな接近遭遇に、鼓動が鳴りやまない。
後藤岳史(映画ライター)
氷の音、水道の音、雨の音、川の音。水が媒介するように室内から外へと拡がる音響空間に恵みを感じる。一方、この映画にはサイレントの位相がある。音が届かないケイコは「目を澄ませて」、朝の光が川面に反射し、夜の列車が光を明滅させ、橋の下にまだら模様を作るような、光と影の響き合う世界に身体を浸す。グローブとミット、拳と空気の共振れはダンスの身ぶりのよう。痛覚と愉楽が混在したその生の闘いは、岸井ゆきのと三宅 唱監督の闘いでもある。
月永理絵(ライター、編集者)
誰かの動きをじっと見つめること。
その身ぶりを正確に覚え再現すること。
ただそれだけを、彼女は何度も何度もくりかえす。
立ち止まり、それでも観察と再現を重ね、やがて顔をあげて走り出す。
映画を観見るとはこういうことだ。
その単純さ、その尊さに、ぐちゃぐちゃに泣いてしまった。
松崎健夫(映画評論家)
ケイコに<声>はない。けれど、彼女の<まなざし>は情熱や葛藤、憤りや哀しみを雄弁に可視化させる。まるで、かつて映画が無声として始まった歴史に倣いながら、<声>を“想像”≠“創造”させているかのようだ。
森 直人(映画評論家)
純度の高い映画を撮ろう、という澄明な意志の強さに涙が出る。岸井ゆきのの顔、あるいは肉体に宿った「無」への探究。我々も目を、そして耳を澄ます。
史上最もエレガントでハングリーなボクシング映画かも。
矢田部吉彦(映画プロデューサー)
岸井ゆきのは食べっぷりがすごいと共通の知人から聞いたことがある。ちっちゃい体にエネルギーを溜め込み、機を見て爆発する彼女はボクサーそのものだ。まるでコヨーテのように本能のまま相手に襲い掛かるゆきの/ケイコの躍動を三宅 唱が持ち前のリズム感で捉え、エモーショナルなパンチが胸に突き刺さる快作。
カルロ・シャトリアン(ベルリン国際映画祭アーティスティック・ディレクター)
三宅 唱監督の新作映画は、無駄なものを削ぎ、私たちの社会の中心に横たわる何か、つまりすべての人が限界を超えてでも自分を表現できる可能性を描く。岸井ゆきのが放つ圧倒的熱量に、心が動かされる。
配給:ハピネットファントム・スタジオ
2022年12月16日(金) テアトル新宿ほか全国公開
(オフィシャル素材提供)