TBSは魂を揺さぶる良質のドキュメンタリー映画の発信地となるべく立ち上げた、新ブランド「TBS DOCS」 のもと、今年も 『TBSドキュメンタリー映画祭 2023』を開催中。
開催から2日目となった「TBSドキュメンタリー映画祭2023」。3月18日、『魂の殺人 ~家庭内・父からの性虐待~』が上映され、加古紗都子監督と出演者の宮本ゆかり氏が舞台挨拶を行った。
声を上げ始めた性暴力被害者たちと、その闘いを描くドキュメンタリー。加古監督は「目を背けたくなるテーマではあるが、これが日本で起きている現実。今も家庭内の性虐待で苦しんでいる子どももいるし、過去に被害を受けて今なお葛藤の最中にいる方もいます。本作では性暴力が被害を受けた方のその後の人生にどれほど影響を及ぼすかにフォーカスを当てました。その現実を皆様に知っていただければ幸いです」と呼びかけた。
当事者として本作に出演した宮本さんは「家庭内性虐待の当事者以外の方がこの問題に関心を持っていただき、ドキュメンタリー映画が制作されることには大きな意義を感じます。ここ5年で見ても、性虐待に対する皆さんの受け止め方が変わってきたと肌で感じています。そのような被害が現実にあることが認知され、受け止めてもらえていると感じます」と理解の広がりを歓迎していた。
宮本さんら被害者たちが声を上げ始めたことに触れて加古監督は「家庭内性虐待の問題はセンシティブな問題だと捉えられてきたために、被害を受けた当事者の方々に沈黙を強いてきました。しかも家庭内の出来事に関しては、表に出しづらい風潮にある。その中で宮本さんは勇気を出して、実名も顔も映して訴えてくださった。そのような方々の声を伝えたい、その動きに連帯したいという思いがありました」と心境を語った。宮本さんも「家庭内の性虐待とは、当事者が声を上げないと表面化しにくい虐待です。みんなが立ち上がり声を上げて、認知してもらえることが大事だと思います」と語った。
宮本さんは、当事者として声を上げることが出来た理由を尋ねられると「恥ずかしいと思っていた自分の過去を自己理解することで、恥ずかしい過去ではなくなった。私にとって過去と向き合うツールはブログで、書き始めた当初は泣きすぎて頭が痛くなったりしてなかなか進まなかったけれど、ブログに書くという行為は私にとって大きな意義のあることでした」と打ち明けた。
また途中、宮本さんが声を上げるきっかけとなった著者から、監督と宮本さんへのメッセージも。
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加古監督、宮本ゆかりさん
とても力強い、良い作品でした。
途中、私の著書を紹介していただき、本当に光栄に嬉しく思います。
もし私が書いた本がなにかのきっかけになっていたり、ほんの少しでもお役に立つことがあれば、著者としてこんなに嬉しいことはありません。
当日はぜひ会場に行かせていただきたかったです。
残念ながら今回はスケジュールの関係でそれは叶いませんが、映画がたくさんの方に届いて、また社会が変わっていく力になっていきますように、私にも引き続き応援させてください。
作品を拝見できて本当に良かったです。
公認心理師/LGBTアクティビスト 東 小雪(ひがし こゆき)
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加古監督は感謝の思いを噛み締めながら、宮本さんのきっかけになった経緯について触れ、宮本さんは「ネットでこの本を注文して、受け取るまでもビクビクしていた」当時の心境を振り返り、作品を手にとって、元タカラジェンヌで顔も知られている東氏が告白したことに勇気をもらい、「私も」と動き出すきっかけになったという。
最後に加古監督は「性暴力の問題は身近な問題であり、男女問わずに誰にでも突然起こりうる問題です。本作のタイトルにある“魂の殺人”の通り、被害者の尊厳を奪いその後の人生にも影響を及ぼす暴力です。もし今被害を受けている方がこの映画を観ていたとしたら、被害について語れる場所があり、それを聞いてくれる方がいる。連帯してくれる場所があることを知ってもらいたいです。この映画が声を上げるきっかけの一つになってもらえたら幸いです」と呼びかけていた。
登壇者:加古紗都子監督、宮本ゆかり氏(出演者))
『魂の殺人 ~家庭内・父からの性虐待~』
監督:加古紗都子、上映時間:71分
渡辺多佳⼦さんが4歳の頃、突然、性虐待は始まった。
加害者は、⾃分の⽗親だった。
“魂の殺⼈”と呼ばれ、被害者の⼼に深い傷を負わせる、性虐待。
50年以上もの苦しみを経て、多佳⼦さんは決意する。実名で被害を告発すること。そして、絶縁状態にあった⽗親と対峙することを。
「抵抗できなかった私が、悪いんですか?」多佳⼦さんの問いかけに、⽗親が語った⾔葉とは――。声を上げ始めた被害者たちと、その闘いを描く。
(オフィシャル素材提供)