イントロダクション
人生の選択について見つめ直す30代の主婦、リモートワークの孤独をフード・デリバリーで癒そうとする40代の独身OL、女優を目指していたが、行き先を見失った20代の風俗嬢。盲目になり、見えていた頃の記憶をたどる40代の実家暮らしの女。コロナ禍を生きる世代も生き方もちがう女たちの孤独と希望を、一人の女優・菜 葉 菜が演じる。
2020年に短編映画として発表した『4人のあいだで』が大阪アジアン映画祭でJapan Cuts Awardを受賞し、ニューヨークのJapan Cuts映画祭など数々の国内外の映画祭で話題になり、それをきっかけに短編映画 四編からなるオムニバス映画として誕生した本作。
キャストには、廣木隆一監督の『夕方のおともだち』、甲斐さやか監督の『赤い雪』など立て続けに話題作に主演している菜 葉 菜のほか、それぞれの物語にて 浅田美代子、占部房子(ベルリン映画祭銀熊賞受賞作『偶然と想像』)、草野康太(『モルエラニの霧の中』)、好井まさお(Netflixドラマ『火花』)、上村 侑(『許された子どもたち』第75回毎⽇映画コンクールスポニチグランプリ新⼈賞)など、実力派俳優たちが共演している。
監督はドラマとドキュメンタリーの境界を越えて常に斬新な作品を世に送り出し、国内外の映画祭で⾼い評価を受けている中村真⼣監督。最新作『親密な他⼈』では、コロナ禍を生きる孤独なシングル・マザーの女性とオレオレ詐欺に手を染める青年との不思議な関係を描いた心理サスペンス映画で注目を集め、第34回東京国際映画祭 “Nippon Cinema Now”部⾨正式招待作品として21年11⽉にワールドプレミア上映され、全国公開された。
また撮影監督はドキュメンタリー撮影の名⼿として知られ『実録・連合⾚軍』(08)をはじめとする故・若松孝⼆監督作品や⼤森⽴嗣監督の『MOTHER マザー』(20)などの劇映画で俳優たちのリアルな感情を映し出してきた辻 智彦。
世界的なパンデミックを背景に、孤独、人と人とのつながりを描いた人間ドラマが誕生した。
ストーリー
第一話「4人のあいだで」
20年ぶりに連絡を取り合った大学時代の同級生で、元演劇サークルの40代の男女。3人の一晩の物語。
専業主婦となり、コロナ禍で自宅に入り浸っている夫と息子を持て余しているナナエ(菜 葉 菜)。事務職をしながらパートナーと暮らすフサエ(占部房子)。貧しいながらも役者を続けている男・コウジ(草野康太)。
彼らの人生に影を落とす不在の女優・サヨコ。不在の女性の存在が、見えないコロナのように広がり、3人の中に秘められた思いを呼び覚ます。
第二話「ワタシを見ている誰か」
フードデリバリーのバイトをしている写真家のカズヤ(好井まさお)。ある晩、マンションに食事の配達に行くと、リモート・ワーク中の30代後半のOL・メイ(菜 葉 菜)が出てくる。自分は食べられないから、カズヤに注文した食事を食べてくれと泣きながら言うメイ。仕方なく玄関先で食べるカズヤ。
何度かそのような注文が繰り返され、ある晩、カズヤはメイのマンションの部屋に招かれる。長年付き合っていた恋人に去られ、一人で食事が食べられなくなり、カズヤが食べる様子を見ることに癒しを見出すメイ。一方、配達をしながら写真を撮り、メイの姿を密かに撮っていたことを明かすカズヤ。
お互いに見つめ合うことで、コロナ禍の孤独を癒す二人の男女の姿を描く。
第三話「ゴーストさん」
20代後半の風俗嬢のサチ(菜 葉 菜)。毎晩、帰宅する帰り道のバス停にいる60代のホームレスの女性・カヨコ(浅田美代子)を、密かに「ゴーストさん」と呼んでいる。
ある晩、ふとしたきっかけからカヨコと話すことになるサチ。そして二人とも女優を目指して地方から上京し、夢を叶えようとして、道を見失ってしまったことを知る。カヨコは試食販売員として働いていたが、コロナ禍で仕事を失ってしまい、ホームレスに転落してしまう。一方、サチは女優を目指していたが、事務所に騙されグラビアからAVに流れ、心身を壊し、キャバクラの仕事をしていたが、それもコロナ禍で失い、風俗嬢として働いている。
かつて同じ夢を持っていた二人の女たちは、お互いの中に一時の救いを見出す。しかしそれは無残に打ち砕かれる。
実話を元に、コロナ禍で経済的にも精神的にも追い詰められた女たちの姿を描く。
第四話「だましてください、やさしいことばで」
40代前半の盲目の女性・トモコ(菜 葉 菜)。足の悪い母と暮らす彼女の元に、弟の同僚だという青年・タケオ(上村 侑)が現れる。弟が急に体調が悪くなり、入院することになったから、お金を工面してくれという。タケオに母からのお金を渡すと、自分の貯金していた金も差し出すトモコ。トモコが盲目であることに気づいて、通帳と印鑑もくすねるタケオ。高校時代に憧れていた先輩と同じ匂いがするとつぶやくトモコ。
そしてタケオの顔を見たいと言い、その顔に触れる。「あなたは嘘がつけない人ね」とタケオに伝えるトモコ。それを聞いて気まずくなり、通帳と印鑑を戻して、立ち去ろうとするタケオ。するとトモコは「それを持っていけ」と、タケオに伝える。その金を誰にも渡さず、自分のために使えと言う。「遠くへ飛んでいけ」とタケオにささやくトモコ。そしてタケオはトモコの金を持って、飛ぶように走り去る。
(2022年、日本、上映時間:69分)
キャスト&スタッフ
「4人のあいだで」菜 葉 菜、占部房子、草野康太
「ワタシを見ている誰か」菜 葉 菜、好井まさお
「ゴーストさん」菜 葉 菜、浅田美代子
「だましてください、やさしいことばで」菜 葉 菜、上村 侑
監督・脚本:中村真夕
企画:中村真夕 齋藤浩司
プロデューサー:浅野博貴
撮影監督:辻 智彦
予告編
オフィシャル・サイト(外部サイト)
twitter:@watakano40 ハッシュタグ:#ワタシの中の彼女
公開表記
製作・配給:ティー・アーティスト
全国順次公開中
(オフィシャル素材提供)