映画『Winny』先行上映会が都内で行なわれ、舞台挨拶に主演の東出昌大、共演の三浦貴大、渡部いっけい、吹越 満、監督の松本優作が出席した。東出が、モデルとなった金子勇氏の姉から届いた手紙に涙をにじませる一幕があった。
本作は、2002年、開発者・金子 勇(東出)が、簡単にファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発。本人同士が直接データのやりとりができるシステムの「Winny」は、瞬く間にシェアを伸ばしていくのだが、映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、ダウンロードする若者が続出、次第に社会問題へと発展していくのだった。開発者の金子は著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004年に逮捕されてしまう――。技術者の権利と未来を守るために権力やメディアと戦った男たちの真実の物語が描かれる。メガホンを取ったのは、『ぜんぶ、ボクのせい』で商業映画デビューを果たした松本優作監督。
劇中の衣装のスーツ姿で登壇した東出は、実在の金子 勇役を演じるにあたって「僕が演じた金子 勇さんという人物が本当に素晴らしい方だったので、この作品をぜひ皆さんに早く観ていただきたいと思いました」と挨拶。作品に出会うまで『Winny』の事件を全く知らなかったという東出は、「金子さんについての取材を通して役作りをしていきました。こんな天才がいたのかと驚きました。金子さんのプログラム愛に感動しました。一昨年の夏、一番暑さが厳しい頃に撮影をしました。金子さんのことを知ってもらいたいという一心で演じていました」と話した。
サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇 俊光役を演じた三浦は、実在の人物を演じるにあたり、「リアルな法廷シーンになればいいな……」と心掛けて演じていたと話す。「壇さんが金子さんの話をしている時の表情だったり、しゃべり方から、金子さんへの深い思いを感じて、そんな部分を大切に演じました」と語った。また、撮影前には模擬裁判が行われたという。「実際の裁判記録に沿ってやってくださったので、まるまるコピーしてやろう思いました」とコメントした。
松本監督は「本物の裁判を見てほしいと思っていました。模擬裁判を了承してくださった壇さんをはじめとする弁護士の方々に感謝の気持ちでいっぱいです。ものすごく作品に生かすことができました。リアルな作品になったと思います」と感無量な様子。
北村文也役を演じた渡辺は、東出との共演について「ヒール役(逮捕する側)を演じています。家宅捜索に行くシーンの東出くん演じる金子さんの無防備さを見て、演じながら心の中でいたたまれない気持ちになりました。東出くんは憑依というか、役に入り込んでいました。すべてのシーンが忘れられない。緻密に作られているから一瞬も飽きることがない。いろいろな方に観ていただいて、法廷での全貌を知ってほしい」と語った。
秋田真志役を演じた吹越は「この映画に参加することができて良かった。何も考えずにこの作品を楽しんで欲しい」と気持ちを伝えた。
撮影現場には金子さんの実姉も訪れたそうで、東出は「お会いしたときにまるで生前の『勇ちゃんがいる』とようだと言ってくださったのは、役者冥利に尽きる言葉だと思いました」と撮影時を振り返った。
また、イベントの終盤では、金子さんの実姉から登壇者への手紙がサプライズで披露された。手紙では「映画の中の東出さんは弟が生き返ったようで思わず涙が出ました」。「映画の中の三浦さんはすっかり雰囲気が壇先生でした」などキャストへの感謝の思いが綴られており、東出は目に涙を浮かべていた。
最後に三浦は「実在の事件ですが、観る前は何も考えずに楽しんでいただければ……」。東出は「この裁判、7年の歳月がかかったのですが、弁護をした先生方が、“この裁判に勝者はなかった”と言っています。彼らの7年の熱量と信念を僕らは受け取って映画に焼け付けたいと思っています」と熱いメッセージを伝えた。
登壇者:東出昌大、三浦貴大、渡辺いっけい、吹越 満、松本優作監督
(取材・文・写真:福住佐知子)
公開表記
配給:KDDI ナカチカ
2023年3月10日(金) TOHOシネマズほか全国公開