映画『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』の完成披露上映会が、11月9日(水)に都内にて開催され、俳優の市毛良枝、東京2020オリンピック銅メダリストでプロ・フリー・クライマーの野口啓代と、武石浩明監督が舞台挨拶に登壇した。
昨年、登山界のアカデミー賞「ピオレドール2021生涯功労賞」をアジア人として初めて受賞。日本が誇る世界的アルパイン・クライマー山野井泰史の足跡を、貴重な未公開ソロ登攀映像や関係者の証言などとともに振り返るドキュメンタリー映画『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界 完全版』。今年3月、ヒューマントラストシネマ渋谷にて開催された「TBSドキュメンタリー映画祭2022」でクローズド作品として上映された『人生クライマー 山野井泰史と垂直の世界』に9分の新規カットを追加し、命をかけて限界に挑み続ける伝説の登山家・山野井泰史に迫っていく。
登山好きとしても知られ山野井とも親交のある市毛は、「普段の山野井さんの人柄がそのまま出ていて、すごくステキ」と映画の感想を述べ、「彼はいつも山の話ばかりしていますが、“岩場”の話をしているのに、“砂場”の話をしている子どもみたいなんです(笑)」と嬉しそうに話す。
野口は「私はスポーツ・クライミング競技に入ってしまったので、実際に雪山とかアルパインの経験がないんです」と明かすも、「自分の登りたいという気持ちや、目標に向かって作戦を立てトレーニングして挑むときの気持ちなど、共感できるところがたくさんありました。偉大な方と再確認できました」と、同じく世界の頂点で活躍していたからこその視点でコメント。そして、「スポーツ・クライミングとの違いは命の危険と隣り合わせということ。攻めるか、それとも引き返すべきかという駆け引きは本当に新鮮でした」とジャンルの違いから、新しい発見も。
自らもヒマラヤ登山経験のあるジャーナリストで、クライマーの一人である武石監督は「山野井さんは子どもの頃のピュアな気持ちで“山を登りたい”という思いを維持していることが素晴らしいし、僕らの憧れ。自分が好きな山登りのことと、自分も叶わない人を描いてみたかった。好きなことに没頭する人生を感じていただけたら嬉しいです」と、山野井の魅力と作品への思いを吐露。
30年以上も前から、より難しいルートにソロという形での登山に挑戦し成果を残した、アジア人である山野井。「ヒマラヤのジャイアンツと呼ばれる大きな山に挑んで生き残ったクライマーは2~3人しかいない。そんな彼をどうしても紹介したかった」と力を込める監督。印象に残るシーンについて「山野井さんと一緒に雪崩にあったシビアな瞬間は記憶に刻まれています」と回顧した。
「映画の中で印象に残っている山野井の言葉やシーンは?」と問われた市毛は、「3つあります。『死ぬかもしれないと思うこともあるけれど、それがなかったら山は楽しくない』『1人は怖いけど、だから充実感がある』、そして『やっぱり俺は山が好き、登ることが好きなんだなあ』という言葉です」と心に残る言葉を明かした。
一方の野口は「登山の準備に洋服のタグを全部外し、フォークの先まで削って軽量化に務めたいたところです」と驚きを表すと、監督も「やれることは全てやるという彼の象徴的な場面だったのかも」と述べていた。
また、映画の語り部を務めた岡田准一は、山野井のことを「混じり気のない眩しい存在、日本が誇る、知ってもらいたい日本人」と表現しているが、「山野井のことを紹介するとしたら?」と尋ねられ、市毛は「とてもチャーミングで、純粋に山が好き。彼に同行した人はみんな惚れてしまうんです」と紹介。野口は「山を登るために生まれてきた方。全クライマーが目指すべき存在」と。監督は「“人生(一拍おいて)クライマー”それしかないです」とキッパリ。
最後に市毛は「彼のチャーミングな魅力をぜひご覧くださったら嬉しいです」と微笑み、野口は「自分もこれくらいの情熱を持って目の前のことやお仕事に打ち込んだら、もっともっと楽しいし、素晴らしいんじゃないかと教えてくれた作品。皆さんもぜひこれまで以上に頑張るきっかけになったらいいなと思います」と。監督は「この映画は“山”の映画であり、一方で山野井泰史というクライマーの人生を描いた映画です。人生は成功ばかりではなく、逆境や失敗があっても何度もそれを乗り越えて、自分の好きな道を歩んでいく。この映画を観て、自分も何かやってみたいなという勇気を受け取っていただけたら嬉しいです」とメッセージを送り、舞台挨拶を締めくくった。
登壇者:市毛良枝、野口啓代、武石浩明監督
(オフィシャル素材提供)
公開表記
配給:KADOKAWA
11月25日(金) 角川シネマ有楽町ほか全国順次公開!!