余命2年から骨髄移植で命を救われた俳優・樋口大悟が自らの体験をもとに企画・原案・主演を務めた映画『みんな生きている ~二つ目の誕生日~』が、2023年2月4日(土)より新宿 K’s Cinema ほか全国順次公開となる。本作は、白血病の青年とドナーとなる女性の目に見えない絆、そして二人を支える人たちの葛藤を描いた「いのち」の物語。
公開に先立ち、1月26日(木)にアキバシアターにて、主演の樋口大悟、松本若菜、両沢和幸監督登壇の特別試写イベントが開催された。
映画上映後、司会を務める本作のプロデューサー・出演者である榎本 桜が樋口、松本、両沢監督の3名を呼び込むと、会場からは大きな拍手が鳴り響く。大勢の観客の前に立った樋口は「僕は25歳の時に急性骨髄性白血病になり、5年間闘病した後に、名前も顔も分からない方に助けてもらいました。それからはずっと感謝の思いを伝えたいなと思っておりましたが、そんな中、両沢監督が賛同してくださったおかげでようやく映画を公開できるようになりました」と制作の経緯を説明。
本作は白血病患者側の視点だけでなく、骨髄ドナー提供者側の視点からも物語が紡ぎ出されているのが特徴。そんな本作で、骨髄移植を依頼された、優しくも強い意志を持った一児の母・美智子を演じることになった松本は「正直、ふたつ返事ではなかったです。女優としてこのお話を受けることで、偽善者と思われるんじゃないか。そういうことを思ったのは事実です。そこで悩んだりもしました」と正直な思いを吐露しつつも、「でも、わたしは演じること、表現することがお仕事なんだから、それをするのがなぜ悪いんだろうという考えに変わって。その後、監督や(樋口)大悟さんの言葉を聞いて、その熱量の高さに、何かわたしもお手伝いできるのかな、という気持ちになりました」と今回の役を受けた経緯を説明した。
ドナー提供者である美智子という役を演じるにあたり、「天使のように見えるようにはしたくなかった」と語る松本は、そんな中で「実はわたしが勝手にセリフを変えてしまったところがあったんですよ」と告白。「(ドナー提供を心配する夫に向かって)劇中で『だってわたしがいなかったら死んじゃうかもしれないんだよ』というシーンがありましたが、あれ、本当は『助からないかもしれないんだよ』というセリフだったんですよね。だけど、美智子が『死んじゃうかもしれない』と言ったほうが響くんじゃないかなと思ったんです。家族の前だから、あえて“死”という言葉を選んだのかなと思って。だからわたしの中でもあそこのシーンは記憶に残っているというか、印象に残っていますね」としみじみと付け加えた。
その話を聞いていた両沢監督は、「一見(美智子は)いい人じゃないですか。でもいい人の役って難しいんですよ。脚本を書くときも、多少クセがあったり、意地悪なほうが分かりやすいんだけど、そういうのが全然ない人をリアリティーをもってちゃんと映画の中に存在させるというのはものすごく難しいこと」と前置きすると、「だからこれはいつも思うことなんだけど、最終的には役者のほうが僕よりも役のことをよく分かっている。だから編集してつなぎながら、美智子というのはこういう人だったのかと、その時になって初めて僕が理解したという感じがあった」と述懐。さらに「(主人公の)大介はモデルがいるけど、美智子は想像しながら書いたんで。そこに血肉が通ったのは、本当に若菜さんのおかげだと思っております」と感謝の思いを述べると、松本も「本当にありがとうございました」としみじみ返した。
そしてこの日は、骨髄バンクユースアンバサダーの小川快人さんと、高橋華奈さんが登場。10~20代のドナーが不足しているという深刻な状況がある中、同世代への情報発信やドナー登録推進に向けて活動しているという2人。樋口同様、移植経験者となる小川さんは「自分と重なるところが多くて、本当に共感できる映画でした。自分も本当にドナーさんには感謝してもしきれないですし、家族やいろいろな人に助けてもらえて、ここに立っています」とコメント。さらにドナー登録を行っているという高橋さんも「わたしの友人が骨髄移植を必要な病気になりまして。でも血縁以外の方で骨髄が一致する確率って数百分の1から数万分の1くらいの割合だと言われていて、それって奇跡的なことだなと興味を引かれて、活動を始めました」と続けた。
2人の話を聞いた樋口は「正直これまで亡くなった方にもたくさん見てますし、この瞬間も苦しんでいる方も知っています。コロナの影響もあって、骨髄バンクの登録者も減ってきている。今、骨髄バンクには54万人に登録者がいるんですが、その半数以上が40代50代。55歳になると登録抹消になってしまうので、20年後には(登録者の)数自体ががくっと減ってしまう。だからこそ若い方に知っていただいて、少しでも増えてもらえたら、僕らみたいに助かる命が増えるはず」と涙ながらに語った。
そしてイベントも終盤に。松本は「ドナー提供に関わる人って、医療関係の人たちもたくさんいるんです。その方たちも、映画に役者として出ているんですけど、わたしが知らなかった職業の人がいっぱいいました。そういう人もフォーカスを当ててほしいなと思いましたし、この映画を長く、いろいろなところで上映してほしいなと思っているので、少しでも琴線に触れるところがありましたら、大切な人に伝えていただけるとすごく嬉しいです」と話し、最後に樋口が「ご覧いただいた皆さんの心の中に、少しでも明るい気持ち、勇気や希望を持って帰っていただければ、とても嬉しく思います。これがひとつでも多くの命がつながるきっかけになって。今は苦しんでる方も、僕自身が演じている姿を見て、こんなに元気になれるんだなと思って観てもらえたら」とメッセージを送った。
映画『みんな生きている ~二つ目の誕生日~』は、2月4日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開。
登壇者:樋口大悟(企画・原案・主演)、松本若菜(出演)、両沢和幸(脚本・監督)
MC:榎本 桜(プロデューサー・出演)
公開表記
配給:ギグリーボックス
2023年2月4日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開
(オフィシャル素材提供)