「TBSドキュメンタリー映画祭 2023」のアンバサダー就任&ラインナップ発表イベントが1月26日(木)に都内で行われ、本映画祭のアンバサダーを務めるLiLiCo、大久保竜プロデューサー、そして上映作品の監督17名(登壇11名/オンライン参加6名)が参加した。
魂を揺さぶる良質のドキュメンタリー映画作品の発信地となるべくTBSが立ち上げたドキュメンタリー・ブランド「TBS DOCS」。そこから生まれたドキュメンタリー作品を劇場で上映する「TBSドキュメンタリー映画祭」も今年で開催第3回目を迎える。
今回は【東京:ヒューマントラストシネマ渋谷/3月17日(金)~30日(木)】【大阪:シネ・リーブル梅田/3月24日(金)~4月6日(木)】【名古屋:伏見ミリオン座/3月24日(金)~4月6日(木)】【札幌:シアターキノ/4月15日(土)~21日(金)】と、前回を上回る規模での実施が決定している。
「TBS DOCS」のプロデューサーでTBS報道コンテンツ戦略室の大久保プロデューサーは「映画祭第3回目となる今回は、これまで以上に幅広いジャンルからの上映ラインナップを揃えることができました」と自信を持ってアピールした。
一方、本映画祭のアンバサダーに就任したLiLiCoは、TBS系情報番組「王様のブランチ」での映画コーナーを担当して22年が経過したことを明かし、「映画にもっと深く関われたらいいなと思っていたところに、こんなにも素晴らしい映画祭のアンバサダー就任ということで、私としてはぜひともずっと(映画祭のアンバサダー)務めさせてもらえたら嬉しい」と喜色満面。
LiLiCoは映画『シュガーマン 奇跡に愛された男』(2013年)をきっかけにドキュメンタリーの魅力にハマったそうで「最近はあまりにもドキュメンタリーばかりを紹介するので“ドキュメンタLiLiCo”と呼ばれている」と会場を笑わせつつ、「ドキュメンタリーだからこそ自分が見たことのない世界を見てみようと思わせてくれる」とドキュメンタリーの魅力を語った。
さらに「もし自分でドキュメンタリーを監督するなら?」と聞かれたLiLiCoは「私の人生も面白いはず!」と自らの半生のドキュメンタリー作品化を希望し「周囲から『忙しそうですね』と言われるけれど、実際はその10倍忙しい。マネジャーなしでここまで頑張っているということを見せつけたい(笑)」と企画を売り込んでいた。
ラインナップ発表では、全15作に及ぶ上映作品の詳細が明らかになった。その上映作品である『カリスマ~国葬・拳銃・宗教~』監督の佐井大紀、『通信簿の少女を探して~小さな引き揚げ者 戦後77年あなたは今~』監督の匂坂緑里、『サステナ・ファーム トキと1%』監督の川上敬二郎、『アフガン・ドラッグトレイル』監督の拓須賀川 拓、『東京SWAN 1946~戦後の奇跡『白鳥の湖』全幕日本初演~』監督の宮武由衣、『シーナ&ロケッツ 鮎川誠と家族が見た夢』監督の寺井 到、『ダリエン・ルート “死のジャングル”に向かう子どもたち』監督の萩原 豊、『魂の殺 ~家庭内・父からの性虐待~』監督の加古紗都子、『War Bride 91歳の戦争花嫁』監督の川嶋龍太郎、『KUNI 語り継ぐマスク伝説~謎の日本人メタル・ギタリストの半生~』監督の佐藤功一、『それでも中国で闘う理由 ~人権派弁護士家族の7年~』監督の延廣耕次郎、『オートレーサー森且行 約束のオーバルへ』監督の穂坂友紀、『やったぜ!じいちゃん』(名古屋限定上映)監督の仲尾義晴、『93歳のゲイ』(大阪限定上映)監督の吉川元基、奥田雅治プロデューサー、『劇場版 ヤジと民主主義』(札幌限定上映)監督の山﨑裕侍、長沢 祐らが自らの作品をPRした。
2020年に転倒して膝を骨折した経験のあるLiLiCoは、気になる作品として『オートレーサー森且行 約束のオーバルへ』を挙げて「私も2年前に膝の皿を割ったことがあって、リハビリの大変さを実感しました。森さんがリハビリをする姿を見て私もパワーをいただきたいと思いました」と興味津々。その『オートレーサー森且行 約束のオーバルへ』を手掛けた穂坂監督は、過酷なリハビリに立ち向かう森の姿に触れて「歩けるようになっただけでもすごいことなのに、オートレーサーとしての復帰を目指してリハビリを続けている。その姿に惚れこみました。森さんが壁にぶつかる姿を見て辛いと思うこともあったけれど、彼の姿を見ると応援せずにはいられなくなる。彼の挑戦を通して映画を観た皆さんが自分を見つめ直すきっかけになったら嬉しいです」と思いを込めた。
またLiLiCoは、すでに鑑賞済の『魂の殺人 ~家庭内・父からの性虐待~』に触れて、号泣しながら「内容を思い出すだけで涙が出てきます。家は一番安全でなければいけない場所なのに……。絶対にあってはならないことだけれど、このような事実があるということをみんなが知るのは大事なこと」と呼び掛けた。
そして映画祭開催に向けて「人間を知り、人生を知る。他人の人生をスクリーンで見て、自分の人生を考える。それがドキュメンタリーの素晴らしいところ。上映作品からさまざまなことを知り、スクリーンの向こう側にあるものを感じ取って欲しいです」と盛り上がりを期待していた。
登壇者:LiLiCo(映画祭アンバサダー)、大久保竜(映画祭、TBS DOCSプロデューサー)、各作品監督 ※一部リモート参加
上映作品ラインナップ
アフガン・ドラッグトレイル
監督:須賀川 拓
街を⾒下ろす⼩さな丘を⽉明かりが淡く照らし出していた。
草⽊は無く、ゆらゆらと揺れる遠くの町の灯りまで⾒通せる。
「ザッザッ」駆け下りる⾜⾳が異様に⽬⽴つ。戦闘員の怒号と⽼⼈の泣き声が静寂を切り裂いた。⼭に潜む薬物中毒者の取り締まりは苛烈だ。
それでも常習者たちは「地獄」と呼ばれる橋の下に集まり、ゆっくりと死を待つ。
アフガン・ドラッグトレイル――。この国を蝕む薬物の闇。私たちはその深部にカメラを⼊れた。
それでも中国で闘う理由 ~人権派弁護士家族の7年~
監督:延廣耕次郎・松井 智史、上映時間:78分
2015年夏、中国で⼈権派弁護⼠ら約300⼈が拘束された。
そして⼈権派弁護⼠らが突如連絡を絶ち、拘束されたことが後になって判明するケースが今でも相次いでいる。
「党の100年は⼈権のために戦い⼈権を尊重し発展させた100年だ」と主張する習近平指導部。急速な発展を遂げ経済⼤国となった中国で何が起きているのか。
⼀家の⼤⿊柱を突然失いながらも奮闘する家族を通して中国社会の現実を⾒つめる。
オートレーサー 森且行 約束のオーバルへ
監督:穂坂友紀
2021年1⽉の落⾞事故。それは「5ミリずれていたら即死していたかもしれない」「⼀⽣⾞椅⼦⽣活になるかもしれない」⼤事故だった。5度の⼤⼿術、両⾜⿇痺の後遺症。それでも、森 且⾏は再び歩くことを、再び⾛ることを諦めなかった。
壮絶なリハビリ、⼼にあるSMAPの仲間たちへの思い、現実を知って頭をよぎったもう1つの選択肢。
50歳⽬前、ゼロから再起を⽬指す2年間の闘いを追った。
カリスマ~国葬・拳銃・宗教~
監督:佐井大紀
私は普段、TVドラマのスタッフとして現場のエキストラと向き合っている。
閉じられた画⾯の中を豊かにするため、決められた設定を⽣きるエキストラ。
私は彼らに、国家や組織という閉じられたフレームの中で⽣きる、⾃らの⼈⽣を⾒た。
私は誰しもに問いたくなった。「あなたの⼈⽣の主役は誰?」
国葬、反対デモ、かつて世間を驚かせた「イエスの⽅⾈」。
⽇本社会のエキストラと主役(カリスマ)に、時を超えてマイクを向けた。
東京SWAN 1946 ~戦後の奇跡『白鳥の湖』全幕日本初演~
監督:宮武由衣、上映時間:81分
1946 年、敗戦直後。京城出⾝の⻘年・島⽥廣は⾃⾝のバレエの才能を⾒出したロシア⼈の師匠・エリェナ・パァヴロヴァの悲願を成し遂げるために前代未聞の『⽩⿃の湖』全幕初演という無謀な挑戦に奔⾛する。
次々と仲間を増やしていく島⽥の前に現れたのは、若き⽇に密航し、上海でスターダンサーに昇りつめた謎の男・⼩牧正英。
⾷べ物も稽古着もないなか、⼿探りで作り上げる奇跡の舞台。
焼け跡の東京で起きた感動の歴史秘話。
War Bride 91歳の戦争花嫁
監督:川嶋龍太郎、上映時間:79分
彼⼥の名前は桂⼦ハーン、91歳。私の伯⺟である。
桂⼦は1951年、20歳の時に⽶軍の兵⼠と結婚し海を渡った『戦争花嫁』とよばれた ――。
⽇⽶版の「愛の不時着」と呼ばれる今作。これは【真実の愛の物語】である。
激動の時代を⽣きた桂⼦の⼈⽣・⽣き様・家族・苦悩・差別などを当時の世相と共に描いた意欲作。戦後たった5年、⽶兵と歩いているだけで娼婦と⾔われる時代に「何故桂⼦は敵国の軍⼈と結婚をしたのか?」そこにあった幸せとは――。
ダリエン・ルート “死のジャングル”に向かう子どもたち
監督:萩原 豊、上映時間:71分
中⽶コロンビアの⼩さな街に、数万⼈のハイチ難⺠が押し寄せていた。
そこで2歳と6歳の幼い姉妹を抱える家族らに出会う。
混迷を続ける⺟国を離れ、新たな⼈⽣を求め、陸路でアメリカを⽬指そうとしていた。
彼らが向かったのが、険しい地形やギャングの⽀配などから、“死のジャングル”と呼ばれる密林地帯「ダリエン・ギャップ」。年間13万⼈以上の難⺠が越境を試みる。その先に希望はあるのか。アメリカに辿り着けるのか……。
魂の殺人 ~家庭内・父からの性虐待~
監督:加古紗都子、上映時間:71分
渡辺多佳⼦さんが4歳の頃、突然、性虐待は始まった。
加害者は、⾃分の⽗親だった。
“魂の殺⼈”と呼ばれ、被害者の⼼に深い傷を負わせる、性虐待。
50年以上もの苦しみを経て、多佳⼦さんは決意する。実名で被害を告発すること。そして、絶縁状態にあった⽗親と対峙することを。
「抵抗できなかった私が、悪いんですか?」多佳⼦さんの問いかけに、⽗親が語った⾔葉とは――。声を上げ始めた被害者たちと、その闘いを描く。
サステナ・ファーム トキと1%
監督:川上敬二郎、上映時間:69分
あなたの街でもミツバチやトンボが減った?
それは平成に⼊って登場し、今や最も多く使われている殺⾍剤「ネオニコチノイド系農薬」の影響があるかもしれない。
いや、⾍どころか、宍道湖ではウナギやワカサギに、佐渡ではトキにも悪影響が……?
そんな謎に挑んだ⼤学教授たちがいる。さらにヒトへの懸念も浮上した。
そこで農薬や化学肥料に頼らない有機農業を取材し始めると、究極の持続可能な農園=サステナ・ファームに遭遇した。えっ?
KUNI 語り継がれるマスク伝説 ~謎の日本人ギタリストの半生~
監督:佐藤功一
「絶対プロになってみせる! 強い信念のもとアメリカへ渡った⽇本⼈ギターリスト「KUNI」。
ミステリアスな仮⾯をかぶり、LA.メタルブームに沸くミュージック・シーンのど真ん中でギタリストの地位を築き上げ、悲願の全⽶デビューを果たす。
帰国後、プロデューサーとして⾳楽シーンに貢献をした後、再びステージに⽴つが突如ギターを封印。
なぜ彼はギターを封印したのか? ロック・シーンの最先端を駆け抜けた「KUNI」の謎に迫る!
通信簿の少女を探して ~小さな引き揚げ者 戦後77年あなたは今~
監督:匂坂 緑里
ディレクターが偶然⼿にした画家ゴーギャンの古書に、1枚の⾊褪せた通信簿が挟まっていた。
昭和23年、⼤分県別府市の⼩学6年⽣の少⼥のものだった。
「あの戦争を⽣き延びた少⼥に、通信簿を届けたい」――。
それは歴史に埋もれた⽇本の戦後史を紐解く旅の始まりだった。
“通信簿の少⼥”を探す中で「⽇本が歩んだ戦後77年」の断⽚を体験する。
令和4年度⽂化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部⾨優秀賞受賞作品。
シーナ&ロケッツ 鮎川誠と家族が見た夢
監督:寺井 到
78年に結成された「シーナ&ロケッツ」は「ユー・メイ・ドリーム」などのヒットで知られる福岡発のロックバンドだ。
中⼼となるのはギター・鮎川 誠とボーカル・シーナの夫妻。
結成以来休⽌することなく活動してきたが、2015年シーナが⼦宮頸がんで急逝。
メンバーですらバンドはもう終わりかと思ったが、鮎川はバンドの続⾏を決断。シーナの地元北九州は若松で彼が二人の馴れ初めからはじまるバンド秘話を語りはじめた……。
93歳のゲイ【大阪限定上映】
監督:吉川元基、上映時間:74分
同性愛者の⻑⾕ 忠さんは、結婚をしたことも交際した経験もない。
ずっと誰にも打ち明けることなく、好きな男性が出来ても告⽩することができない時を過ごした。かつて同性愛は「異常性欲」や「変態性欲」だと公然と語られ、治療が可能な精神疾患とされてきた。
孤独の中で⽣きてきた⻑⾕さんに訪れる「出会い」と「別れ」。この国の同性愛の歴史を紐解きながら、本当の⾃分を隠し続けた「93歳のゲイ」の⽇々をみつめる。
やったぜ!じいちゃん【名古屋限定上映】
監督:仲尾義晴、上映時間:70分
⽣まれつきの脳性マヒで⾝体が不⾃由な⾈橋⼀男さん75歳。
⼦どもの頃には「20歳までは⽣きられない」と診断された。
しかし、74歳の今も元気、結婚し、⼆⼈の娘さんをもうけ、更に孫まで。
今も印刷の仕事をし、積極的に外出もしている。今から50年前。
CBCのカメラが⾈橋さんを撮影していた。
障がい者4⼈だけで北陸の温泉に旅する様⼦を記録したもの。
その映像を交えながら、⾈橋さんが感じることや暮らしぶりを静かに描く。
劇場版 ヤジと民主主義【札幌限定上映】
監督:山﨑裕侍・長沢 祐、上映時間:78分
2019年7⽉、札幌で参議院選挙の応援演説をしていた安倍晋三総理(当時)にヤジを⾶ばした男⼥が北海道警察に排除された。
年⾦政策を批判するプラカードを掲げようとした⼥性らも排除されるなど、表現の⾃由を警察が奪った問題として注⽬を集めた。
この問題を追及し数々の賞を受賞したドキュメンタリー番組の劇場版。
テレビでは伝えられなかった映像や証⾔、追加取材を交え再編集。安倍⽒銃撃事件後、さらに重要な意味を増す問題作。
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