4/7(金)~4/27(木)、ヒューマントラストシネマ渋谷にて開催される【シャンタル・アケルマン映画祭2023】。この度、予告編が解禁となった。
ベルギー出身、フランスを中心に活躍した女性監督シャンタル・アケルマン。平凡な主婦の日常を描き、映画界に革命を起こした3時間を超える大作『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』は昨年、英国映画協会が10 年ぶりに更新した「史上最高の映画100」にて1位に選ばれるなど、今もなお世界に衝撃を与え続けている。今回、4/7(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷で開催される特集上映では、昨年の第一回目の特集【シャンタル・アケルマン映画祭】で上映した『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』を含む5本に加え、4本の長編と、記念すべきデビュー作を新たにラインナップ。アケルマン監督の特異な魅力をさらに発見することができる特集だ。
この度完成した予告編は、昨年も上映した5作品『ジャンヌ・ディエルマン リュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』『私、あなた、彼、彼女』『囚われの女』『オルメイヤーの阿房宮』に続き、本年度初めて上映の短編『街をぶっ飛ばせ』、『家からの手紙』『東から』『一晩中』『ゴールデン・エイティーズ』を印象的な各シーンと共に順番にご紹介。静謐な中にもダイナミックな迫力がある美しい映像と、さまざまな女性たちの肖像、そしてニューヨークやブリュッセル、パリと各地を横断して描き出される都市の貌といった、アケルマン監督作品の魅力をいち早くお楽しみいただける予告となっている。
上映作品
『街をぶっ飛ばせ』 ★本映画祭での初上映作品
(原題:Saute ma ville、1968年、ベルギー、上映時間:12分)
当時18歳だったアケルマンが、ブリュッセル映画学校の卒業制作として初めて監督、主演を務めた記念すべき処女作。花束を手にアパートの階段を駆け上がったひとりの女。狭いキッチンで縦横無尽に暴れ回った彼女の支離滅裂な行動は、驚くべき事態で幕を閉じる。その後の反逆的な作品群の原点とも言える破壊的なエネルギーに満ちた、あまりに瑞々しい短編。
『私、あなた、彼、彼女』
(原題:Je Tu Il Elle、1974年、ベルギー・フランス、上映時間:86分)
アケルマン自身が演じる名もなき若い女性がひとり、部屋で家具を動かし手紙を書き、裸で砂糖をむさぼる。部屋を出た彼女はトラック運転手と行動を共にし、訪れた家で女性と愛を交わす……。殺風景な空間と単調な行為が彼女の閉塞感や孤独を際立たせ、激しく身体を重ね合うことで悦びがドラマティックに表現される。
『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』
(原題:Jeanne Dielman, 23, quai du Commerce, 1080 Bruxelles、1975年、ベルギー/カラー、上映時間:200分)
ジャンヌは思春期の息子と共にブリュッセルのアパートで暮らしている。湯を沸かし、ジャガイモの皮を剥き、買い物に出かけ、“平凡な”暮らしを続けているジャンヌだったが……。アパートの部屋に定点観測のごとく設置されたカメラによって映し出される反復する日常。その執拗なまでの描写は我々に時間の経過を体感させ、反日常の訪れを予感させる恐ろしい空間を作り出す。
『家からの手紙』 ★本映画祭での初上映作品
(原題: News from Home、1976年、ベルギー・フランス、上映時間:85分)
路地、大通りを走る車、駅のホームで電車を待つ人々、地下道……1970年代ニューヨークの荒涼とした街並みに、母が綴った手紙を読むアケルマン自身の声がかぶさる。固定ショットやトラベリングで映し出される公共のロケーションと、時折車の音に掻き消されながらも朗読される、愛情溢れる言葉の融合。
『アンナの出会い』
(原題:Les Rendez-vous d’Anna、1978年、ベルギー・フランス・ドイツ、127分)
最新作のプロモーションのためにヨーロッパの都市を転々とする女流映画監督を描く、アケルマンの鋭い人間観察力が光る一本。教師、母親、母親の友人らとの接触を挟みながら、常に孤独に彷徨い歩く主人公アンナの姿と、日常に溶け込みはしない断片的な空間と時間とを通して、アイデンティティや幸福の本質が絶妙な構成で描き出されている。
『一晩中』 ★本映画祭での初上映作品
(原題:Toute une Nuit、1982年、ベルギー・フランス、上映時間:90分)
ブリュッセルの暑い夜、眠りにつくことのできない人々。官能的な熱を帯びた一晩の中で連結していく、数々の出会いや別れ。詩的な青色の夜を描き出す撮影監督の一人に80年代のジャン=リュック・ゴダール監督作品、近年ではレオス・カラックス監督『アネット』(2021)を手掛けた名女性キャメラマン、カロリーヌ・シャンプティエ。
『ゴールデン・エイティーズ』 ★本映画祭での初上映作品
(原題:Golden Eighties、1986年、ベルギー・フランス・スイス、上映時間:96分)
美容院やカフェが並ぶパリのカラフルなブティック街を舞台に、そこで働く従業員たち、客たちが恋模様を歌い上げるミュージカル。パステルカラーの衣装に身を包んだ登場人物たちが歌い踊るロマンティックな浮遊感と、愛に対するアケルマンの容赦ない視線が巧みにバランスされている。
『東から』 ★本映画祭での初上映作品
(原題:D’Est、1993年、ベルギー・フランス、上映時間:115分)
ソ連崩壊後の旧共産主義国の都市とそこで暮らす人々の姿をとらえたドキュメンタリー。ナレーションや場所の名前をも排して、アケルマンは時折市井の人々の家庭の様子を散りばめながら、果てしない距離や文化情勢、生活様式を記録した。透徹した眼差しがその場所で確かに流れる時間と観客を近づけ、好奇心を駆り立て、映像そのものが静かに語りはじめる。
『囚われの女』
(原題:La Captive、2000年、フランス、上映時間:117分)
祖母とメイド、そして恋人のアリアーヌとともに豪邸に住んでいるシモンは、アリアーヌが美しい女性アンドレと関係を持っていると信じ込み、次第に強迫観念に駆られていく。マルセル・プルーストの「失われたときを求めて」の第五篇、「囚われの女」の大胆で自由な映像化。嫉妬に苛まれ、愛の苦悩に拘束される虜囚の境地をアケルマンは洗練された表現で描写する。
『オルメイヤーの阿房宮』
(原題:La Folie Almayer、2011年、ベルギー・フランス、上映時間:127分)
東南アジア奥地の河畔にある小屋で暮らす白人の男オルメイヤー。彼は現地の女性との間に生まれた娘を溺愛し外国人学校に入れるが、娘は父親に反発するように放浪を重ねていく……。『地獄の黙示録』(79)のもとになった「闇の奥」で知られるイギリスの作家ジョゼフ・コンラッドの処女小説を脚色。時代も場所も明かされず抽象化された設定の中で、狂気と破滅の物語が繰り広げられる。
【シャンタル・アケルマン映画祭2023】
4/7(金)~4/27(木) ヒューマントラストシネマ渋谷にて開催!
主催:マーメイドフィルム
配給:マーメイドフィルム、コピアポア・フィルム
宣伝:VALERIA
(オフィシャル素材提供)