『バベル』(06)で米アカデミー助演女優賞にノミネートされ、その後『パシフィック・リム』シリーズ等数々のハリウッドやヨーロッパ作品で主要な役を重ねてきた国際的な俳優の菊地凛子が、20年ぶりに熊切和嘉監督とタッグで初の日本映画単独主演を務め、本作『658km、陽子の旅』は、2023年に公開となる。
熊切和嘉監督と20年ぶり再タッグ。全編ノーメイクで挑む菊地凛子の新境地!
本作で監督を務める熊切和嘉は2001年『空の穴』の劇場デビュー作で当時新人の菊地をヒロインに抜擢。以降それぞれ別の道で活躍し、2021年熊切監督は本作で一人ヒッチハイクで東北を旅する主人公の陽子を、菊地凛子しかいないとオファー。菊地は「自分を見出してくれた熊切監督ならば」とオファーを快諾。20年の時を経た監督と俳優の邂逅となった。“陽子”は菊地がデビュー時代から過ごした時代背景そのままに就職氷河期世代。父の訃報を受け東京から青森県弘前市の実家まで、思いがけずヒッチハイクで向かう羽目に陥っていく。菊地は初冬の東北を舞台に過酷な状況に身を置く主人公を全シーン、ノーメイクの体当たりで演じ切り、全幅の信頼を置く熊切監督に文字通り全てをゆだね渾身の演技を披露。ロスジェネとも呼ばれるこの世代が背負うリアルを見事に表現している。
会いたくない父、帰りたくない故郷。
一夜の旅が凍った心を溶かす、極上のロードムービーが誕生
“陽子”<1980年生まれ、42歳、青森県出身。独身。東京在住。在宅フリーター。>24年前、父に反対されながら上京したが、夢破れ挫折。自分の殻に閉じこもっていたある日、父親の訃報をきっかけに思いがけず一人ヒッチハイクで24年間帰っていなかった故郷・弘前をめざすことに。東京から福島、宮城、岩手そして青森、その道中での出会いやトラブルを通した一夜の旅で陽子の止まっていた時と心が動きはじめる。他人との密な関係を作らず生きることができてしまう現代、人との関わりが、ぬくもりが、後悔を抱え孤独に凍ったヒロイン陽子の心を溶かし癒していくさまが観る者の心を揺さぶるだろう。
TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM(TCP)脚本部門受賞作の映画化
『嘘を愛する女』『哀愁しんでれら』等の話題作を輩出する映画オリジナル企画コンテストTSUTAYA CREATORS’ PROGRA (TCP)の新たな作品が本作だ。2019年に開催されたTCP2019脚本部門の審査員特別賞受賞作している。『ノン子36歳(家事手伝い)』や『夏の終り』で詩情豊かに繊細な女性を描いてきた熊切監督は、この企画を快諾し参加。原案脚本の受賞者である室井孝介氏と脚本をさらに深め、現代を繊細に生きる“陽子”像をより浮き彫りにし、閉ざしていた陽子の心の動きに、未だ震災の爪痕残る東北の風景を重ねて、原案脚本からよりドラマティックな内容へと昇華していった。
キャスト&スタッフ コメント
主演:菊地凛子
熊切和嘉監督には、20年前私が女優としてやっていけるか、不安だった時に『空の穴』ではじめて大きな役をいただきました。この作品をきっかけに私は俳優の道を行くことを決め『バベル』など海外の作品にも挑戦することが出来ました。この20年間、熊切監督が活躍されている姿や作品を拝見するたびに、自分はまた声をかけてもらえる俳優として成長できているのか、もしその時がきたら全力で熊切監督の作品にぶつかっていこうと思っていました。その思いが、形となって、この作品で、ついに叶いました。40歳台となった私の新たな道の節目として、この作品に参加できたことを何よりも誇りに思います。
監督:熊切和嘉
最初に出会った頃の菊地さんはまだ本名で活動されていて、僕ら映画を撮ってる仲間うちでの「妹分」みたいな存在でした。それがあれよあれよという間に国際的な映画俳優になって、活躍を嬉しく思う反面、もう二度と逢えないのかなと寂しくも感じていました。それがまさか、こうして20年ぶりに一緒に映画を作れるとは! 毎日が新鮮で感慨深く、本当に夢のような撮影でした。
原案・共同脚本:室井孝介
最初は映画になるあてもなく、ただこの物語を形にしなければという思いで脚本を書いていました。まさか菊地凛子さん主演、熊切監督で実現するとは。劇場の大きなスクリーンで多くの人に観てもらえるのを楽しみにしています!
公開表記
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
2023年 全国公開
(オフィシャル素材提供)