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国際女性デー記念「ドイツ映画祭 HORIZONTE 2023  道を拓く(ひらく)女たち」プレイベント オープニング作品『フェモクラシー 不屈の女たち』試写&トーク

©Majestic/picture_alliance-Sven Simon

「クオータ制は有意義。多様な人の政治参画によって社会全体が豊かになる」(ニッケルス議員)

 4月20日より開催の「ドイツ映画祭 HORIZONTE 2023道を拓く女たち」のプレイベントとして、国際女性デー(3月8日)前日の3月7日(月)、オープニング作品『フェモクラシー 不屈の女たち』のトークイベント付試写会が行われた。
 本映画は、女性議員のパイオニアたちが、旧西ドイツ連邦議会において女性蔑視に立ち向かい、女性の地位を高めた軌跡を描いている。

 オンラインでドイツから参加した映画に登場する元議員クリスタ・ニッケルスさん(緑の党)には、映画と変わらない力のある言葉で今の日本につながる問題について語った。
 U30世代の政治参加を推進する活動を続けている能條桃子さんは、作品を観た感想として、新しい道を切り開いていく女性たちの前向きな行動に感銘を受け、時代や国境を越え日本における自身の活動に活力得たと語った。
 『フェモクラシー 不屈の女たち』の上映トークで映画を初めて観た能條さんは、今の日本と重ねながら映画を鑑賞し、自身の活動にも重なる部分があったと、元森喜朗首相のオリンピック・パラリンピックの時の女性蔑視発言への署名活動中の体験を次のように語った。「(映画の議会で)セクハラの問題が出てきた時に、『それは個人の問題で解決すればいいんじゃないか、なんで、大きな政治の問題にするんだ』というようなシーンがありましたが、良く言われてしまうことで個人で解決すればいいじゃない、なんでわざわざ大事(おおごと)にするんだと批判されることが多いですよね。……あの時も個人の問題で済むことを、なぜ社会の問題として署名にする必要があるんだと批判を受けましたが、その発言が出てしまう人の背景には、その社会に問題があるのであって、社会が問題としてとらえ、社会が変わらないと永遠に変わらないよねと思っていて、国を越えてもあるよねと思いました」。

 ニッケルスさんは、映画当時を振り返り「もちろんそこに至る道のりが、長く大変でした」と苦労を述べ、能條さんのような若くしてがんばっている人たちに向けて「女性史全体をみないといけません。サフラジェット(イギリスの女性参政権運動)など、先人たちを知ることが大事です。学ぶところは学校や大学だけでなく市民社会の中でもあります。市民社会の中で、これは良いと思うことを実行し、悪いと思うことはしないというところから始まるのではないでしょうか。女性は、感情で動くだとか、物事を建設的に考えることができないだから政治は無理と言われますが、感情と日常の経験こそが社会全体にとっての正しい政治につながるのです。だからこそ女性として活動することが大切。個人的なことは政治的なこと、女性の経験は必ず政治に必要。いろいろな人の経験が多様な人々の政治参画によって反映されれば、みんなにとってより良い社会、豊かな社会になっていくのではないでしょうか。そのために、言葉を使って慣習的なものにひるまず、関わっていくことが大切です」とエールを送った。

 さらに、ニッケルズさんより、日本でも注目されているクオータ制の話が出て「仲間をもつこと。映画でも女性同士の連携なしにはできなかったことが描かれています。党は違っても目標を同じところに置いて連帯してきました。保守もリベラルも価値観の違う人はいるけど目標が同じなら、その目的に関しては連携するのです。クオータ制は有意義です。緑の党が初めて導入し、議会に半数の女性を送り込みました。その機会の上に女性が優秀だと立証した、そのために結果を出したのです。その上で、保守系の政党からも認められていきました。映画でも保守系の議長が反対と言ってたものの、認めてくれていました。ドイツでは法制化を目指しています」と力説した。

ケルナー監督の求めに応じて集まった元女性議員たち © Majestic / AnnetteEtges
緑の党のクリスタ・ニッケルス議員が当時のコール首相に広島で作られた折り紙のストールを渡し、核軍拡
競争への反対を表明した。© Majestic/Deutscher Bundestag/Presse-Service Steponaitis

 登壇者:ニッケルス元議員(映画出演者、オンライン)×能條桃子(FIFTYS PROJECT代表)

主な上映作品

 オープニングを飾るのは、旧西ドイツ連邦議会の女性議員のパイオニアたちの歩みを戦後から現在まで追うドキュメンタリー『フェモクラシー 不屈の女たち』。セクハラと先入観に耐えながら、勇猛に忍耐強く前を向く女性たちの姿が頼もしく、勇気を与えてくれる。
 『Nico』はレイシストに襲われた介護職の女性ニコ(イラン系ドイツ人)が、恐怖を乗り越え立ち直る姿をパワフルに描く作品。監督、プロデューサー兼主演は、ともに20代女性。
 『バッハマン先生の教室』は、12ヵ国の子どもたちが在籍するドイツ田舎町で学校のクラスを1年間にわたり追ったドキュメンタリー。母語もメンタリティーも多様な生徒たちと、バッハマン先生が音楽やジャグリングで遊びながら授業をする。第71回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作品。

企画担当コメント

ウルリケ・クラウトハイム(ゲーテ・インスティトゥート東京、文化部企画コーディネーター)
 「柔らかくしなやかに、だが全力で成果を勝ち取る」。
 『フェモクラシー 不屈の女たち』でインタビューに応える、リタ・ジュースムート(元連邦議会議員で連邦青少年・家族・保健大臣も務めた)の言葉だ。今年のドイツ映画祭Horizonte 2023のオープニング作品『フェモクラシ― 不屈の女たち』は、第二次世界大戦末期からメルケル首相時代までの旧西ドイツの政治における女性パイオニアたちを描く。彼女たちは、男性議員や世間から激しい攻撃を受けながらも、政治と社会の中で居場所を掴み取っていった。登場する女性たちは明るくウィットに富んでおり、彼女たちのそんな魅力が未知の領域へ進出する際の最強の武器であったことが見てとれる。
 今年の映画祭Horizonte 2023では、そのような女性たちにフォーカスする。つまり、「与えられた」状況を疑わずに受け入れるのではなく、複雑化し急激に変化する現実に鋭く反応し、その中で方向性を見出す女性たちである。彼女たちは、人間関係にダイナミックな変化を起こすのみならず、自分自身も変わりながら、変革の一部を成し変化を共に生きるのだ。時には自分の枠を突き破る変革を経験する。
 今年の映画祭のテーマは、ドイツ映画界の変化も映し出している。プログラム7作品中4本と女性監督作品が大半を占める。ここで改めてリタ・ジュースムートの引用を思い出したい。「柔らかくしなやかに、だが全力で成果を勝ち取る」のだ。ドイツ映画の立ち位置を示す7本の作品が、若々しく新鮮な(そして女性たちの)声を届けるだろう。

ドイツ映画祭 HORIZONTE 2023

 HORIZONTE 2023- FESTIVAL DES DEUTSCHEN FILMS
 4月20日(木)~23日(日)
 会場:ユーロライブ(渋谷) 渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F
 主催:ゲーテ・インスティトゥート東京
 共催:German Films
 協力:ドイツ連邦共和国大使館、ユーロスペース

公式HP

ドイツ映画祭 HORIZONTE 2023
ドイツ映画祭HORIZONTE 2023は4月20日(木)ー23日(日)、渋谷のユーロライブで開催されます!2021年と2022年に発表された7本の新作をラインナップしました。〈道を拓く女たち〉を中心としたドイツ社会の声を新鮮なパースペクテ...

 Twitter:https://twitter.com/GI_Tokyo(外部サイト)
 FB:https://www.facebook.com/goethe.institut.tokyo(外部サイト)

上映作品

『フェモクラシー 不屈の女たち』Die Unbeugsamen
 監督:トルステン・ケルナー ドイツ、2021年、100分

 西ドイツ連邦議会の女性議員のパイオニアたちの歩みを戦後から現在まで追うドキュメンタリー。ジーパンで議会に立った緑の党の女性たち、中絶論争、反核運動など、セクハラと先入観に耐えながら、勇猛に忍耐強く前を向く女性たちの姿が頼もしく、勇気を与えてくれる。ケルナー監督はジャーナリスト出身、執念の取材による大著『フェモクラシー 男性共和国の中で女性たちが、いかに政治的権力を獲得してきたか』を出版し、その後映画化。

『私はニコ』Nico
 監督:エリーヌ・ゲーリング ドイツ、2021年、79分

 イラン系ドイツ人の若者ニコは介護の仕事をしている。明るく前向きな性格のニコは、気さくで親身な対応から利用者たちにも人気がある。親友のローザとベルリンの夏を楽しんでいたある日、人種差別的な理由から路上で襲われる。事件によって、当たり前と思っていたドイツの生活が不安に侵され、周りと距離を置くようになってゆくニコ。以前の明るさを失い、友人や患者とのつながりも薄れてゆく。本作は、ニコが危機から立ち上がり変わろうとする過程を、繊細かつパワフルに描く。
 主演俳優兼プロデューサーはサラ・ファジラット。ブレーメンで高校卒業後、ロンドンの王立演劇大学およびギルドホール音楽演劇学校で演技を学ぶ。2011年からはドイツに戻り映画テレビアカデミーで映画プロデュースを専攻、ニューヨークのコロンビア大学にも留学した。現在、俳優、脚本家、プロデューサー、映画監督として活動している。

 出演:サラ・ファジラット、サラ・クリモスカ、ジャヴェ・アセフジャ、アンドレアス・マルクアルト、ブリギッテ・クラ―マー、他

『ディア・トーマス 東西ドイツの狭間で』Lieber Thomas
 監督:アンドレアス・クライナート ドイツ、2021年、157分

 旧東ドイツ芸術界の異端児トーマス・ブラッシュ(1945-2001年)の伝記映画。
 第二次世界大戦中にイギリスに亡命していたユダヤ人一家のブラッシュ家は、文化副大臣を務めた父ホルストをはじめ、ドイツ民主共和国の建国に貢献した。作家志望の息子のトーマスは、1968年、プラハの春に賛同、ソ連の軍事介入に反対し抗議運動にかかわる。その活動により逮捕、投獄されたのち、工場で作業員として働かなければならないことに。東ドイツでの作品の出版が禁じられ、1976年亡命した西ドイツで成功するも、西側にも溶け込めない。分断ドイツのイデオロギーと価値感に、芸術を通じて挑み続け、人生を通して居場所を求め続けた作家、映画監督、演出家、脚本家トーマス・ブラッシュ。反抗心と矛盾を抱えた天才的芸術家の物語。

 出演:アルブレヒト・シュッフ、イェラ・ハーゼ、イェルク・シュットアウフ、アンヤ・シュナイダー、他

 2021年タリン・ブラックナイト映画祭グランプリ受賞、ドイツ映画賞2022年にて9部門で受賞

『バッハマン先生の教室』Herr Bachmann und seine Klasse
 監督:マリア・シュペート ドイツ、2021年、217分

 ドイツ中央西部ヘッセン州のシュタットアレンドルフ。人口約21,000人のうち25%がドイツ国籍を持たず、70%は移民、うち約5.000人がイスラム教徒という工業都市。そんなシュタットアレンドルフのとある中学校で、定年を間近に控えた教師ディーター・バッハマンは、12歳から14歳、12ヵ国の子どもたちが在籍する6年B組を担任する。母語もメンタリティーも多様な生徒たちと、音楽やジャグリングで遊びながら授業するバッハマン先生のクラスを1年間追ったドキュメンタリー。校外学習では、第二次世界大戦中、ヨーロッパ最大の武器生産拠点であり、大部分の労働者がミュンヘン郊外の強制収容所から強制的に連れてこられたという、街の歴史にも向き合う。

 第71回ベルリン国際映画祭銀熊賞および観客賞受賞作品。 

『クルナス母さんvs.アメリカ大統領』Rabiye Kurnaz vs. George W. Bush
 監督:アンドレアス・ドレ―ゼン ドイツ・フランス、2022年、119分

 実話に基づくアンドレアス・ドレ―ゼン監督の最新作。
 ドイツ生まれのトルコ人のムラート・クルナスが訴訟も裁判もないままグアンタナモ湾収容キャンプに収容された。ムラートの母親で専業主婦のラビイェは、海外で苦しむ息子を助けるため奔走するが、警察や行政に相談を重ねても物事が動かない。ある日、ラビイェは人権派弁護士のベルンハルト・ドッケと出会う。そして理性的でドライなドッケと熱血漢ラビイェが、アメリカの合衆国最高裁判所でジョージ・W・ブッシュを相手に訴訟を起こすことに。

 出演:メルテム・カプタン、アレクサンダー・シェア、チャーリー・ヒューブナ―、ナズミ・キリク、他

 第72回ベルリン映画祭、脚本賞・優秀俳優賞を受賞

『あしたの空模様』Alle reden übers Wetter
 監督:アニカ・ピンスケ ドイツ、2022年、89分

 生まれ育った旧東ドイツの田舎から脱出し、成功への道を歩むクララ。ベルリンで研究者としてのキャリアを積みながら、既存の価値観にとらわれない都会生活を送っている。母の60歳の誕生日に帰郷すると、自らの自由で自立した生活の理想と向き合うはめになる。キャリア志向の自由な生活の代償とは?
 アニカ・ピンスケの長編デビューは、今も尾を引く東西格差、都市と地方、家族とキャリアのはざまで踏ん張りながら歩みゆく現代女性の葛藤を、非常に丁寧かつユーモラスに描く。

 出演:アンネ・シェーファー、アンネ=カトリン・グミッヒ、ユーディット・ホフマン、マルセル・コーラー、他

『焦燥の夏』Niemand ist bei den Kälbern
 監督:サブリナ・サラビ、ドイツ、2021年、116分

 メクレンブルク地方の片田舎。24歳のクリスティンは、長年の恋人と酪農を営む彼の実家に住み、牛舎での仕事を手伝っている。子ども時代を彩った東西ドイツ統一後の楽観的な雰囲気は、とうに消え去った。彼との関係もうまくいかず、酒で痛みを紛らわしては、殺伐とした日常から抜け出すことを思い描くだけの日々。真夏の陽射しの下で、時間は止まっているかのようだ。そこに風力発電のエンジニアがハンブルクからやってきて、世界が再び巡り始める。
 長編2作目となるサブリナ・サラビは、官能的で雰囲気ある演出で、殺風景な田舎の日常を表現している。主演のサスキア・ローゼンダールは、圧倒的な演技力で第74回ロカルノ映画祭最優秀女優賞を受賞した。

 出演:サスキア・ローゼンダール、リック・オーコン、ゴーデハルト・ギーゼ、他

 第74回ロカルノ映画祭優秀俳優賞受賞

(オフィシャル素材提供)

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