イベント・舞台挨拶

『オクス駅お化け』初日舞台挨拶

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 世界中で驚異的レビューを獲得した伝説のホラーウェブ漫画を原作に、構想9年を経てJホラーの巨匠・高橋 洋が脚本を手掛け、待望の実写映画化をした『オクス駅お化け』。
 大都市ソウルに実在する地下鉄の《オクス駅》を舞台に、バズらせることが全ての駆出しの記者が、ある人身事故の真相を追ううちに、不気味な怪死が次々と起こり始める……。虐げられた者たちの憎悪が蠢く、日韓合作の震撼の<都市伝説ハイブリッドホラー>だ。
 本作の公開を記念し、初日となる10月6日(金)、脚本を手がけたJホラーの巨匠・高橋 洋と、『オトシモノ』や『ルームメイト』などで知られ、高橋氏とも関係の深い映画監督・古澤 健氏をゲストに迎え、恐怖の真髄を知り尽くした師弟ホラー対談を行った。

 映画化の経緯について「ウェブトゥーンに短編として発表された漫画を長尺の映画にという依頼でした。冒頭で登場するホームドアに首を挟まれてしまう人は、実は原作者の方。すごくイケメンだったので、主人公かと思って観ていました」と笑顔の高橋。企画が動き出すとすぐに韓国・ソウルでシナハンをしたという。「オクス駅は韓国に実在する駅。そこを見て回り、撮影もそこでOKと言われて。韓国独特の寛大さを感じながら、日本では考えられないような流れで構想がスタートしました」と振り返る。原作漫画は駅にホームドアがなかった時代に描いたもの。今は、ホームドアが設置されているため、現代のオクス駅を舞台にすると、線路に引っ張り込まれたり、転落などが起きるはずはない。「どういう設定にしようか……と悩んでいた時に、実は地下に廃駅があると教えてもらい、高架上に駅があり、地下には廃駅があるという二重構造でお話作りが進んでいきました」と原作と映画との時代の違いに触れた。

 韓国のエンターテインメントを考えた時、特に10代に向けた作品であれば、シンプルにする必要があると考えたという高橋は、「脚本協力の白石(晃士)さんがシンプルな(構造)に組み直してくれそこに脚本のイ・ソヨンさんが入ってくるといった流れ。全編で番号のネタの呪いがかかったり、解けたりするという構造にしました。後半に登場する女の戦い的な部分はイ・ソヨンさんのアイデアです(笑)」と一緒に作り上げていく日韓合作らしい制作過程を説明した。

 ネタ元について「戦後まもなくに新宿で起きた“寿産院事件”。一種の託児所で起きたいわゆるネグレクトの事件です。大量の幼児が死んでしまったことを、呪いの根源の設定にできないかと考え、日本の事件を韓国に置き換えてみました」と話した高橋は、実体験もネタとして取り入れたそう。「白いワンピースの女性が線路に飛び込むのを目撃したことがあって。あの女性が最後に見たのは自分だということがすごく怖くて今でもずっと(恐怖が)残っています。自分の中に膨らんだ妄想を取り入れ、そこからシンプルにしていく工程を経て今の形になりました」と物語構築の経緯を明かした。

 「とても面白い映画だった」と感想を伝えた古澤監督は自身が怖いと思ったポイントについて「霊媒師みたいな男が、呪いにかかるかからないの違いは“運がいいかどうか”だと言う。妄想が膨らんで面白いと思った部分のひとつです」とニヤリ。劇中で驚いたのは、韓国の駅には遺体を入浴させて清潔にする湯灌師(ゆかんし)がいることと声を揃えた二人。古澤監督は「そういう仕事があることに、土着的なリアリティを感じました。頭で考えたフィクションじゃない気がして。人生の先輩的な人が身も蓋もないことを言うところとかもすごく面白かったです」と韓国と日本の駅のシステムの違いに触れつつ、楽しめた作品であると強調した。

 キャラクターがすごく面白いとも語った古澤監督が、キャラクターの配置について高橋に質問する場面も。「湯灌師や女社長のキャラクターを考えたのはイ・ソヨンさんです」と答えた高橋は、「さっき話したように、飛び込みを目撃してから、いまだにホームに電車が入ってくるのが怖いんです。ホームと車両の隙間はどうしても覗いてしまったりします。そんなところも脚本に書いていたのですが、活かして残してもらっています」とニッコリ。自身が担当したのは全体の骨格や設定が多いとし「駅は大半の人が通過する場所。止まるのは駅員さんくらいしかいない。そこでドラマを起こさなければいけないから、起こせることに限りがある。物語を組む上で難しいと感じた点です。地下の廃駅が出てきたことで結構幅が広がって。映画を観てもらえば分かると思いますが、実はオクス駅のプラットホームでは何も起きていないんです。むしろ地下で起きているという構造です」と駅を舞台にすることの難しさを語った高橋に、古澤監督も納得といった様子で大きく頷き、「題材は駅だけど、だんだん駅から離れていろいろなところに行ってると思いました(笑)。僕も『オトシモノ』のときはそうせざるを得なかった。駅に居続けるのは難しいですよね」と補足した。

 コロナ禍もあって、実際の撮影は釜山で行われた。日本と韓国での映画作りの違いを尋ねられると、「そもそも日本で実名の駅で飛び込み事故などを扱った作品は作れません。激怒されてしまいます」と答えた高橋。古澤監督も「『オトシモノ』は千葉のニュータウンで撮影しました。赤字路線だったので、協力的だったのはありがたかったけれど、カメラも線路に降りちゃいけないなど、制約はかなり厳しかったです。でも、ホームドアがなかったから、物語は起こしやすかったと思います」と当時と今との駅の安全対策の違いが物語のきっかけに与える影響にも言及。高橋は映画を観て1点だけ不満があると打ち明け「地下をうろついていた人がはねられるシーン。僕は実際に遭遇した経験があるから言えるのですが、ものすごい警笛、ものすごいブレーキ音がなります。それが恐怖感を煽ります。でも、映画にはそれがない。通過していくんだ、止まらなきゃダメじゃん!って思いました」と笑顔でツッコミを入れ、観客の笑いを誘った。古澤監督は「お客さんによって、反応するポイントが違うと思います。いろいろな人の記憶や妄想に作用する映画だと思いました」と、本作の楽しみ方にも触れていた。

 韓国では映画『リング』っぽいというコメントもたくさんあるという。この反応について高橋は「オクス駅は漢字で書くと“玉水駅”となっていい水が湧く場所という意味になります。オクス駅建造のために埋め立てをした場所だから、監督も井戸を登場させてリングっぽい感じでやってくれたんだと思います」とコメント。古澤監督は「Jホラーを気に入っている、好きだというのが伝わってくる描写がいろいろなところにあります。めくばせを感じるというのかな。観客も韓国では日本とは違う受け止め方があるのかなと思います」と日本のホラーが韓国の製作陣にも、観客にも多大な影響を与えていることを実感していると笑顔を見せながら語った。

 高橋が一番驚いたのはオープニングだという。実はおまけでエンドロールにつけるつもりだった映像を、編集時に「冒頭に持っていこう!」と変更したというエピソードを披露。編集段階での大胆な構成変更だったが、正解だったと満面の笑みを浮かべた。海外、特にアジアからの脚本依頼が続いている高橋は、MCから促され古澤監督と制作した完成したばかりの新作もしっかり宣伝。「吸血鬼の話です。『オクス駅』も新作もヒット中の清水 崇監督の『ミンナのウタ』や白石監督の『戦慄怪奇ワールド コワすぎ!』の勢いに乗って行けたらと思っています」とアピールし、トークイベントをしめくくった。

 登壇者:高橋 洋(脚本)×ゲスト:古澤健(映画監督)

公開表記

 配給:松竹ODS事業室
 全国公開中

(オフィシャル素材提供)

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