国内外で高い評価を得る二ノ宮隆太郎監督の興業デビュー作であり、光石 研12年ぶりの映画単独主演を飾る『逃げきれた夢』が第76回カンヌ国際映画祭ACID部門へ正式出品を果たした。監督を務めた二ノ宮隆太郎と主演の光石 研よりコメントが到着した。
本作は映画デビューから45年、日本の映画・ドラマ界を支える名優の光石 研が2011年公開作『あぜ道のダンディ』から12年ぶりの映画単独主演作となっており、自身の地元でもある北九州を舞台に、人生のターニングポイントを迎えた中年男・末永周平を演じる。また、物語のカギを握る周平の元教え子・平賀 南には、総勢800人のオーディションを見事突破し役を掴んだ若手女優のホープであり、光石 研と同じく北九州出身の吉本実憂。また、主人公の妻・彰子を坂井真紀、娘・由真を工藤 遥、さらに旧友・石田を光石 研本人とも気心の知れた松重 豊が務めるなど、フレッシュな演技と熟練の技がぶつかり合う姿も注目ポイントとなっている。監督・脚本は俳優としても活躍の場を広げる新鋭・二ノ宮隆太郎。映画監督・瀬々敬久が審査員を務めた2019年フィルメックス新人監督賞のグランプリ受賞作である脚本を基に、二ノ宮監督自ら映画化することで興業映画デビューの切符を手に入れた。
このたび、『逃げきれた夢』が第76回カンヌ国際映画祭のACID部門への正式出品が決定した。
ACID部門は、監督週間と批評家週間に並ぶカンヌ映画祭の3つの並行部門のひとつであり、1993年に芸術的な作品を支援するために映画作家たちが創設した「インディペンデント映画普及協会(ACID)」が独自に立ち上げ、作品選定・運営を行っている。この30年の歴史を持つ重要な部門では毎年世界の先鋭的な9作品を紹介しており、今年は約600作の応募作品から『逃げきれた夢』が見事正式出品作のひとつとして選出。昨年同部門に出品された『やまぶき』(山﨑樹一郎監督)に続けて日本で2本目という快挙を遂げた。
選定委員による『逃げきれた夢』の選定理由には「非常に深みのある作品」、「演出、そしてシーンの構築が素晴らしい。儚さを受け入れなければならないが、そこに飛び込むと、逸品が待っている」といった本作を高く評価する言葉が並んでいる。また、二ノ宮隆太郎監督は「尊敬するキャスト、スタッフの皆さんとご一緒できましたこと、そして素晴らしい環境で上映できることに感謝しかないです」、主演の光石 研からは「カンヌでの上映、観ていただいた方々の反応が楽しみです。そして、個人的には我が九州弁がカンヌに轟く快感、身震いします」といった歓喜のコメントも到着。
コメント
二ノ宮隆太郎監督
福岡県北九州市の黒崎の街を、光石 研さんと歩かせていただいたのがこの映画の始まりでした。
そこは光石 研さんが生まれ育った街で、過ごされた時間への想いが、この映画に詰まっています。
北九州オールロケの作品です。撮影時には地元の皆様に本当に支えていただきました。
尊敬するキャスト、スタッフの皆さんとご一緒できましたこと、そして素晴らしい環境で上映できることに感謝しかないです。
光石 研
カンヌ映画祭、ACID部門正式出品の一報を聞き、本当に嬉しい限りです!
この映画は、小さな町の小さな男の話です。
でも、例えばEUの小さな町の小さな男の話でもあるのです。
すなわち、グローバルな話です。
ヨーロッパの人々にも共感していただけると思います。
カンヌでの上映、観ていただいた方々の反応が楽しみです。
そして、個人的には我が九州弁がカンヌに轟く快感、身震いします。
二ノ宮監督、良かったね! そして、ありがとう!
ACID部門 選定委員
非常に深みのある作品。トルストイの「イワン・イリッチの死」の登場人物や設定を現代に置き換えているようで、題材こそ新しくはないが、現代に生きる男が人生の意味に向き合う姿を描いている。それはまさに現実の狭間といえる。社会情勢が異なる19世紀と時は異なるが、すべてが繊細で、非常に一般的かつ重要な問題を表現している。(リナ・ツリモヴァ)
演出、そしてシーンの構築が素晴らしい。儚さを受け入れなければならないが、そこに飛び込むと、逸品が待っている。(ヴィケン・アルメニアン)
二ノ宮隆太郎 プロフィール
1986年8月18日生まれ。神奈川県出身。2012年、初の長編作品『魅力の人間』が第34回ぴあフィルムフェスティバルで準グランプリを受賞し、海外映画祭でも好評を博す。2017年、監督、主演を務めた長編第二作『枝葉のこと』が第70回ロカルノ国際映画祭の長編部門に日本映画から唯一選出される。2019年、長編第三作『お嬢ちゃん』が公開。同年、フィルメックス新人監督賞グランプリを受賞。『逃げきれた夢』の製作が決定する。本作が商業映画デビュー作となる。
映画監督、脚本家、俳優として活動する。
公開表記
配給:キノフィルムズ
6月9日(金)より新宿武蔵野館、シアター・イメージフォーラムほか全国ロードショー
(オフィシャル素材提供)