漫画から飛び出たような個性豊かなキャラクターたちが奏でるオフビートな笑いと本格アクションで、Filmarks初日満足度ランキング第1位、日本映画批評家大賞・新人賞(第31回新人監督賞:阪元裕吾/新人女優賞:伊澤彩織)を獲得した、殺し屋女子2人組のアクション映画の待望の続編『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』が3月24日(金)より、新宿ピカデリー他にて公開される。
この度、監督・脚本の阪元裕吾のオフィシャル・インタビューが届いた。
監督・脚本 阪元裕吾
1996年生まれ、京都府出身。
20歳で発表した『ベー。』で「残酷学生映画祭2016」のグランプリを受賞。ウルトラ暴力映画『ハングマンズ・ノット』では「カナザワ映画祭2017」で期待の新人監督賞と出演俳優賞のダブル受賞。続く、パン屋を舞台にしたブラックコメディ『ぱん。』では「MOOSICLAB」で短編部門グランプリ、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」で短編コンペティション部門グランプリ、「プチョン国際ファンタスティック映画祭」で審査員特別賞を受賞し、大学在学中に圧倒的な暴力描写で自主映画界を席巻。『ファミリー☆ウォーズ』(18)で商業デビュー後、『ある用務員』(20)、『黄龍の村』(21)、『最強殺し屋伝説国岡[完全版]』(21)、『グリーンバレット』(22)を発表し、『ベイビーわるきゅーれ』(21)では日本映画批評家大賞・新人監督賞を受賞するなど、今最も勢いのある映画監督である。
シリーズ1作目の『ベイビーわるきゅーれ』は2021年7月30日に公開されましたが、反響はいかがでしたか?
ありがたいことに、どんどん口コミが広がっていきました。最初の反響も物凄かったんですけれど、日が経つにつれて、「こんな人まで?」という人まで観てくださって、驚きました。映画って最初の週末が大事という話をよく聞くんですけれど、5週目、6週目の方が盛り上がっていくという、あまりない経験をしました。
『ベビわる』シリーズは、ご自身のキャリアの中で、どのような存在ですか?
分岐点になったのは間違いないです。代表作というか名刺代わりの作品です。
続編が作りたいという話はご自身からしたのですか?
『1』を撮っているうちから続きを考えていて、完成する前には「続きをやるなら大体こんな話がやりたいな」とは思っていました。最悪自主映画になってでもやれたら嬉しいなと思っていました。『1』がすごく盛り上がってくれたおかげで、『2』のGOサインが出て、ありがたかったです。
『1』とあえて変えた部分はありますか?
『1』はまひろ視点の、「社会不適合者が社会に馴染めないから、殺し屋しかなくて」という葛藤部分が話の大きな部分で、「メイド喫茶で働いても結局人と馴染めなくて、ちさとともぶつかってしまう」という話でした。『2』でもそこを大きく描くであろうと思われていると思うんですけれど、それをやると殺し屋コメディ感がなくなってしまうという懸念もあり、単純に二人のコメディ・シーンを撮りたいという気持ちがあったので、殺し屋コメディを重点的に描きました。なので、「社会不適合者でつらい」みたいなシーンは完全に無くしました。
冒頭10分、ちさととまひろが登場しなくてびっくりしましたが、『2』の脚本を執筆するにあたり、どのような構成にしようと考えましたか?
何より二人の登場の瞬間が大事だと思いました。フワッと出てくるより、ためて、「キタ~」って思わせたいと思って、ああいうプロットになりました。敵ばっかり出てきて、ルフィが出てくるまで7~8分あるというのは、『ONE PIECE』の映画だとかだとたまにあるんです。ちさととまひろ二人のブランドがあるから、攻めた構成ができると思いました。
『2』の新たな敵として、殺し屋協会アルバイトのゆうり役に丞威さん、弟・まこと役に濱田龍臣さんを抜擢されましたが、キャスティング理由をお教えください。
ラスボスを誰にするか問題がありました。『1』は、三元雅芸さんという日本で一番動けるくらいの俳優さんが相手だったので、それに適う相手って誰やねんってなったら、自然と丞威さんしかおらんちゃうという話になりました。丞威さんはドニー・イェンとかと香港の映画(『燃えよデブゴン TOKYO MISSION』)で闘っている方なので、断れてもおかしくなかったんですが、『1』と脚本を面白がってくださって、すぐやりますとなってよかったです。
まこと役は、個人的に、細くて顔がシュッとしているイケメンより、『ベビわる』が好きな人に刺さる男性キャラを生み出したかったです。濱田さんは何気に身長が180近くあってガチッとしていて殺し屋として説得力があるし、顔は童顔というギャップがかわいいキャラにしたいと思いました。
『2』のアクション・シーンについては、アクション監督の園村健介さんに、どのような発注をしましたか?
伊澤さんと、『1』のコンビニ・バトルとラスト・バトルはリアルで真剣なバトルが続いていたので、『2』は、ジャッキー・チェンやバスター・キートンの映画みたいに笑えるし楽しいアクション・シーンを撮りたいねということは言っていました。伊澤さんは『1』の時にコンビニ・バトルでカップ麺を投げつけたりだとか、お笑い的なのもやりたかったそうで、園村さんと話した時に、銀行強盗を倒すアクションは、縛られていた彼女たちの解放感で軽やかに気持ちよく戦えるアクションにしたいと話しました。ラスト・バトルは、伊澤さん演じるまひろと丞威さん演じるゆうりが戦います。まひろにはちさと、ゆうりにはまことがいるんですけど、「一対一の拳の先しか考えていないようなことでお願いします」と、感情だけ伝えました。
『1』では1シーンのみの登場ながら強烈なインパクトを残した、死体処理業者・田坂役の水石亜飛夢さんが、『2』ではメイン・キャラクターに昇格しましたが、『1』の撮影後に、田坂役を広げたいと思ったのでしょうか?
そうですね。『1』の脚本段階ではそんなに広がる役ではなかったんですけれど、水石亜飛夢くんが45分くらいの撮影で最初から全力で面白いことに振って演技してくれたおかげで面白いシーンになったと思います。次は嫌なやつで終わるより、掃除屋としての矜持を見せるシーンが欲しいなと思って、ああいう見せ場を作りました。
宮内役の中井友望さんのキャスティング理由は?
宮内は、ちさととまひろとも違う女性キャラです。ちさとはギャルでもないしオタクでもないという絶妙なキャラですが、分かりやすく言えば、分かりやすいギャルみたいな感じの人が来たら、違うキャラ付けだと分かると思うんですけれど、そうじゃない形にしたかったです。ちさととまひろの中間ではないですけれど、斜め横みたいな子がよかったんですけれど、中井さんのミスiDでの感じを見て、うまいこと二人の感じとは違う役になるんじゃないかなと思いました。
主題歌を担当した新しい学校のリーダーズが本人役で出演もしていますが、撮影秘話をお教えください。
「当日、『なんかやってください』とお願いしたほうが面白いです」と言われていたので、「なんかやってください」と言ったら、福引の歌は本人たちがその場で即興で作ってダンスをしてくれたので、プロフェッショナルですごかったです。
『2』の見どころはどこだと思いますか?
『1』は結構ダラダラしていたんですけれど、『2』はマジのコメディ・シーンを作ったので、笑うつもりで観にきて欲しいというのはあります。後半のアクションはマジになり、そこの緩急が相変わらずすごい作品になっているので、そこに注目して欲しいです。
読者の方々にメッセージをお願いします。
『1』からパワーアップしている部分もありつつ、『1』の上位互換でもない作品を目指して別の『ベイビーわるきゅーれ』を作ったので、設定は頭に入れておかないと面食らうかもしれないですが、ここから見てもどなたでも楽しめると思います。『1』のファンの方は、いろいろな思いがあると思うんで、議論など起きると思います。それくらい挑戦的な映画にしたつもりです。「『1』よりゆるく、『1』より熱く」を目指した作品なので、ぜひそれを劇場でお楽しみください。
公開表記
配給・宣伝:渋谷プロダクション
2023年3月24日(金)~新宿ピカデリー他にて公開
(オフィシャル素材提供)