イントロダクション
1920~1950年代、『美女と野獣』『オルフェ』など詩・小説・絵画・演劇・批評・映画などマルチな才能を発揮し、時代の寵児となったジャン・コクトーと、スタジオ式の撮影スタイルとは距離を置き、俳優たちの演技はもちろん、街頭、自宅、公共の施設など、即興性を重んじた撮影方法を敢行、以後の映画界に大きな革新をもたらし、後には、『サムライ』や『仁義』などに続くフイルム・ノワールのスタイルを確立していったジャン=ピエール・メルヴィル。
まだ監督デビューしていなかった若きフランソワ・トリュフォーは、この映画を25回も観たとメルヴィルに告白し、後には「コクトー最高の小説が、メルヴィル最高の映画となった」と絶賛している。クロード・シャブロルも、『いとこ同志』に本作撮影のアンリ・ドカエ(ルイ・マルの『死刑台のエレベーター』、トリュフォーの『大人は判ってくれない』)を迎える際に「『恐るべき子供たち』と同じ様に撮って欲しい」と懇願したそうだ。ヌーヴェルヴァーグの胎動は、この作品を起点に既に始まっていたのである。
美しくも危険な姉弟を演じた俳優たちも素晴らしい。姉を演じたニコール・ステファーヌは、あのロスチャロイルドの家系で育った。弟役のエドゥアルド・デルミットは、コクトーに「彼は私にとって“美”そのもの」と言わしめ、彼の寵愛の下に生涯を送った。
日本語字幕は今回の公開を機に一新された。『燃ゆる女の肖像』の横井和子氏が翻訳を担当し、小説版『恐るべき子供たち』の翻訳者でもあるフランス文学者・映画評論家の中条省平氏が監修を担った。古典と現代の表現の絶妙のバランスが、今回の新訳では遺憾なく発揮されている。
また最新の4K映像は、コクトーとメルヴィルが拘った美術や撮影のディテールが、深みのあるモノクロームの映像の中にクリアに表現されており、その再現性は圧巻というほかない。
ストーリー
ある雪の日の夕方、子供達の雪合戦が熱を帯びる中、ポールは密かに想いを寄せていた級友ダルジュロスの放った雪玉を胸に受け倒れてしまう。
怪我を負ったポールは自宅で療養することになるが、そこは姉エリザベートとの秘密の子ども部屋、他者の介入を決して許さない、危険な愛と戯れの世界だった。
(1950年、フランス、上映時間:105分、モノクロ|スタンダード4Kデジタルリマスター版|DCP・Blu-ray)
スタッフ&キャスト
監督・脚本:ジャン=ピエール・メルヴィル
脚本:ジャン・コクトー、ジャン=ピエール・メルヴィル
撮影:アンリ・ドカエ
衣装デザイン:クリスチャン・ディオール
日本語字幕:横井和子
監修:中条省平
出演:ニコール・ステファーヌ、エドゥアール・デルミットほか
ギャラリー
予告編
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公開表記
配給:リアリーライクフィルムズ
10月2日(土)より、[シアター・イメージフォーラム]他にて 全国縦断公開決定!
(オフィシャル素材提供)