再審公判が決まった7年前の殺人事件をめぐり、娘を殺された元夫婦と犯行時17歳だった加害者との激しい心の揺らぎをサスペンスフルに描くヒューマン・ドラマ『赦し』(3/18公開)の完成披露試写会が3月6日(月)、都内で行われ、主演を務めた俳優の尚玄、MEGUMI、松浦りょう、藤森慎吾、そしてメガホンをとったアンシュル・チョウハン監督が登壇。それぞれの役柄、視点から本作に込めた思いを熱く語った。
企画の段階から本作に関わっていたという尚玄は、一人娘の命を奪った加害者を憎み続ける父親・克を熱演。もともとアンシュル監督の大ファンだったことから「ようやく念願が叶った」と満面の笑顔。ただ、演じた役に関しては、「僕も役者を20年やっていますが、一番つらい役どころでした」と胸中を告白。さらに、「今、世界中で戦争が起こっていますが、そういった負の連鎖を止めるためには、やっぱりある時点で“赦すこと”が大切なんじゃないか、ということをすごく考えますね」と表情を引き締めた。
また、外見については、髭を生やし、体重も10kg以上増やして臨んだそうだが、「この前に『義足のボクサー』という映画を撮って、その流れでボクシングを続けていたんですが、今回、アルコール依存症の役ということで太らなければならず、アンシュル監督に『中には細めの人もいますよね……?』と直訴したんですが却下されました(笑)」と裏話を披露した。
一方、戸惑いながらもつらい現実を乗り越え、前に進もうとする母親・澄子を演じたMEGUMIは、「私も同じく、今まで演じた役の中で一番きつかったです」と尚玄に同意。「人を赦すことを考えましたし、理不尽なことに直面した時に、自分がどう感じて、それをどう乗り越えて、成長して行くのか?みたいなこともすごく考えました。スタッフが全員合わせて5人しかいなかったんですが、監督をはじめほとんど外国の方だったので、文化や概念が違う人たちと、この映画のテーマに寄り添いながら、とても濃厚な時間を過ごすことができたと思います」と振り返った。
オーディションで加害者の女性・夏奈役を射止めたという松浦は、「皆さんもそうですが、私は人を殺めたこともありませんし、刑務所に入ったこともないので、役をリアルに経験することはできなかったので、殺人を犯した方のインタビューや刑務所での生活をネットで調べて研究し、なるべく近い環境に身を置く努力をして役をつくり上げていきました。精神的にとてもつらかったですが、これも修行だと思って、“絶対に負けないぞ”という気持ちで臨みましした」と力強く発言。ただ、尚玄が撮影中、いっさい口を聞いてくれなかったことから、「本当に嫌われていると思っていた」と悲しそうに吐露。これに対して、尚玄は「役づくりであえてそうしていた」ことを明かし、「最後にハグしに行ったら号泣されました」とエピソードを明かした。
澄子を陰で支える現在の夫・直樹を演じた藤森は、「もうMEGUMIさんがすごくつらそうで……。何度もバラエティー番組でご一緒しているんですが、役に成りきっているというか、澄子そのものになっている女優の一面を見てすごいなと改めて思いました。休憩時間も目が腫れぼったいんですよね。だから、元気出してもらうために何かしなきゃいけないと思って、毎回差し入れをさせていただきました」と自ら場を和らげる役割を買って出ていたことを明かした。
アンシュル監督は、本作を企画したことについて、「カナダ人のランド・コルターさんが脚本を書いて下さったんですが、最初に読んだ時は映画化を考えていなかったのですが、コロナが始まって家の中に閉じこもるという状況になった時に、脚本を改めて読み直してみると、これはすごくコネクションがあるなと。コロナで亡くなっていく人たちを見た時、登場人物たちのヒューマン・ドラマを軸にこの脚本を映画化する必要があるというふうに思ったのが始まりでした」と述懐。また、「インタビューで、『インド人として日本映画を作るのはどういうお気持ちですか?』とよく質問されますが、私はもう日本に住んで10年以上過ぎました。ですから、この映画はインド人が作った映画ではなくて、日本の映画として、皆さんに観ていただければ嬉しいです」と笑顔で締めくくった。
登壇者:尚玄、MEGUMI、松浦りょう、藤森慎吾、アンシュル・チョウハン監督
公開表記
配給:彩プロ
2023年3月18日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開
(オフィシャル素材提供)