イベント・舞台挨拶

『ほつれる』公開記念イベント

ⓒ2023「ほつれる」製作委員会&COMME DES CINEMA

 演劇界で注目を集める気鋭の演出家・加藤拓也が監督し、門脇 麦(『愛の渦』『あのこは貴族』)が主演を務める映画『ほつれる』(新宿ピカデリーほか全国公開中)の公開を記念して、主人公の綿子を演じる門脇麦の夫・文則を演じる田村健太郎と、監督を務める加藤拓也が登壇し、トークイベントが開催された。

 2022年に公開された映画『わたし達はおとな』から長編二作目となった本作、加藤監督は演出家として「劇団た組」を立ち上げ、「もはやしずか」「ザ・ウェルキン」で第30回読売演劇大賞優秀演出家賞、「ドードーが落下する」で第67回岸田國士戯曲賞を受賞するなど、演劇界でも注目を集める若手クリエイターの一人。田村健太郎は、舞台「ザ・ウェルキン」・「綿子はもつれる」でも起用されている。映画と演劇のキャスティングの違いについて加藤監督は「舞台『綿子はもつれる』では田村さんは中学生の役を演じていただきました。演劇のキャスティングは、登場人物と“所属”と、俳優さん自身の“所属”が一致していなくていいという前提があります。35歳の方が16歳の役柄を演じてもいい、逆に20歳の方が80歳の役柄を演じてもいい、場所もシチュエーションもそう設定してしまえば、演劇は成り立ってしまうもの。映画では、ある一定のリアリティ・ラインがあって、現実の延長線上にある感覚があって、もちろんそうじゃない映画もあるんですけど」と解説すると、本作に抜擢された田村健太郎は「今回自分がキャスティングされたことについて、“加藤くん正気かな”と思いました(笑)。加藤監督と舞台をご一緒する前で、『ザ・ウェルキン』の稽古中に声をかけていただきました。多分僕の舞台を観ていただいたからと思いますが、とても大切や役だと思いますし、門脇さんも黒木さん、染谷さんも映画界のメジャー・リーガーの方ばかりで、急に高卒ドラフトで指名された気分でびっくりしました(笑)」とキャスティングされたときの思いを振り返った。

 文則役に田村を起用した理由について加藤監督は「理屈で詰めてくる感じが田村さんぽい。田村さんもそういうところありますよね(笑)」と役柄に近いと思われたことについて、田村は「いやみんなそういうところありますよ! いつも話し合おうとする姿勢とか(笑)」と否定しつつも、監督から「話し合うと全部解決する、と思っているところとか(笑)、でも話し合っても解決しないこともありません? 話し合うことが絶対の“善”みたいに頼り過ぎているところとか。相手の気持ちを汲み取りながら歩み寄ろう、とする姿勢は見える」と振ると、田村は「文則の行動って僕も分かるんですよ。やっぱりどうにかしたいし、物事を前進されるために気持ちを伝えて、相手も気持ちも知りたいし、文則はすごく正しくあろうとするじゃないですか、それがあまり相手のことが見えていないのかもしれない。また汲み取ろうとする“自分”をあえて相手に見せてる姿勢もある」と自身の役柄について解説。また「綿子に話があるって伝えても寝ちゃったり、この日に内見ね、と伝えてもすっぽかされたり、帰って来なかったら山梨で一泊しているとか、結構文則の側から見ると実は共感してもらえるはず。文則は悪くない(笑)」と冷めきった夫婦関係が続き、綿子に執拗に詰める場面のある、自分の役柄を擁護した。
 役柄を演じる上での役作りについて田村は「自分で役柄を作り上げるとキャラクターが一面的になり過ぎてしまうため、監督と調整しました。その時監督から“言葉の意味をそのまま伝えたいわけではなく、ほぼ言っていることと演ってることが違うイメージ”とお聞きして、こういう人だからとか、こんな過去があるから、とか考えなかったです。そのシチュエーションでこれを選択する人というイメージで演じました」と答えると、加藤監督は「“言っていること”“やっていること”“思っていること”は基本的にバラバラだと思っているので、“言っていること”だけで画に映っていくよりは、バラバラな部分を汲み取ってもらいながら見えるものにしたかった。映画でも演劇でも同じなんですけど、役作りについて、あまり縛ってしまうより豊かになると思っていなくて、結果的にこういう人だったよね、と役柄が浮かび上がるようになる形が理想」と映画と演劇、ともにキャラクターを作り上げる方法を披露した。

 また、加藤監督の2つの舞台と本作をともにした田村から、門脇 麦が演じる“綿子”について聞かれると加藤監督は「綿子の役は黙っているところで役の気分をどう映すか、ということで、本作の衣装を基本的にモノトーンで組んでいるんですが、ウソをついているところで衣装にグラデーションを入れたりしました。そういうところを踏まえて門脇さんはお芝居を作り上げているので、田村さんとはまた違った役柄の切り取り方になる」と説明、また染谷将太が演じる“木村”についてもバスに乗っているシーンについて触れ、そのシーンの美しさに褒め称えた。木村の父親・哲也役の古舘寛治について、田村は10年以上前から師事、思い出を語った。綿子が夫に知らせず木村のお墓参りをし哲也に遭遇し、浮気を疑う文則から執拗に電話を鳴らされるシーンについて「電話のシーンですが、実は自分もそのお墓の付近にいて、その際に古舘さんにお会いしました。そういえば、電話をかけるところに誰もいなく、ひとりで電話をかけていたこと思い出しました(笑)」と撮影秘話を語った。

 最後に、田村からは「本当に細かい生活音とか画作りとか隅々まで行き渡った映画なのでぜひ劇場でご覧ください」加藤監督からは「たくさんの人に劇場で観ていただければと思います」とコメントし、イベントは幕を閉じた。

 登壇者:田村健太郎×加藤拓也監督

公開表記

 配給:ビターズ・エンド
 新宿ピカデリーほか絶賛上映中

(オフィシャル素材提供)

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