来る2023年12月7日よりPARCO劇場開場50周年記念シリーズとして、『海をゆく者』を上演する。東京PARCO劇場を皮切りに、新潟、愛知、岡山、大阪、広島、福岡と巡演する。この度、出演者が発表された。
『海をゆく者』はアイルランド演劇界をリードする気鋭の劇作家コナー・マクファーソンの出世作にして代表作。2006年に自らの演出により、ロンドンのナショナル・シアターにてデビューした本作は、ローレンス・オリヴィエ賞“BEST PLAY”、トニー賞“BEST PLAY”他三部門に輝き、「21世紀のクリスマスキャロル」と評され、世界中で上演されてきた傑作芝居だ。
日本では、演劇界を牽引する5人の名バイプレイヤーたちが、演出家栗山民也の元に結集し、丁々発止のセリフの応酬と円熟味あふれる絶妙なアンサンブルで、2009年、2014年に上演され、大好評を博したPARCO劇場の傑作レパートリーだ。
“PARCO劇場50周年”のアニヴァーサリー・イヤーとなる2023年に、平均年齢70歳を目の前にしながら、今なお第一線で活躍を続ける現役バリバリの俳優たちの豪華競演が実現した。
ロックハート役には数々の映画、ドラマで活躍し、コミカルな役から悪人まで幅広い役柄を演じ、作品にスパイスを加える小日向文世。過去2公演で吉田鋼太郎が演じたリチャード役には、ドラマ・舞台・ナレーションと多岐にわたり躍進を続ける高橋克実。アイヴァン役には幅広い役柄に対応する演技力で舞台やテレビに欠かせない名脇役 浅野和之。ニッキー役には、舞台やドラマなどにとどまらず、時には女方も務め、常に異彩を放ち続ける大谷亮介。シャーキー役には2014年版の「海をゆく者」では第49回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞し常に存在感を残す平田 満。
愛すべきダメ男たちのクリスマス・イヴ、最後に笑うのは、誰だ!?
ポーカーゲームのごとく、百戦錬磨の名優たちが、「舞台」というテーブルの上で、「言葉」というカードを切りまくる。
笑いとサスペンスに満ちた、丁々発止のスリリングなダーク・コメディ!
どうしようもないおやじたちの愛おしいばかりのクリスマスファンタジー。今冬、珠玉の名作が復活する。
コメント
翻訳:小田島恒志
『海をゆく者』(The Seafarer)に登場する男たちは海をゆきません。
酒を飲んでポーカーをするだけです。どうやら、このタイトルは10世紀ごろの同名の古い詩に由来するようです。
その詩では、冬の凍てつく海を独りでゆく老水夫の苦難と、それを知りもせず陸地で仲間とわいわい楽しく過ごしている連中への恨みがぐじぐじと語られます。
ですが一転、「どうせ地上の幸福は長くは続かない、人間、勇敢な行動をもって悪魔に抗わなくては……アーメン」と前向きになって宣言します。
え? 余計関係ない? うーん、どうでしょう……。
演出:栗山民也
アイルランドをぐるっと回った時、昼間からパブでぼんやり幸せそうにビールを飲む老人たちが、なんと日向の中の妖精たちに見えたのです。
この作品、日本初演から14年。
私を含め俳優たちもみんな前期高齢者になって、やっとアイルランドの平和な妖精に近づけるのだと思います。
パルコ劇場の祝50周年なのです。私の中ではこの作品、勝手に伝説のようなものなのです。
なんとも愛おしく人間の美と醜に満ち溢れた作品『海をゆく者』を、お楽しみに。
小日向文世
初演から14年も経ったとは……。あっという間に過ぎて行った感じです。
平田 満さん、浅野和之さん、大谷亮介さん、自分、50代だったメンバーが古希目前。
新しく加わる高橋克実さんだってもう60代。皆元気に舞台に立てることが幸せです。
再演から9年ぶりに集合して栗山民也さんの演出を又受けることができる楽しみ。ワクワクしています。
ヨレヨレの酒浸りのアイルランドのおじさんたちを演じます、元気に! ぜひお楽しみに!!
高橋克実
今回のお話をいただいてから、ずっとドキドキソワソワしています。なぜなら、あの素晴らしい初演・再演を体感しているからです。飲み散らかした男所帯の部屋の臭いまで伝わるような舞台。栗山民也さんの繊細で美しい演出も忘れられません。今回、初演・再演で吉田鋼太郎さんが見事に務め上げられた、リチャード・ハーキンを演じさせていただきます。達者な鋼太郎さんとは正反対の私が、小日向文世さん、平田 満さん、大谷亮介さん、浅野和之さんの4人の演劇レジェンドの中に放り込まれるとどうなるのか……、想像もつきません。もちろん、久々に栗山さんの演出を受けられること、尊敬するレジェンドたちと一緒の舞台に立てることは幸せです! 今から稽古が楽しみ……、と言いたいところなのですが、実際には、すでにものすごい緊張感が押し寄せてきています。私にとっては、今回の現場は「修業の場」ですね。とにかく、栗山さんや先輩方の打った球に食らいつき、何が何でも取る! 今はそんな覚悟です。
浅野和之
再々演は驚きでしたが、演出の栗山民也さんをはじめ、また皆で一緒に作業ができるのがとても嬉しいですね。コヒ、大谷、平田 満さんは同い年なんです。舞台への変わらない情熱を持ち続けている顔ぶれとまた舞台に立てるのが楽しみです。新たに加わる克実君は大変かもしれませんが、皆でできる限りサポートしたいと思っています。いい大人たちが集まって酒を飲みながらくだらない話をするという“生態”を垣間見るような作品。どうしようもない人間たちと、神や精霊や悪魔といった神秘的なものとの接点にも面白さを感じます。一番の肝はポーカーのシーン。初演も再演も毎日、稽古開始1時間前に集まって皆で練習したのを憶えています。再演を重ねられるということは、この作品のファンの方々が多いということですよね。そんな皆さんの期待を裏切らないよう、とにかく走り抜けて、「PARCO劇場開場50周年記念シリーズ」の締めを飾るに相応しい舞台にしたいと思います。そして、次世代へのバトンをつなぐような意義のある作品にしたいですね。
大谷亮介
再演から9年、随分と時間が経ちました。今回はメンバーも少し変わりますから、また新たな気持ちで、新しい作品に取り組むつもりでやりたいと思っています。健康で立派に頑張っておられる小日向文世さん、浅野和之さん、平田 満さんと久しぶりに芝居ができることも、旧知の仲である高橋克実さんと初めてご一緒することも楽しみ。演出の栗山民也さんとこうしてまたご一緒できることも本当に嬉しいです。小日向さん、浅野さん、平田さん、僕の4人は、まもなく70歳になりますから、ご覧になる方々に“人生”というものを垣間見せることができるような芝居を皆で作りたい。アイルランドのどうしようもない酒飲みの物語が、私たちや皆さんの“人生”に共通する芝居になればいいなと思っています。とにかく演劇を観ることが好きな方々に楽しんでいただける芝居にしたい、ただそれだけを思って務めさせていただきます。
平田 満
『海をゆく者』再再演と聞いて、「まだやれるんだ」とうれしくなりました。
登場人物5人、それも中高年の男ばかりがほとんど出づっぱり、しかも緊張感のある芝居なのに、なぜか懐かしくあったかい気持ちになりました。今回、吉田鋼太郎さんから高橋克実さんに代わりますが、60過ぎたらみんな同世代です。
皆さん現役でバリバリ活躍しているので心強いです。
クリスマスの夜に酒とポーカーしかない悲惨な愛すべき男たちと会えるのが楽しみです。
年齢に関係なく、というか、ダメな年寄りおやじたちを思いっきり笑い飛ばせる舞台になると思います。寄る年波と言われないよう、年寄りの冷や水と言われないよう、でも枯淡の境地とは絶対言わせない面白いものになるはずです。
あらすじ
アイルランド、ダブリン北部。海沿いの町にある古びた家に、若くはない兄弟が二人で暮らしている。兄のリチャード(高橋克実)は大酒のみで、最近、目が不自由になり、その世話のために戻ってきたという弟のシャーキー(平田 満)は、酒癖の悪さで多くのものを失い、今は禁酒中。陽気で解放的な性格のリチャードは、クリスマス・イヴも朝から近所の友人アイヴァン(浅野和之)と飲んだくれ、シャーキーが顔を合わせたくないであろう男ニッキー(大谷亮介)を「クリスマスだから」とカードに誘ってシャーキーを怒らせる。さらには、ニッキーが連れてきた一人の男、ロックハート(小日向文世)。彼こそが、シャーキーが忘れたくとも忘れられなかった男だった。
公演情報
PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『海をゆく者』
作:コナー・マクファーソン
翻訳:小田島恒志
演出:栗山民也
出演:小日向文世、高橋克実、浅野和之、大谷亮介、平田 満
東京公演:2023年12月7日(木)~12月28日(木) PARCO劇場
新潟公演:2024年1月7日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
愛知公演:2024年1月12日(金)~14日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
岡山公演:2024年1月17日(水) 岡山芸術創造劇場ハレノワ中劇場
福岡公演:2024年1月20日(土)~21日(日) キャナルシティ劇場
広島公演:2024年1月24日(水) アステールプラザ 大ホール
大阪公演:2024年1月27日(土)~29日(月) サンケイホールブリーゼ
過去公演データ
作:コナー・マクファーソン
翻訳:小田島恒志
演出:栗山民也
出演:小日向文世、吉田鋼太郎、浅野和之、大谷亮介、平田 満
※2009年・2014年公演同様
★2009年公演
東京公演 PARCO劇場
大阪公演 サンケイホールブリーゼ
新潟公演 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
愛知公演 名鉄ホール
★2014年公演
東京公演 PARCO劇場
石川公演 金沢市文化ホール
愛知公演 穂の国とよはし芸術劇場PLAT
大阪公演 シアター・ドラマシティ
宮城公演 電力ホール
広島公演 アステールプラザ 大ホール
福岡公演 キャナルシティ劇場
初演・再演 劇評より抜粋
高橋 豊(毎日新聞夕刊 2009年12月3日)
スリリングで悲期的なのに笑があふれてくる芝居だ。幕切れのどんでん返しを含め、ダメ男たちへ優しい目が注がれ、「21世紀のクリスマスキャロル」の感じすらする。一中略一出演の5人は小劇場運動を経験したほほ同世代の俳優で、見事なアンサンブルが気持ちいい。
江原吉博(東京新聞多刊 2009年12月3日)
アイルランドにはどうしてこうも度が外れた登場人物が多いのか。口汚いが独特のユーモアがあって、近づきになりたくはないが離れて見る分には無類に面白い人たちだ。
山口宏子(悲劇喜劇 2010年2月号)
腕のある役者が集まって、のびのび演じている。演出も丁寧。実に上質な舞台。
北川登園(テアトロ 2010年2月号)
せりふの意味ではなく、せりふが転がっていく人間の生理の面白さだ。
扇田昭彦(ダンスマガジン 2010年3月号)
実に緻密に作られた出色の舞台で、ほほ同世代の実力派がそろった演技も楽しめた。アイルランド演劇の魅力を再認識した舞台でもある。
―中略―
リアルな感触を維持し、細部までゆるがせにしない栗山演出は見応えがある。特に酒乱気味の男たちを愛しげに造形する演出。翻訳色を感じさせない小田島恒志の自在な翻訳。とにかく見終わって、おいしい酒が飲みたくなる舞台である。
みなもとごろう(悲劇喜劇 2015年3月号)
それぞれの役者がいまの日本の演劇界で、自分のキャラクター、表現方法で一人ひとりの男を描いてきた俳優たちが集まっているので、それをアンサンブルとしているわけですから、1+1+1+1+1が5ではなくて、それが10になるような感じで作られている。いい舞台。
(オフィシャル素材提供)