イベント・舞台挨拶

『トリとロキタ』ティーチイン付プレミア上映

©LES FILMS DU FLEUVE – ARCHIPEL 35 – SAVAGE FILM – FRANCE 2 CINÉMA – VOO et Be tv – PROXIMUS – RTBF(Télévision belge) Photos ©Christine Plenus

 2度のパルムドール大賞受賞をはじめ、世界中で100賞以上もの映画賞を受賞しているベルギーの名匠、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督の最新作『トリとロキタ』が3月31日(金)にヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国順次ロードショーとなる。
 この度、2月28日(火)にヒューマントラストシネマ渋谷にて本作のPRのため来日する監督が観客の質問に答えるティーチイン付きプレミア上映イベントが開催された。

 前作『その手に触れるまで』(20)では、2020年に来日予定だったものの、新型コロナウイルス感染拡大により来日は中止となってしまったダルデンヌ兄弟だが、本作で6年ぶりに来日し、日本の映画ファンにとっては、悲願かつティーチインで話が聞ける貴重なイベントとなった。

 およそ6年ぶりに来日を果たしたジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督兄弟。前作の『その手に触れるまで』(20)ではコロナ禍の影響で来日を断念。日本の映画ファンにとっては悲願の来日となった今回のプレミア上映イベント。また、ダルデンヌ監督作品はこれまでチケットを購入すれば参加できるプレミア上映は日本では稀なため、貴重な機会となった。
 『トリとロキタ』の上映後、大きな拍手で迎えられた兄のジャン=ピエールと弟のリュック。『日本に来ることができ、こうして観客の皆さんに観ていただけて嬉しいです。たくさん感想や質問をお伺いできればと思います』とコメントし和やかなムードでティーチインが始まった。

 この作品を作ったきっかけは、アフリカからヨーロッパにやってきた保護者のいない未成年の移民難民が多く存在し、ビザが取れなかったために悲しい結末を迎える状況があるということを新聞記事で見たことだというリュック。早速観客から今回のようなテーマで映画を撮ることの意図を問われると、「この現状を告発したいと思いました。そしてこの告発は、トリとロキタというふたりの、裏切られることのない最後まで貫かれる友情を通して描きたいと思いました」と今の社会現状に対する告発と主人公ふたりの友情を通して描いたことを伝えた。また、「主人公ふたりのキャラクターはどのようにして生まれたのか?」と問われると、ジャン=ピエールは「“とある移民”という一つのケースではなく、あくまでも“トリとロキタ”というふたりの登場人物を描くことにこだわりました。トリは小柄で機転が利きよく動く。一方、ロキタは身体は大きいが、心身共に静かに辛いことを一手に引き受ける。この物語の友情はこのふたりでなければ成立しませんでした」と、“動”のトリと“静”のロキタが誕生した制作秘話を語った。


 長年の監督のファンから「緊迫感のあるショットはいつもどのように決めているのか?」というマニアックな質問が出ると、しばし沈黙が。そして、「その問いは美容師に、髪の毛をどう切るのか聞くのと一緒ですね。もうどう決めているのか分からない」という35年以上第一線で映画を撮り続けているベテランの名匠らしい、そして観客にとっては意外な答えに会場が沸く展開に。そして「ロキタが置かれた状況そのものが緊迫感を作り出していると思います。また、長回しをすることで、登場人物に起こることを観客も一緒に体験するかのように感じます。そのことが緊迫感に繋がっているのだと思います」とジャン=ピエールが真摯に回答した。
「本作では常連の慣れた俳優を使わず、新人俳優を起用しました。基本的にテイク数が多い監督ですが、今作での最大テイク数はどれくらいですか」という質問には、「今回は子どもが主人公だったため、飽きさせないためにテイク数を抑えたので、最大でも13テイクくらい」と言いつつ、「でも、過去には『サンドラの週末』で70テイクくらいだったこともありました」とジャン=ピエールから仰天のエピソードが飛び出した。「麻薬密売はオランダやアルバニアで多く行われているため、今回はオランダ系の俳優を多く起用しました。次回作で常連組が適しているような物語になったら起用する機会はあります」と、リュックからは今後を期待させる発言も。


 たくさんの手が挙がるなか、ずっと手を挙げ続けていた観客に監督自ら指名するなど、終始日本の観客に誠実で朗らかに質問に応じたダルデンヌ兄弟。最後に2人とも日本語で「ありがとう、ありがとう」と繰り返し、大盛況のうちにティーチインは終了した。
 いち早く映画を見たファンからは“胸を抉られる傑作”“スリリングな展開であっという間の89分だった”と早くも本作を絶賛する感想や、“想像以上にお茶目な方だった”、“質問したら目を見て話してくれて嬉しかった!”とダルデンヌ兄弟の明るく誠実な人柄について言及する声がSNSで溢れかえっている。

 登壇者:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ 監督

公開表記

 配給:ビターズ・エンド
 2023年3月31日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国順次ロードショー!

(オフィシャル素材提供)

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