イベント・舞台挨拶

『帰れない山』公開記念舞台挨拶

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 国際的ベストセラー小説を映画化し、「原作の忠実な映画化」「壮大で純粋な作品」と世界が絶賛。第75回カンヌ国際映画祭にて審査員賞を受賞。北イタリア、モンテ・ローザ山麓を舞台に、自分の人生と本当の居場所を求めて彷徨う、かけがえのない友情と魂の交流を描く感動作『帰れない山』が、5月5日(祝・金)より新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋ほか全国で公開初日を迎えた。

 主人公2人が己と向き合い、自らの生き方を探していく映画の公開を記念して、5月5日の初日にシネスイッチ銀座で公開記念舞台挨拶を実施。ゲストには、物まねを得意とする芸で人気を博し、その後、俳優、芸術家として一線で活躍され、今年で芸歴50周年を迎えた片岡鶴太郎が来場。なぜお笑い芸人から画家、ボクサー、俳優、そしてヨガ・マスターへと転身したのか、人生の転機をどのように決断したのかなど、混沌とした世の中を生きるわたしたちへの生きるヒントを打ち出す機会となった。

 この日の聞き手は、前東京国際映画祭ディレクターの矢田部吉彦が担当。映画上映後、矢田部の呼び込みにより、ステージに登壇した鶴太郎は「おそらく皆さんも観終わった後の余韻に浸っているところじゃないかと思うのですが、わたしも観終わってしばらく沈黙の中におりました。沈黙というのは、自分と会話をすることというか。わたしならどういう判断をするのかな、わたしが子どもの頃はどうだったのかな、など自問自答していて。観終わった後、しばらくそういう余韻の中で、自分と語り合っていた気がします」と本作の感想を述べると、「映画に限らず、音楽、絵画、芸術作品など、いい作品に向き合うと沈黙になって、自分と語り合う。その時間が長ければ長いほどいい作品に出合ったな、と思うんですね」と付け加えた。

 そしてこの日は、男同士の友情、父と息子など、本作を語る上で重要なテーマに沿ってトークを展開。そこでまずは、鶴太郎が芸の道に進む上で大きな影響を与えたという父親の話から。「うちの父親は神田の生まれで。特に落語が好きで、物心ついたときから上野や浅草の演芸場に連れられていったんですけど、子どもなので落語はよく分からなかった。むしろ漫談や色ものなどが面白くて。それでものまねをやりたいと思うようになって、芸人の道に進んだんです」と切り出した鶴太郎は、「高校を出てすぐに(声帯模写芸人)片岡鶴八の弟子になって。親元を離れて、自分の道を歩み始めたものですから。父親母親は黙って見守っていてくれましたね」と振り返る。

 その流れでトーク・テーマは、“人生の決断”について広がっていった。「さいわいにして父親の影響で寄席に行くようになって。落語家の方、演芸人の方を見て、ものすごくカッコいいと思ったんです。子どもの頃からあこがれがあったので、終わったあと、すぐに楽屋にサイン帳を持って“サインをください”って言いに行ってたんです。ちょうど談志になったばかりの(立川)談志師匠にも、もらいに行って。“こういうのが将来芸人になったりするんだよな”なんて言われながらもサインを書いてくれた。舞台で面白いことをやっていればやっているほど、楽屋での芸人さんの風情、色気が子ども心にカッコいいなと思っていた」と懐かしそうに語る鶴太郎。さらに画家、ボクサーなどへの転身についても、芸事と同様に、自分が「カッコいい」「やりたい」という衝動に突き動かされてやってきた部分が大きかったという。

 その思いをあらためて「魂がこれをやりたいというもの。魂の歓喜というか、魂が喜ぶだろうなということをやる。そこには儲かるとか儲からないとか、失敗するとか、成功するとか関係ない。いろいろなしがらみを取り払って、とにかくやりたいことをやるのがしあわせな選択だと思います」と力説した鶴太郎。その真剣な言葉に会場も熱心に耳を傾けていた。

 そんな鶴太郎にとっての魂の友人とは? その質問に「芸能の世界では、作品を1本やるときずなが生まれるんですが、それからみんなが違う世界に行ってしまうので、なかなかきずなを持続していくのは難しい状況なんです」と語る鶴太郎は、「そういう意味で、私の中で信頼を置いているのはヨガ・マスターですね。彼にはいろんなことを相談できますし、いろんな質問にも答えてくれる。これは友情ではなく、師弟関係かもしれませんが」と返答。さらに「友情を大事にするなら、最低限、相手に迷惑をかけちゃいけない。お金の貸し借りなども、友情が壊したくないなら言えないですよね」と付け加えた。

 そして最後に「これは本当に正統派の映画ですよね」と語った鶴太郎は、「シンプルに男同士の友情の物語。子どもの時に出会って、そこから年齢を重ねていって。大人になるまでのプロセスにはせつなさなどもありましたが、だからこそ胸が熱くなるというか。わたしにはそういう友がおりませんので、ある種のうらやましさを感じました。映画を観ながら、自分の人生を照らし合わせて、いろいろなことを考えさせてくれるような、沈黙のある映画だと思います」とメッセージを送った。

 登壇者:片岡鶴太郎

公開表記

 配給:セテラ・インターナショナル
 5月5日(金・祝) 新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開

(オフィシャル素材提供)

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