現在ロングラン公開中の映画『アイスクリームフィーバー』。8月25日(金)から、監督千原徹也が学生時代に通ったという映画館「京都みなみ会館」での上映がスタートした。合わせて、同じ京都市南区のアイスクリームパーラ―のあるブティックホテルHOTEL SHE,KYOTOでは、映画で実際に使用された小道具などを展示したコンセプトルーム企画「UNTIL THE ICE CREAM MELTS」(アイスクリームが溶けるまで)を開催《8月25日(金)~9月30日(土)》。1日1部屋限定。実際に宿泊して映画の世界観を楽しむことができる。
そんなコラボレーション企画を記念したスペシャルトークイベントが9月3日(日)にHOTEL SHE,KYOTO1階のPARLOR SHE, SIDEで開催された。イベントには監督千原徹也と俳優松本まりかが登壇。松本の衣装は、映画でコラボレーションをしたブランドCandy Stripperで全身を固めたポップなスタイル。映画の世界観と本作で演じた優のキャラクターを表現した装いに会場からは「かわいい」と歓声が上がる。
さっそく本作に出演した感想を尋ねる千原監督に対して、「公開した後、六本木の映画館に一人で観にいったんですけど、なんかよくて。観た後の感想が『なんか(分かんないけど)いい』だったんですよ」と本作の言葉にできない魅力について語る松本。映画『アイスクリームフィーバー』は千原監督の「映画制作をデザインする」というコンセプトの元、制作方法や宣伝方法など、これまでにない実験的な手法によって作られた作品。観る人に解釈を委ねる余白のあるストーリーも特徴の一つである。松本は本作の手応えについて次のように語る。「今、こういう作品ってあまりないじゃないですか。誰が見てもひとつの答えに行き着くような分かりやすい作品が多い中で、それとは真逆をいく映画なので、今の人たちに面白がってもらえるだろうかという不安もありました。でも、皆さんの感想を見ると、想像以上に作品のことを理解してくださっていて、これは映画づくりに関わる人間として希望でしかないと思いました。分かりやすいものばかりを見ていると、答えのないものを楽しむ感性がなくなっていってしまうんじゃないかと思っていて、私は、言葉がなくても皆さんと感じ合えるものを大切にしたいと思うんです。『分かるでしょ』『分かるよね』みたいな。何も言わなくても伝わる関係って素敵じゃないですか。そこにこそ真実があると思っています」。
続いて話題は役作りに。千原監督は、カンヌ映画祭に視察旅行に行って世界中のさまざまな映画に触れた際「映画ってもっと自由でいいんだ」と感銘を受けたと語る。その着想が本作の制作に活かされていて、帰国後すぐに直観で優の役を松本さんにオファーをしようと思ったという。普段はハードな役に抜擢されることも多い松本、はじめは、いわば普通のOLである優の役をつかみきれずにいたが、髪型が決まったことで役に入り込めるようになったという。「優は、はじめはもっと普通の髪型だったんですよ。でも、なんかしっくりこなくって、撮影の前日に美容師さんと夜中まで相談して、あの特徴的なぱっつんの髪型が生まれたんです。優は大きな会社で働いている大人のOLですが、普通の役だから普通の恰好をしなきゃいけないわけじゃない。肩書や年齢に関係なく、個性をだしてもいいんじゃないかって」。
ブレイクから多忙を極める松本は、最近久々に休日を取ることができて、はじめて「何気ない日常の幸せ」を感じることができたという。そうした心境から演じた優にシンパシーを感じるという松本。千原監督は優のキャラクターについてこう語る。「優は、いろいろなことに蓋をしている人なのかもしれません。毎日一生懸命仕事をして、銭湯に入る時間を唯一の楽しみにしている。でもたぶん、お姉ちゃん(安達祐実)や、イズミ(後藤淳平/ジャルジャル)のことなど、いろいろなことが置きっぱなしにしている。そんな優を演じた松本さんが、仕事に打ち込むことで日常の大切さに気づいた。今まで目を向けられなかったことに目を向けられるようになったというのはすごくいい話ですね」。
終盤、会場からの質問で共演者との関係について聞かれた松本は、本作主演の吉岡里帆と遊園地に行って来たという話を披露。「里帆ちゃんとライブを観に行って、帰りに駅まで歩いていたら遊園地があったんです。“こんなの乗りたいよね~”“え、乗りたい! いこいこ!”という流れで行くことになって。もう夜の20時半くらいだったんですけど、2人で回数券を買って、遊園地なんて本当に久々だったので最高に楽しかったです」また、今回の会場となった京都の魅力について聞かれた際には、「日本全国の中で一番好きな街なんです」と京都愛を熱弁した。「京都って長い歴史や文化を守ってきた街じゃないですか。だから、私の中でずっと憧れがあるんです。京都には、長い時間をかけて脈々と受け継がれてきた文化がたくさんあると思うので、そういうほんものを知って、体験して、伝えていくということにすごく興味があります。もっと、たくさん学びたいなと思っているので、皆さん教えてください」監督の千原、主演の吉岡も共に京都出身ということで、京都ツアーをしようという話で盛り上がる。
9月12日に誕生日を迎える松本、「日常の一瞬一瞬を大切に、今日楽しかったなと思って生きていきたいと思います」という言葉でイベントを締めくくった。
そしてイベント後には、千原徹也監督と松本まりかの二人は京都みなみ会館を訪問。1964年の開館から60年にわたり、作家性のある監督作品やアート系、インデペンデント系の良質な作品を多く上映しており、映画ファンに愛されてきた老舗のミニシアターのひとつ。学生時代に90年代のミニシアター・ブームを経験してきた千原は、自身の初監督作『アイスクリームフィーバー』にも、ファッションや音楽など、さまざまなカルチャー要素を色濃く取り入れており、キャストの松本まりかと共に、まもなく2023年9月30日に幕を閉じる劇場を訪れて、思いを馳せた。
登壇者:松本まりか、千原徹也監督
公開表記
配給:パルコ
絶賛上映中
(オフィシャル素材提供)