イベント・舞台挨拶

『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』銀座 蔦屋書店トークイべント

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 現代において最も影響力のあるアーティストにして“伝説のロック・スター”デヴィッド・ボウイの人生と才能に焦点を当てたドキュメンタリー映画『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』。2月10日(金)、本作の監督を務めたブレット・モーゲンの来日を記念して、銀座 蔦屋書店でトークイべントが開催された。

 ブレット・モーゲン監督の対談相手は、デヴィッド・ボウイの大ファンで知られる漫画家の上條淳士。バンド漫画の金字塔「TO-Y」では主人公・トーイのモデルの1人がデヴィッド・ボウイであると公言し、影響を受けたと語っている。上條は昨夜TOHOシネマズ 日比谷で行われた「IMAX®レーザープレミアイベント」に足を運び、3月24日(金)の本公開に先駆け作品を鑑賞。ボウイの熱狂的ファンの目に本作はどのように映ったのだろうか。

 MCを務める、YouTuber・ミュージシャン・音楽評論家と多方面で活躍するみのに感想を問われると「映画といえば映画なんですけど、すごい体験をしたって言うほうが近い。『ヒーローズ』のライブ映像が使われるんですけど、終わったとき思わず立って拍手しようとしてしまった。それくらい臨場感が伝わってくる」と熱弁。続けて「普通のドキュメンタリーというと、ナレーションがあって、どうしてもある方向に導いていくような作り方をするものが多い。けどこれは時系列が飛んだりして、時間を旅しているような感覚を受けました。監督のアート作品って感じです」と語った。熱い感想を受けてブレット・モーゲン監督は「素敵な言葉をたくさんありがとうございました」と感激した様子。続けて「おっしゃる通り、言葉やウィキペディア的な要素を取り除くと、残るのは『体験』だと思う。少なくとも僕にとって今のミュージック・ドキュメンタリーというジャンルには問題があると感じていて、ファクトだけ並べるのなら本にだってできる。この映画ではデヴィッド・ボウイの謎をそのままお届けして、体感してもらう作品にしたかった」と語った。

 本作はこれまでデヴィッド・ボウイを題材に作られた作品とは一線を画し、遺族が唯一公式に認めたドキュメンタリー作品となっている。本作に着手し完成させるまでの間に、遺族とはどのようなやり取りがあったのだろうか。監督は「完成した作品が公認っていうよりも、全てのアーカイブにアクセスすることを公認という形でいただけた作品になっています」と切り出す。「製作に関しては自由に作らせてもらった。財団からチェックされたり、出来上がった作品に何か言われるというようなことはなかった。ただ製作の1日目に、一つだけ言われたことがあった。デヴィッド・ボウイは我々と共にいない。つまりデヴィッド・ボウイ本人は承認することができない。ですので自分の映画を作ってくださいと言われたんです。だからこの作品は企業系の映画ではありません。ミュージック・ドキュメンタリーというジャンルにおいて、本作は非常に革新的な作品になったと思っています」。

 MCみのから「自由度が多いとプレッシャーはなかったのか」と問われると、「これまでもカート・コバーンやローリング・ストーンズなどのノンフィクションを作ったけど、彼らや彼らのファンに怯えてはいけないと思っています」と返答。「今回も映画を作るのには理由があるんだって自信を持たないといけません。ただ本作が他と違うのは5年間1人でリサーチする時間があったこと。パンデミックもきて、孤独な作業でトラウマのような体験だったけど、毎日12時間ボウイの記録を見る作業は喜びに溢れたものだった。ボウイに恐れることはなく、むしろボウイはインスピレーションを与え続けてくれていた」。

 続いてトークは選曲に関する話題に。本作は、400曲あるといわれるボウイの楽曲から「スターマン」「チェンジズ」「スペイス・オディティ」「月世界の白昼夢」など選りすぐりの40曲が使用されている。上條は「冒頭『ハロー・スペースボーイ』は面白いところから入っていくなと思った」と話す。「ファンであれば誰でも自分の好きな曲があって、『ここで使われている!』とか、『まだかな?』とか思いますよね。自分にとって特別な曲は『チェンジズ』。人生のある局面ある局面で後押ししてくれた楽曲。最後の一説に『時は自分を変えていく。だけど時は遡れない。追いかけられない』っていう歌詞があって、人生のあらゆる時にその曲が自分の次のステージに行かせてくれたと思っています。でその『チェンジズ』が本作でなかなかかからない(笑)。監督は選んでないのかなと思ったけど、まさかここでくるんだって所でかかって泣きそうになりました」。

 デヴィッド・ボウイは、音楽家の枠にはおさまらない芸術家である。そんなデヴィッド・ボウイに監督はどのようにアプローチしたのだろうか。「作品を作るまで知らなかったけど、デヴィッド・ボウイは何かの名匠になることを拒んだ人だったんです。アーティストの多くが極めようとします。完璧さを求めて努力する。でもそうじゃないんだってことが分かった。だからこの映画の鍵となったのは、彼の方法論。間違いなんてなく、幸せなアクシンデントしかないんだ、という姿勢。自然発生的なことを大事にする、そういう映画づくりをしました」。制作論の話題となり、上條にも話が振られると、「二十歳でデビューしたけど、それまでやられてこなかったことを自分でやるってことにしか意味を見出せなかった。だから毎作、漫画における実験やチャレンジはやってきたつもり」とコメント。さらに漫画制作のアプローチに関して問われると「例えば、作品ごとにスタッフを集めるのですが、作品が終わったら必ず解散させます。新しいバンドをまた作る、みたいな。同じメンバーでは絶対にやりません」と回答。すると監督が「感銘を受けました」と興奮気味に話す。「なんてボウイらしいんだ! ボウイがやっていたことを漫画制作の領域でやっているんだと感じました。カオスにもなり得る自然発生的なものが発生する環境をあえて作って、招き入れているんですから」。

 イベントの最後には、締めくくりとして「デヴィッド・ボウイとは、一体何者か」というテーマに。上條は「映画の中でもボウイが言っているけど、自分はオーディエンスにとっての合わせ鏡なんだと。僕が思ったのはこの映画もボウイを描いてはいるんだけど、結局観客一人ひとりが自分を見つめる場所になると思う。そういう意味でデヴィッド・ボウイではあるけど、同時に監督のエッセンスもすごい伝わってきた」。ブレット・モーゲン監督もウンウンと頷き、続ける。「僕もデヴィッド・ボウイの音楽は聴けば聴くほど理解できないと思うんですよね。けど自分自身は理解できる。それこそがデヴィッド・ボウイの美しさであり、マジックなんだ。デヴィッド・ボウイはそういうアーティストだったと思う。だから本作もそういった精神を受け継いでミステリーはミステリーのまま、余白を残している。その余白に自分の人生体験を投影してほしい」と締めくくった。

 登壇者:ブレット・モーゲン監督、上條淳士(漫画家)、みの(MC)

公開表記

 配給:パルコ ユニバーサル映画
 3月24日(金) IMAX®️ / Dolby Atmos 同時公開

(オフィシャル素材提供)

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