映画『NO LIMIT,YOUR LIFE ノー リミット,ユア ライフ』の公開を記念し、6月15日(木)、世界初となる、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を使った難病患者向け映画試写会が、分身ロボットカフェDAWN ver.β(東京都中央区日本橋)で行われた。
「OriHime(オリヒメ)」とは、全長約20㎝ほどの手のひらに乗せられるサイズで、インターネットを通じて遠隔からの操作が行え、行きたい場所に置くことでテレワークや遠隔体験が可能となる分身ロボット。身体的問題等によって行きたいところに行けないときに役立つ。内臓されているカメラやマイク、スピーカーによって周囲の人とのコミュニケーションも可能にする。
映画の上映前のトークに、登壇した武藤は「皆さん、こんばんは。WITH ALS代表の武藤将胤です。今日はオリヒメでご参加の皆さんも、リアルで参加の皆さんも、お越しいただき本当にありがとうございます。ぜひ公開前に本作品を楽しんでいってもらえたらと思います」と挨拶。武藤と共に活動・研究を続けてきたオリィ研究所・所長の吉藤オリィは「ALSという病気は10年近く前ではまだまだ世の中に知られていない病気でしたし、その患者がパソコンを操作することも不可能でした。武藤がALSになった2014年時点では、ALSになったら何もできないと言われていて、実際にそうだったのですが、一緒に活動する中でさまざまなことができるようになりました。出来るようになった内容というのは、映画を観たり、武藤の活動を通じて見てもらえたらとおもいます」と挨拶。本作を撮った毛利監督は「今日はこんな素敵な試写会を開いていただきありがとうございます。今日は全国から参加いただいているオリヒメパイロット(操作者)の皆さんに楽しんでいただければと思います」と挨拶した。
オリヒメを通じて愛知県から参加しているパイロットネームみかちゃんが「本日はよろしくお願いいたします」と一言挨拶すると、武藤は「オリヒメの皆さんからの拍手は嬉しいですよね。みかちゃん、ありがとうね」と嬉しそうに返した。
本作を撮るきっかけを質問された毛利監督は「10年ほど前にALS患者の方を取材していて、その当時はあまりALSが知られている感じではなくて、取材していた患者さんは亡くなってしまったのですが、治る未来が来るまで取材を続けると誓って。それで取材を続ける中で、武藤さんの活動が目に飛び込んできて、それまでの取材経験から患者さんは辛く過酷な日常を過ごされているということを目にすることが多かったのですが、武藤さんはそういったこともありながら自分らしさを諦めずに追及する姿、そしてエネルギッシュにパワフルにいろいろなことに挑戦される姿に、ご病気だからとかでなく、人間としての武藤将胤さんを追いかけたいという思いで取材を始めたのがスタートです」と武藤さんを取材する経緯を明かした。
毛利監督と初めて会った時のことを思い出し、武藤は「毛利さんと出会ったのは2017年のことでしたね。当時はまだ事務所がなかったので、近所のカフェで取材してもらったのをよく覚えています」と、毛利監督と一緒に当時を懐かしそうに振り返った
続いて、武藤さんとの出会いのきっかけを尋ねられた吉藤は「元々、お互いのことは知っていて。共通の友人を通じて知り合って、その時は武藤が今使っているALSの人用の視線入力のシステムを開発している最中で、ぜひパイロットテストに協力してくださいということで会いに行って、センサーを忘れて取りに帰ったり(笑)、そんなことをやりながら一緒に食事に行ったりしてました」と答えると、武藤は「共通の友人の紹介で出会って、共通点も多かったので、すぐに意気投合して仲良くなったね。お互いにテクノロジーの研究開発のプロジェクトをやっていたり、2人とも自分の服を作ってしまうところとか、あと焼肉好きだったり、通ずるとことがたくさんあるよね」と返し、吉藤は「こだわりの波長が近いんでしょうね。どこかにこだわりがあると、ここは譲れないというものがあって、テクノロジーは所詮ツールなので、使う人のこうしたい!これをやりたい!という強い想いがないとツールがあっても意味がないんですよね」と返した。
続いて、生活のすべてを赤裸々に映し出した映画の内容について、あらゆる場面を撮影されることについて武藤は「正直に言ったら、入浴シーンや夫婦の喧嘩のシーンなど見せたくない場面も多かったですよ。それでも、僕らがリアルをさらけ出すことで、ALSの理解を広げたり、そして患者さんたちに生きる希望を感じてもらいたい、そう考えて、すべての撮影シーンをOKしてきたんです」と胸の内を明かした。それを受けて毛利監督は、「武藤さんはそう言いますが、武藤さんも木綿子さんもドキュメンタリーがお好きと伺っていて、お二人のほうからドキュメンタリーだったらこういったシーンがあったほうがいいんじゃないですか?と提案していただいたりしました。総撮影時間は、1時間半が収録できるデスクが約400枚あったので、それだけの素材を今回の映画では99分にまとめました」と答えると、武藤がすかさず「全裸をさらけ出すこともありましたからね」とおどけて答えると、場内には明るい笑い声が広がった。
長年ALSに関わってきた吉藤は「ALSの人にとって、呼吸器を付けるというのは大きな覚悟が必要で。10年くらい前に仲の良かったALSの友達に『呼吸器つけないの?』、『生きていればいいことあるよ』と言いたかったけど言えなくて、そのことがずっとトラウマでした。でも今の時代なら、呼吸器を付けたらこんなことができるよ、まだこんなやり方もあるよって言える時代にすることができたなって、その例として一番最初に挙げたいのが武藤だなと思います。そして、この映画で武藤に密着してその姿を見ることで、患者さんたちがその選択をするときに背中を押せるなって思いました。自分の生き方やらしさを保っていけるかということを、その一つの道しるべを示すことができたと思います」と、この映画の魅力を伝えると、武藤も「生きるという選択肢をポジティブなものに変えたかったんだよね」と答えた。。
オリヒメパイロットのみかちゃんからの質問で「私も武藤さんと同じALSの病気で、もうすぐ呼吸器を付けて声を失うかどうするかという選択の時が近づいているのですが、父親も同じ病気で、20年ほど前はALSになると本当に何もできないような状況だったのが、武藤さんのおかげで明るいニュースが増えてきました。武藤さんは毎日多忙に過ごされているかと思いますが、疲れたなとか気持ちが沈んでしまう時にリラックス方法はありますか?」と質問されると、武藤は「僕は大好きな映画でリフレッシュしているよ。あとは常に挑戦に没頭することで悲しむ時間を打ち消しているよ」とアドバイスを送った。
最後に、武藤より「人は誰しも困難や試練に直面することがあると思います。僕自身もある日突然ALSの試練に直面しました。それでも、未来を信じて仲間を信じて、自分の未来を信じて挑戦し続けることで、きっと未来を切り開くことができると僕は信じています。この映画が皆さんにとって、未来を切り開く希望となってくれることを願っています。ぜひ、映画『NO LIMIT,YOUR LIFE ノー リミット,ユア ライフ』をお楽しみください」と締めくくった。
上映後にはオリヒメパイロットから「武藤さんの挑戦に感動しました。これからも応援しようと思いました」、「ゼロからイチを生み出す武藤さんのパワフルさに改めて驚きました。私も武藤さんのようにサーフィンに挑戦してみたくなりました」、「自分も進行性の病気に罹っていて、病状が進行するのが怖いなと思っていたのですが、武藤さんが進行する病気を怖がらずに立ち向かう姿がとても素敵でした。私も怖がらずに立ち向かっていきたいと思いました」と、それぞれの感想を、直接、武藤さんのもとに届けられる、温かい拍手と共にイベントは幕を閉じた。
映画『NO LIMIT,YOUR LIFE ノー リミット,ユア ライフ』は6/23(金)より、T・ジョイPRINCE品川、T・ジョイ梅田にて先行公開。
登壇者:武藤将胤、武藤木綿子、吉藤オリィ(オリィ研究所 所長)、毛利哲也監督
キャスト&スタッフ
武藤将胤、武藤木綿子
ナレーション:石原さとみ
企画:河野太一
演出・プロデューサー:浦本 勳
プロデューサー:大黒和典
監督:毛利哲也
協力プロデューサー:白倉由紀子、遠藤英明
宣伝プロデューサー:泉谷 裕
(2023年、日本、上映時間:99分)
オフィシャル・サイト(外部サイト)
公開表記
配給:東映エージェンシー
6/23(金)より、T・ジョイPRINCE品川、T・ジョイ梅田にて先行公開
(オフィシャル素材提供)