イベント・舞台挨拶映画祭・特別上映

『午前4時にパリの夜は明ける』フランス映画祭2022 横浜Q&A

©2021 NORD-OUEST FILMS – ARTE FRANCE CINÉMA

 シャルロット・ゲンズブールが主演を務めるミカエル・アース監督最新作「The Passengers of the Night(英題)」[Les Passagers de la Nuit(原題)]の邦題が『午前4時にパリの夜(よ)は明ける』に決定し、2023年4月、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほかにて全国公開となる。

 公開に先駆け、フランス映画祭2022 横浜にて上映され、12/4(日)の上映後に行われたQ&Aにミカエル・アース監督、プロデューサーのピエール・ギュイヤールが登壇した。

 3度目の来日となるミカエル・アース監督。今作で80年代を舞台に選んだ理由について「私自身、80年代に子ども時代を過ごしました。フランスには『人は祖国に形成されるのと同じように子ども時代に形成される』という言葉があります。私自身80年代の色合いや感覚、質感や音といったものに育てられたと感じています。80年代をノスタルジックな意味合いで撮ったわけではありませんが、自分で経験したあの時代に再び飛び込んでみたいということで80年代を描いたのです」と振り返った。「本作の舞台に選んだボーグルネル地区は特別な場所なんです」と語る監督。「例えば16区だったらブルジョワが住んでいるし、5区は学生街です。ただ15区というのは一言で言い表せないんです。主人公が住んでいるような高層のビルもありますし、眼下にはセーヌ川が流れています。近くにはパリ郊外が広がっており、高級住宅街もあります。様々な性質の地域が一緒くたになっていますので、とても映画的に映りの良い地域だと思いました」と物語の舞台となった場所について解説した。

 主演にシャルロット・ゲンズブールを起用した経緯について問われると「私は簡単に分類できないものに惹かれるんです。エリザベートという役もナイーブである一方でとても洞察力があったり、内気でありながら勇気ある行動をとるなど様々な側面を持っています。シャルロットも実際に会うとそういった二面性をもっている方でしたので、今回の役にぴったりだと思いました」と語った。

 また、本作では主人公エリザベートが働く深夜ラジオのパーソナリティ・ヴァンダをエマニュエル・べアールが演じ、フランスを代表する名優同士のタッグが実現した。「実際にヴァンダのモデルになった深夜ラジオのパーソナリティがいるんです。彼女は『夜の出来事[Les Chose de la Nuit(仏)]』という番組を持っていて、映画の中で描かれているように、一般人がスタジオまで来て、自分の身の上話をついたての向こうでするのをパーソナリティが聞くんです。私も当時眠れない夜にウォークマンで聴いていましたが、思春期でしたのでかなり刺激を受けました」と監督が自身の経験談を交えて語った。

 80年代はシャルロット・ゲンズブール自身がちょうど10代を過ごした時代。当時を知っているシャルロットが、息子役のキト・レイヨン=リシュテル、家出少女タルラ役のノエ・アビタ、2人の若い俳優にどんな声をかけていたのか問われると「3人の関係は、とても自然で家族のように仲が良かったです。もちろん若い俳優たちはシャルロットと共演することに少し緊張している様子でしたが、彼女はとても寛容な人です。マチアス役のキト・レイヨンを気にかけて、とてもやさしく見守っていましたね」と現場の和やかな雰囲気を振り返った。

 監督の過去作『アマンダと僕』(18)、『サマーフィーリング』(15)では夏の美しいパリが印象的だったが、今作で寒い季節を描いた理由を問われると「個人的には夏に撮影するのが好きなんです。なぜなら機材的にも自分自身も身軽に撮影できるから。また、不在をテーマに描いた場合、夏の青空の下のほうが悲しみがより際立つとも思っています」と語った。「本作では80年代を再現する必要がありましたが、現在のパリは当時からかなり風景が変わっています。監督は屋外の撮影を好んでする人なのですが、ちょうど冬はコロナの影響で街に人も車も少なかった。それを利用して撮影できました」とプロデューサーのピエールが撮影の裏側を明かす一幕も。

 本作ではエリック・ロメールの『満月の夜』(84)が引用される場面が。『満月の夜』を選んだ理由について問われると「もちろん私はロメール監督が大好きなのですが、『満月の夜』を使ったのは女優パスカル・オジェに対するオマージュでした。大好きな女優ですが、『満月の夜』の撮影が終わってすぐくらいに、若くして急死してしまいました。本作に登場するタルラという役はパスカル・オジェを少し反映させています」「同じ理由でジャック・リヴェットの『北の橋』(81)の抜粋も使っています。偶然その2作は80年代の作品でしたので、映画からも当時の雰囲気を感じることができると思います」と語った。
 監督の穏やかな人柄が伝わるQ&Aは盛大な拍手の中で幕を閉じた。

登壇者:ミカエル・アース監督、ピエール・ギュイヤール(プロデューサー)

(オフィシャル素材提供)

公開表記

 配給:ビターズ・エンド
 2023年4月 シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国公開

関連作品

スポンサーリンク
シェアする
サイト 管理者をフォローする
Translate »
タイトルとURLをコピーしました