演劇界で注目を集める気鋭の演出家・加藤拓也が監督し、門脇 麦(『愛の渦』『あのこは貴族』)が主演を務める映画『ほつれる』(9月8日、新宿ピカデリーほか全国公開)の公開を記念して、8月28日(月)、ユーロライブにて舞台挨拶付き特別試写会イベントが開催された。上映後には主人公の綿子を演じる俳優・門脇 麦と、監督を務める加藤拓也が登壇し、役作りや映画に込めた想いを語った。
上映後の余韻に包まれるなか、登壇した門脇は鑑賞後の観客を見渡しながら「今日は楽しくお話しできればと思うのでぜひ、楽しんでください」と笑顔で挨拶しトークイベントがスタート。
本作で加藤の作品初出演となる門脇。初めて脚本を読んだときの印象について「あまりにも加藤さんの書かれた台本が素晴らしかった。こんな台本で(芝居)できるんだ、と。本読みのときはいい作品に出られるんだって役者のみんなが高揚していました」と絶賛。また、演じてみて門脇は「役者が無理してジャンプしなくても気持ちが成立する。脚本通りにやっていくとそこの感情以上に絶対導いてくれる」と加藤が書く脚本のすごさを明かした。
昨年舞台「ドードーが落下する」で演劇界の芥川賞とも呼ばれる岸田國士戯曲賞を受賞するなど、舞台の演出家として活躍する一方、脚本家(「平成物語」「きれいのくに」)、そして映像監督としても知られる加藤。本作は『わたし達はおとな』(22)に続く長編映画2作目となるが、舞台と映画、別の方法を用いて表現することについて聞かれると加藤は「映画と演劇の性格はどうしても違う。セリフ以外のところをどう語っていくのか大事にしていました」と回答。
2人の男の間で揺れ動く主人公・綿子に門脇をキャスティングした理由について聞かれた加藤は「すごくいい意味で匿名性のある俳優。スクリーンの中に“いる”なって思えることが大事だった」と明かし、オファーを受けた門脇は「同世代の俳優さんと次誰と共演したいかって話になると絶対に加藤さんの名前が出てくる。みんな天才って言ってますね(笑)」と笑顔で答え、それを聞いた加藤は「どうすればいいですかね(笑)」と笑いながら答えた。
本作のタイトル『ほつれる』の意味について加藤は「“もつれ”ている状態からもとに戻るためには正しい方向にほどけていかないといけない。ほどけている途中で間違えるとより複雑になっていく。僕たちの世代的には常に間違えられない生活をしいられている感覚に近いなと思っていて、綿子が最後に出した答えが正解なのか不正解なのか、ほつれていってはじめて分かることだと思いますね」とタイトルの理由を明かした。
印象に残ったシーンを聞かれた門脇は「シーンではないのですが、印象深いのは2週間リハーサルをして、“リアルな芝居”を芝居していることでリアルを追及しているような感覚だったんです。そっちのほうがリアルに感じるんだなと思いました」と感慨深い様子で語った。また、綿子の夫である文則役・田村健太郎との共演について聞かれると「劇中では仲がいいようには見えないんですけど」と苦笑しながら「面倒見がいいお兄さんって感じですごくいい人なんです」と語り、加藤も「ほんとにいい人です。よく話す人でもあるけど、(門脇さんがたくさん話しているときは)しっかりと聞き役になっていた」とアピールした。他の共演者とも初めての共演だったという門脇は「同年代の人たちと共演できるのって本当に幸せな時間で。華ちゃん(黒木 華)は初めてとは思えないくらいほんとにやりやすかった」と明かし、加藤も「ほんとに素晴らしい俳優さんばっかりでした」と出演者を絶賛した。
綿子を演じた門脇は「綿子には共感できないですけど、何から逃げてしまうことって生きている中ではあるし、逃げようと思えば逃げられる。共感ができなくても分かるは分かる。そこが面白いですよね」と語り、「この作品はメッセージが無い作品だと思うんですよね。そういう映画があってもいいと思うんです。こういう映画が今作られているのが刺激的で嬉しい」と映画への思いを明かした。加藤も「物語である以上、自分の合理性を押し付けないのが大事な要素だなと思います」と語った。
最後に加藤は「誰かの好きな映画の一本になると嬉しいです」と深い感謝を述べ、門脇は「加藤さんの才能をみんなに見てもらえるのが嬉しい。映画好きな人はみんな観たほうがいい作品です。ぜひ多くの方に劇場で見ていただきたいです」と呼びかけイベントを締めくくった。
登壇者:門脇 麦、加藤拓也監督
オフィシャル・サイト(外部サイト)
公開表記
配給:ビターズ・エンド
9月8日(金)、新宿ピカデリーほか全国公開
(オフィシャル素材提供)