この度、京都シネマと自主上映や配給などを行うグッチーズ・フリースクールが、月に一度の映画上映イベントを行う「きょうとシネマクラブ」を発足し、2023年12月8日から、第一回イベントを開催することが決定した。「きょうとシネマクラブ」では、毎月1週間限定で、未公開映画や今では視聴困難な作品でありながら、こんな時代だからこそ観たい映画を上映する。
きょうとシネマクラブについて
コロナウイルスの感染拡大などによる映画観劇人口の減少や、さまざまな時代の変化でミニシアターの経営はますます苦しくなり、また、知名度が低い映画や小規模な作品は、その内容の素晴らしさにかかわらず、上映される機会がだんだんと減っている現在。しかし、厳しい状況だからこそ、映画館の個性を活かした独自のプログラムとミニシアターならではのチャレンジングな企画を始めようと思い立ち、京都シネマとグッチーズ・フリースクールがタッグを組んで、「きょうとシネマクラブ」を発足した。規模や知名度、新作、旧作にこだわらず、今こそ見たい映画作品を上映し、これまであまり語られることのなかった、あるいは途切れてしまった映画の可能性を楽しく考えていく、そんなシネマクラブを目指している。そんな「きょうとシネマクラブ」の第一回目の特集は「女性と映画」。女性監督の作品だけでなく、女性と関連が深いサブジャンル映画も公開する。
上映作品について
初回上映作品は、『ハート・ロッカー』で史上初の女性アカデミー賞®監督賞受賞者となったキャスリン・ビグロー監督(モンティ・モンゴメリーと共同監督)の長編映画デビュー作品かつ、『アメリカン・サイコ』『スパイダーマン』でお馴染みのウィレム・デフォーのデビュー作で、日本劇場初公開の『ラブレス』(上映期間:12/8~12/14)。現代アーティストと映画監督の二つの顔を持つビグロー監督にとって、本作『ラブレス』はアートの世界と映画製作のギャップを埋めるつなぎのようなものだったと後のインタビューで語っている。
二作目は、1962年のジェーン・トラヒーのベストセラー作品『 Life with Mother Superior』が原作である、全寮制カトリック女子校を舞台とした思春期にある女性の心の機微を描いた『青春がいっぱい』 (上映期間:1/5~1/11)。監督のアイダ・ルピノは多くのTVシリーズと映画で監督を務め、女性として史上二人目の監督組合入りを果たした。
三作目は、ミシェル・ウィリアムズがお気に入り映画のひとつとして挙げ、都会派女性映画として伝説的な作品として名高い 『ガールフレンド』(2月上映)。ニューヨーク出身の監督・俳優であり 、フリーランスのカメラマンとしても活躍、 数多くのドキュメンタリーの製作を手掛けたクローディア・ウェイル監督による本作は、グレタ・ガーウィグやレナ・ダナムなど多くの女性映画制作者らに多大な影響を与え続けている。
そして四作目は、『プロミシング・ヤング・ウーマン』を彷彿とさせる、レイプリベンジもののカルト作品『天使の復讐』(3月上映)。監督はニューヨーク・ブロンクス出身の鬼才アベル・フェラーラ。本作がデビュー作となる、エキゾチックな顔立ちで独特な存在感を示す当時弱冠17歳のゾー・タマリスは必見。公開当時は厳しい批評が多かったものの、アンダーグラウンドやインディペンデント映画のファンの間で高く評価されている作品である。
上映作品
『ラブレス』The Loveless
(1981年、アメリカ、上映時間:82分)
監督:キャスリン・ビグロー/モンティ・モンゴメリー
脚本:キャスリン・ビグロー/モンティ・モンゴメリー
撮影:ドイル・スミス
出演:ウィレム・デフォー、J・ドン・ファーガソン、マリン・カンター、ティナ・ロツキー
作品紹介
日本劇場初公開の本作は、キャスリン・ビグロー監督の長編映画デビュー作で、低予算のインディペンデント作品。1959年のアメリカ南部の閉鎖的な田舎町を舞台に、突然現れたヴァンスたちという異分子が、住民たちの平凡な日常に不穏な緊張感を漂わせていく様子が描かれる。本作は主人公ヴァンスを演じるウィレム・デフォーのデビュー作でもある。不良バイカー集団のリーダーとして強い男性像を演じながら、内面の動揺を繊細に演じた。凶暴性と繊細さを合わせ持ち、独特の色気を放つ(悪としての)キャラクターはその後のウィレム・デフォーの代表的な特徴の一つとなり、『ストリート・オブ・ファイヤー』(1984)や『L.A.大捜査線/狼たちの街』(1985)でも圧倒的な存在感を示すこととなった。町の娘テレナ役のマリン・カンターは鼻っ柱は強いがどこか影のある少女を好演。その後ロバート・ダウニー・Sr監督のコメディ作品(『ストレンジ・ピープル』[1990])への出演を最後に俳優を引退。本作は数少ない出演作の一つとなった。
『青春がいっぱい』The Trouble with Angels
(1966年、アメリカ、上映時間:112分)
監督:アイダ・ルピノ
脚本:ブランチ・ハナリス
原作:ジェーン・トレイヒー
撮影:ライオネル・リンドン
出演:ヘイリー・ミルズ、ジューン・ハーディング、ロザリンド・ラッセル、ビニー・バーンズ
作品紹介
1930年代にイリノイ州シカゴ近郊のカトリック校で過ごした自身の高校時代を描いた、ジェーン・トラヒーの1962年のベストセラー『Life with Mother Superior』が原作となっている。入学当初は修道女たちがなぜその道を選んだのか理解ができないメアリーであったが、彼女たちの愛や寛大さ、献身の心に触れ次第に感化されていく様子が描かれる。ヘイリー・ミルズは、豊かな感情表現で思春期の微妙な心の変化を瑞々しく演じた。アカデミー賞®子役賞を受賞するなど、それまでは子役スターとしてディズニー映画への出演が多かったヘイリー・ミルズにとって、本作はコメディ俳優としての出発点となった。ロザリンド・ラッセルは、ゴールデングローブ賞を5回、トニー賞を受賞するなど映画と舞台の両方で活躍した俳優。自身もカトリック学校に通った経験をもち、厳しくも愛のある修道院長を好演している。
『ガールフレンド』Girlfriends
(1978年、アメリカ、上映時間:88分)
監督:クローディア・ウェイル
脚本:ヴィッキー・ポロン
撮影:フレッド・マーフィ
出演:メラニー・メイロン、アニタ・スキナー、イーライ・ウォラック、クリストファー・ゲスト
作品紹介
ヴィッキー・ポロンとの共同脚本は、ウェイル監督自身の体験に基づくものである。自身もカメラマンとして活動していた時期があるなど、 主人公スーザンと重なる点も多い。夢を追いかけながらも、周りの同年代女性の成功や結婚が気になってしまう、若い女性の揺らぐ心の内をリアルに描いている。不完全で親近感のある主人公に、共感を覚える女性は少なくないだろう。
資金不足のために完成までに3年の月日を要するなど製作には困難が伴ったが、公開後は女性の友情や大都会で成功を夢見る若い女性をテーマとした作品の先駆けとして高い評価を得る。本作の影響は、その後の女性製作者たちの間に広く波及し、特にグレタ・ガーウィグやレナ・ダナムの作品には顕著に見られるとされる。
1978年、本作はロカルノ国際映画祭で銅豹賞(最優秀女優賞)、トロント国際映画祭でピープルズ・チョイス賞を受賞した。1979年、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞でダヴィッド特別賞を受賞。同年、ゴールデングローブ賞と 英国アカデミー賞にもノミネートされた。
『天使の復讐』Ms.45
(1981年、アメリカ、上映時間:80分)
監督:アベル・フェラーラ
脚本:ニコラス・セント・ジョン
撮影:ジェームズ・モメル
出演:ゾー・タマリス、ピーター・イェーレン、エディッタ・シャーマン、ヴィンセント・グルッピ
作品紹介
性犯罪の被害者となった主人公が男への復讐を果たしていくスリラー映画。当初は自分を守るために仕方なく殺人を犯す主人公であったが、徐々に殺しへの強い意志をもって街に繰り出すようになる。その姿は男を殺すという使命を背負った女戦士を思わせる。内面の変化を表すように、気弱で化粧っ気のなかった主人公が、バッチリと化粧をして刺激的な服装に身を包んだ姿は、まるで別人のように美しくもある。また、自らの正義を果たすために殺人をも犯してしまうという人物像は、本作がインスパイアを受けているとされる『狼よさらば』(1974)、『タクシードライバー』(1976)に共通している。エキゾチックな顔立ちで独特な存在感を示すゾー・タマリスは、若干17歳にして本作がデビュー作である。彼女はフェラーラ監督の実生活のパートナーでもあり、俳優のほかに音楽家・政治活動家としても活動していたが、その後深刻な薬物中毒となり、37歳という若さでこの世を去った。本作は、劇場公開時には厳しい批評が多かったものの、現在ではアンダーグラウンドやインディペンデント映画のファンの間で高く評価されている。
「きょうとシネマクラブ」概要
料金:1,500円 均一 ※サービスデー適応外
上映日:『ラブレス』12/8~12/14、『青春がいっぱい』1/5~1/11、『ガールフレンド』2月、『天使の復讐』3月
会場:京都シネマ
主催:京都 シネマ +グッチーズ・フリースクール
公式 X(旧Twitter):Kyoto_Cinema_C
公式 Instagram:kyoto_cinema_c
(オフィシャル素材提供)