イベント・舞台挨拶

『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩(うた)』衆議員会館 特別試写会

©MINISTRY OF CULTURE AND INFORMATION POLICY OF UKRAINE, 2020 – STEWOPOL SP.Z.O.O., 2020

 時代は第二次世界大戦下。領土を奪われ翻弄されるウクライナ、ポーランド、ユダヤ人の家族が、大地と子どもたちを守り抜こうとする運命の物語。映画『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』(7月7日公開)の議員会館特別試写会が6月12日(月)に衆議院第一議員会館多目的ホールで実施され、超党派映画議員連盟会長の伊藤信太郎氏とウクライナ駐日大使のセルギー・コルスンスキー氏が上映前に挨拶を行った。

 ウクライナの民謡をもとに生まれた有名な楽曲「キャロル・オブ・ザ・ベル」の歌に支えられ、ひたむきに生き続ける戦時下の3家族の姿を映し出す本作を絶賛する伊藤氏は「この映画は、今の世界情勢というものを、もう一度歴史を振り返ってみるという意味でも大変重要な作品です。主人公たちは、ある時はソ連の支配下に置かれ、ある時はナチス・ドイツの支配下に置かれ、再びソ連の支配下に置かれる。悲惨な状況に陥るわけですが、その中でも音楽というものが人々の絆になり、国家、イデオロギー、人種の差を乗り越えて、その魂が現在近くまで受け継がれるという物語です」と紹介した。

 一方、コルスンスキー氏は劇中で重要な曲として流れる「キャロル・オブ・ザ・ベル」について「この曲は世界では“クリスマスキャロル”として有名な曲ですが、そもそもの発祥はウクライナです。今では世界各国のクリスマス・シーズンに歌われ、親しまれているのです」と、その歴史を解説。劇中の内容に触れて「ウクライナ人、ポーランド人、ユダヤ人の家族が一つ屋根の下で隣り合って暮らしていますが、その3家族の心を『キャロル・オブ・ザ・ベル』がどのように繋いでいくのか? そして現在のウクライナの領土に暮らしていた3家族にとって、ソ連とナチス・ドイツによる占領がどれだけの悲劇であったのかを描いています」と紹介した。

 またコルスンスキー氏は、現在のウクライナの状況に照らし合わせて「本作を通してご理解いただきたいのは、我々ウクライナ人にとってソ連とは占領そのものだったということです。そして現在のロシアによる侵略は、ナチズムとレイシズムが一緒になってウクライナを破壊しようとしているのです」と訴えた。

 本作はロシアによる侵攻前のウクライナで撮影され、今2023年の1月にウクライナで公開されたという。コルスンスキー氏は「この映画はロシアのウクライナ侵攻が始まってからの公開となりましたが、今現在もウクライナは頑張っています。そしてみんな必死に生きて、作品を作っています。この映画がウクライナが生き続けている証拠となり、新しい歴史の1ページとして、ご理解いただけることを期待しています」と呼び掛けていた。

 2022年2月24日、ロシアによるウクライナへの侵攻が始まった。ウクライナは抵抗を続け、この戦争は現在も世界中に多大な影響を与え続けているが、本作をこの侵攻が始まることを予感していたかのように2021年に作り上げたのは、これまではドキュメンタリーを主戦場としてきたオレシア・モルグレッツ=イサイェンコ監督。

 現在もキーウに住み、子を持つ母親でもある監督だが、「この映画は、ロシアによるウクライナの本格的な侵攻の前に制作されましたが、その時点でさえ私たちが住む国は戦争中の状況でした。老いも若きも、ウクライナに生きる人々の中に戦争や悲劇的な出来事を経験せずに生き延びている人は一人もいませんので、この映画に取り組むことは私にとって非常に重要でした」と言う。

 そして「今、この映画はさらに現代との関連性が高まっています。映画で描かれたように、実際の戦争において、女性や子どもは常に戦争の人質です。妊娠中だった私の姉と姪は、占領地の地下室に28日間過ごすことを余儀なくされました。なので、私は私たちの映画が記憶から消し去られてはいけない過去を反映したものであり、そして未来はウクライナ人と世界にとってより良きものになるはずだと考えています」とその想いを語り、加えて「この映画はあらゆる国家における<文化と伝統>が人間性においてもっとも偉大な宝物であることを提示します。登場人物たちは、作中ほとんどの時間を外界から隔絶されていますが<音楽>が彼女らをその悲しみから守っているのです」と述べる。

 登壇者:伊藤信太郎(超党派映画議員連盟会長)、セルギー・コルスンスキー(ウクライナ駐日大使)

<キャロル・オブ・ザ・ベル>とは?
 クリスマスキャロルとして有名な「キャロル・オブ・ザ・ベル」は、ウクライナで古くから歌い継がれている民謡「シェドリック」に1916年“ウクライナのバッハ”との異名を持つ作曲家マイコラ・レオントーヴィッチュが編曲し、英語の歌詞をつけたものである。映画『ホーム・アローン』(90)内で歌われ、世界中に知られるようになった。この歌は「ウクライナ語、ウクライナ文化が存在している」という明確な証として今も歌い継がれている。

公開表記

 配給:彩プロ
 7月7日(金) 新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国公開

(オフィシャル素材提供)

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