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「オタール・イオセリアーニ映画祭」『唯一、ゲオルギア』本編映像、場面写真、本作解説&パンフレットに寄稿した豪華著名人ら解禁

 『月曜日に乾杯!』『皆さま、ごきげんよう』などを手掛けた名匠オタール・イオセリアーニの劇場初公開を含む全監督作21本をデジタル・リマスター版にて、2月17日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、シアター・イメージフォーラムにて一挙上映される。
 この度、日本劇場初公開となるドキュメンタリー三部作『唯一、ゲオルギア』の本編映像と場面写真、加えて前田弘毅氏による本作の解説、さらに三宅 唱監督、山崎まどか、向井康介ら豪華著名人が寄稿したパンフレット情報が解禁となった。

 突然、自然豊かな森林や街中で響きわたる銃声や爆発音
「この光景はロシア近隣国の日常でもある。大国の政治家が力と領土に固執した結果だ」
当たり前の日常が奪われる姿が映し出された『唯一、ゲオルギア』本編映像・場面写真解禁

 この度解禁された映像では、ジョージアの自然豊かな木や川、森林の映像からはじまり、突然銃撃や爆発音が響きわたる。すると、広大な敷地や街中などでの銃撃戦の映像に切り替わり、戦車も登場。街中で行われる銃撃戦、建物に残る銃弾のあと、戦禍の残る街並みが映し出される。ナレーションにより、これらは1991年に勃発したトビリシ内戦であることが分かる。「この光景はロシア近隣国の日常でもある。大国の政治家が力と領土に固執した結果だ」というナレーションが流れ、ジョージアを中心とした世界地図が映しだされる。

 また、ジョージア人の生活が垣間見える場面写真も解禁となった。先行きが混沌とする1994年製作だが、当たり前の日常が奪われる姿は、混沌とした現在の世界情勢を想起させ、今こそ観るべき作品である。

東京都立大学 人文社会学部教授 前田弘毅氏による解説(パンフレットより一部抜粋)

「ウクライナが戦火に包まれている2023年現在、この映画を刮目して見なければならない。」
『唯一、ゲオルギア』を通じて感じられる、イオセリアーニ監督の想いとは――

 この度劇場初公開となる『唯一、ゲオルギア』は、ソ連が崩壊に向かい、政治的混迷を深め、内戦が勃発したゲオルギア(ジョージア)を目の当たりにしたイオセリアーニ監督が、祖国がなくなるかもしれないという想いから製作を決意した作品。歴史、文化など過去を振り返り現在(※当時1994年)を検証する内容だが、2023年現在の世界情勢とも通じる4時間におよぶドキュメンタリー大作である。
 今回、パンフレットに掲載される、コーカサス史研究を専門とする東京都立大学 人文社会学部教授の前田弘毅氏による解説を一部抜粋した内容を紹介する。

 『唯一、ゲオルギア』は希有な映像作品である。歴史を題材にし、時にショッキングな戦火の映像も織り交ぜた名作ドキュメンタリーは少なくない。しかし、中世の吟遊詩人さながらに叙情を讃えた映像と音楽の魔術師が、ジョージア(グルジア)の至宝ともいうべき20世紀ジョージア映画の名作の数々をコラージュして、故国の歴史を一つの歴史記録映画をまとめ上げた。そして、編集が修了した1994年1月に向けて、いつものユーモアに溢れる語り口は影を潜めて、映像は悲壮感を増し、まさに滅亡の縁に瀕した祖国の惨状に怒りをぶつけつつ、故国の美しさと芸術文化に救いを求めようとする。そこには普段のイオセリアーニ映画では控えめな、ジョージアの知識人階層に育まれたオタール・イオセリアーニのまさしく「国士」としての矜恃と責任感が見て取れる。そこには強烈な政治的メッセージも込められていた。ここにはフィクションとノンフィクションを超えた、そして過酷な現実を捉えたまさに奇蹟ともいえる(セミ)ドキュメンタリー映画である。ソ連崩壊から30年を経て、やはり旧ソ連のウクライナで凄惨な戦闘が継続している今、当時の歴史を識るためにも必見の映画である。
 この映画が撮影された当時、誰もジョージアのいかなる将来も描くことはできなかっただろう。
 映画の制作から30年を経て、ジョージア社会は大きく変貌した。それは白黒映画から鮮やかなカラー・フィルムへの変化に等しい。しかし、この映画を観て、はじめてトビリシを訪れた1995年9月の戦争直後の荒寥とした同国の佇まいを鮮明に思い出し、楽土ジョージアの地の底に吸い込まれるような暗い情景もまた想い起こした。文明の十字路としてのジョージアは常に大帝国の征服に遭い、周辺国からの難民で溢れた。持ち前の豊かさと明るさで乗り切るも、日本では考えられないような悲劇的な歴史を繰り返してきたことをあらためて噛みしめる。「真のジョージア」を探すには複雑で時には辛い旅路を経なければならない。
 皮肉屋で少し怒りっぽく、時にはコミカルで少し暴力的なイオセリアーニ、常に絶望せずに不思議に生きる力に溢れている。常に楽観的な彼はジョージアを救わなければヨーロッパの未来はないと訴えているようだ。ウクライナにロシアが侵攻して約1年、これほど響くメッセージはない。この映画の映し出す現実は実は現在進行形でアクチュアリティを失っていない。
 ウクライナが戦火に包まれている2023年現在、この映画を刮目して見なければならない。

                  前田弘毅(東京都立大学 人文社会学部教授)

三宅唱監督、山崎まどか、向井康介、秦早穂子、滝本 誠……
映画監督から作家、評論家まで幅広い豪華著名人による寄稿が掲載されたパンフレット完成!

 この度の映画祭に合わせて制作されたパンフレットには、製作当時、不当な上映禁止に遭った“幻の傑作”『四月』に加え、『落葉』、『歌うつぐみがおりました』などジョージア時代の長編から今回劇場初公開となる『月の寵児たち』『そして光ありき』、さらにこれまでの上映で日本でも好評を博した『月曜日に乾杯!』『皆さま、ごきげんよう』、加えて上記の通り監督がジョージアへの想いを綴ったドキュメンタリー三部作『唯一、ゲオルギア』の計14本の寄稿が寄せられた。
 作家の山崎まどかや脚本家の向井康介、『ケイコ 目を澄ませて』で数々の賞を受賞している三宅 唱監督などにより、それぞれの作品への文章が寄せられており、計80Pのボリュームたっぷりのパンフレットが完成した。
 各作品の寄稿者は以下の通り。※敬称略

 『四月』中野 翠
 『落葉』月永理絵
 『歌うつぐみがおりました』山崎まどか
 『田園詩』金子 遊
 『月の寵児たち』今 祥枝
 『そして光ありき』宇田川幸洋
 『蝶採り』宮代大嗣
 『群盗、第七章』滝本 誠
 『素敵な歌と舟はゆく』向井康介
 『月曜日に乾杯!』久保玲子
 『ここに幸あり』三宅 唱
 『汽車はふたたび故郷へ』はらだたけひで
 『皆さま、ごきげんよう』秦早穂子
 『唯一、ゲオルギア』前田弘毅

カンヌ、ヴェネチア、ベルリンなど世界の映画祭で数々の賞を受賞。人生の達人、オタール・イオセリアーニ監督の作品をたどる

 “まさに、ジャック・タチやチャップリンのよう!(テレラマ)”などと評される名匠オタール・イオセリアーニ監督。ジョージア(旧ソビエト連邦グルジア共和国)に生まれ、映画制作を行うも上映禁止など制限を受け、故郷を離れパリへと移り住んだ経歴をもつ。
 それでも映画を制作し続け、カンヌ、ヴェネチア、ベルリンなどで数々の賞を受賞し、世界各国でゆるぎない評価を得ており、日本でも、『月曜日に乾杯!』や『皆さま、ごきげんよう』などのヒットで熱狂的なファンが多い。時代や場所が違えど、変わることなく繰り返される日々の営み、争いや略奪、犯罪は決してなくならないが、あふれるほどの愛や友情、希望は必ずある――。観る者に、そんな人生の豊かさを気づかせてくれる人生の達人、オタール・イオセリアーニの全監督作品をたどることができる貴重な映画祭だ。

公開禁止を受けた幻の傑作から数々の賞を受賞した作品群、そして円熟味を増した集大成の作品までデジタル・リマスター版で待望の一挙上映!

 長編は、1作目にしてジョージアでは公開禁止となったがカンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞を受賞した『落葉』をはじめ、各国でロングラン・ヒットとなった『素敵な歌と舟はゆく』や、ベルリン国際映画祭にて銀熊賞(監督賞)を受賞し世界の名匠としての地位を確立した『月曜日に乾杯!』、またレトロスペクティブが開催され、再評価が高まるピエール・エテックスや、『アメリ』などジャン=ピエール・ジュネ監督作品でおなじみのリュファスが出演していることも話題となった集大成的傑作『皆さま、ごきげんよう』など。
 さらに、ウェス・アンダーソン監督作常連のマチュー・アマルリックの役者デビュー作となった『月の寵児たち』、全編アフリカ・セネガルで撮影が行われた『そして光ありき』がこの度日本初上映される。いずれもヴェネチア国際映画祭にて審査員特別大賞を受賞した作品だ。
 そのほか、本国ジョージアにて上映禁止を受けたものの、2000年にはカンヌ国際映画祭で復元版による特別上映が行われた中編『四月』、現在の世界情勢にも通ずる、ジョージアの映像資料を用いて歴史・文化を紹介した三部構成となる日本初公開のドキュメンタリー三部作『唯一、ゲオルギア』なども上映。
 ノンシャランと笑い飛ばし、自由で独創性あふれる作品づくりで世界中の映画ファンを魅了し続けているオタール・イオセリアーニ監督の全作品に触れられる貴重な映画祭となっている。混沌とした現代だからこそ、反骨精神たっぷりのユーモアとちょっとした幸福をぜひ体感してほしい。

 監督:オタール・イオセリアーニ
 協力:ジョージア映画祭

上映作品一覧

<長編12本>
 『落葉』
 『歌うつぐみがおりました』
 『田園詩』
 『月の寵児たち』 ※ 劇場初公開
 『そして光ありき』 ※ 劇場初公開
 『蝶採り』
 『群盗、第七章』
 『素敵な歌と舟はゆく』
 『月曜日に乾杯!』
 『ここに幸あり』
 『汽車はふたたび故郷へ』
 『皆さま、ごきげんよう』

『月曜日に乾杯!』

<中編3本>
 『四月』
 『エウスカディ、1982年夏』
 ※ 劇場初公開
 『トスカーナの小さな修道院』 ※ 劇場初公開

『四月』

<短編5本>
 『水彩画』 ※ 劇場初公開
 『珍しい花の歌』 ※ 劇場初公開
 『鋳鉄』
 『ジョージアの古い歌』
 『ある映画作家の手紙 白黒映画のための七つの断片』
 ※ 劇場初公開

<3部作 ドキュメンタリー>
 『唯一、ゲオルギア』(3部作) ※ 劇場初公開

監督プロフィール

 1934年2月2日、旧ソビエト連邦グルジア共和国(現ジョージア)のトビリシに生まれる。
 44年、トビリシ音楽院に入り、ピアノ、作曲、指揮を、53年から55年にかけてモスクワ大学で、数学、工学を学ぶ。その後、56年から61年まで、モスクワのソ連映画学院の監督科に在籍。卒業後は編集技師として働く。
 62年に中編『四月』を監督するが、「抽象的、形式主義的」という理由で、上映を禁止された。66年、長編第1作『落葉』を発表。公開禁止となるが、2年後の68年のカンヌ国際映画祭に出品。初めて西側で紹介され、国際批評家連盟賞とジョルジュ・サドゥール賞を受賞。イオセリアーニの名前は一躍世界に知られることとなる。
 79年、活動の拠点をフランス・パリに移し、短編や中編ドキュメンタリーをいくつか制作した後、84年に長編第4作『月の寵児たち』を、89年にはセネガルで撮影した長編第5作『そして光ありき』を発表。これら2作品はヴェネチア国際映画祭審査員大賞を受賞する。96年制作の『群盗、第七章』では、ヴェネチア国際映画祭審査員特別大賞を三度受賞する快挙を遂げる。
 06年『ここに幸あり』を、10年『汽車はふたたび故郷へ』を、15年には集大成ともいえるシニカルな人間賛歌『皆さま、ごきげんよう』を発表。

「オタール・イオセリアーニ映画祭 ~ジョージア、そしてパリ~」
 2023年2月17日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、シアター・イメージフォーラムにて劇場初公開作品含む全監督作21本一挙公開!
  Twitter:@Otar_2023

公開表記

 配給:ビターズ・エンド
 2023年2月17日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、シアター・イメージフォーラムにて劇場初公開作品含む全監督作21本一挙上映!

(オフィシャル素材提供)

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