イベント・舞台挨拶

『サタデー・フィクション』初日舞台挨拶

©YINGFILMS

 ロウ・イエ監督最新作『サタデー・フィクション』が11月3日(金・祝)に公開初日を迎えた。
 本日、初日舞台挨拶を行い、キャストのオダギリジョーと中島 歩、そして2019年以来4年ぶりに来日を果たすロウ・イエ監督と、脚本家・プロデューサーを務めたマー・インリーが登壇した。2019年にヴェネチア国際映画祭で初お披露目となりながら、コロナ禍により日本公開が延期されていた本作。公開を心待ちにしていた登壇者が、ついに日本の観客へ作品を届けることができる喜びや、中国の大女優コン・リーをはじめとする国際的なキャストが集結した撮影のエピソードを語った。

 4年ぶりの来日となるロウ・イエ監督はにこやかに登壇。「久しぶりに日本に来ることができてとても嬉しいです」と日本の観客へ挨拶をした。脚本とプロデューサーを務めたマー・インリーも「公開初日に映画を観に来てくださってありがとうございます」と感謝を口にした。オダギリは「いま外で出番を待っていたんですが、映画の上映が終わった時に皆さんの拍手が聞こえました。なかなか映画館で拍手が沸き起こることはないと思うので、とても嬉しく思っています」と挨拶。中島はコロナ禍で映画の公開が延期となったことに触れ「撮影から6年ほどが経ちましたが、あれから劇的に世界が変わって、日本の観客の皆さんがどのように映画を感じられるのか、とても興味深いです」と述べた。

 物語の舞台は1941年の太平洋戦争前の魔都上海。世界各国のスパイが暗躍する時代を描いたことについて、ロウ・イエ監督は「もともと原作がありまして、それを基に映画化しました。原作に惹かれたのも舞台が上海だったからです。上海は私にとって特別な場所なので、またいつか映画を撮りたいと思っていました。そして上海に今もある有名な劇場、映画の中にも登場する蘭心大劇院(蘭心劇場)には両親の仕事の関係で幼い頃からよく出入りしていました」と説明した。

 本作は主演のコン・リーをはじめ、台湾のマーク・チャオ、フランスのパスカル・グレゴリー、ドイツのトム・ヴラシアなど、世界で活躍する国際的なキャストが集結している。さらに日本からはオダギリジョーと中島 歩が参加しているが、豪華なキャスティングについて聞かれると、「オダギリジョーさんのキャスティングは最初から決めていました。原作に出てくる役とは少し設定が違うのですが、原作を読んでオダギリさんにお願いしたいと考えていました。それからコン・リーさん、そしてパスカル・グレゴリーさんの出演が決まり、本格的に物語ができあがっていきました」とはじめからオダギリのキャスティングを意図していたことを明かす。続けて、「物語を作っていくうちに、バイオレンスを担うキャラクターが欲しいとなり、中島さんが演じた梶原を新たに追加しました。初めて中島さんにお会いしたのはオンラインの画面の中でしたが、どこからどう見ても文学青年だったので、この役を任せていいのか不安になったのですが、本人が『やれます』と言ってくれたので任せることにしました」と中島のキャスティング裏話を披露。すると中島さんは「そう言うしかないですよね(笑)。ロウ・イエ監督のファンでしたし、絶対出演したかったので無理やり信じてもらいました」と笑っていた。

 上海での撮影について話が及ぶと、オダギリは「上海に行って、最初にキャストのみんなで集まったのは、催眠術の講義でした。劇中に催眠術が出てくるんですが、それをまずは皆で学ぼう、と。催眠術の先生が来て、実際に術をかけていくんです。国際的に活躍していてベテランのキャストが集まっていましたが、みんながみんな『本当に……? これで大丈夫なの……?』という不安な気持ちが思いっきり顔に出ていて(笑)。みんな同じように戸惑っていたので、不安な気持ちを共有して仲良くなれました」と意外すぎる馴れ初めを明らかにした。それについて中島は「僕は途中からチームに参加したんですけど、入ったらその気まずい状況で『一体何が起きているんだ?』と。シュールな状況で、すごく怖かったです(笑)」と本音を吐露。ロウ・イエ監督はふたりの言葉を聞いて「今お話しになったことは、僕の撮影現場の大きな秘密だったんだけどな。バラされちゃった」と恥ずかしそうにしていた。

 中島は「僕が演じた梶原は狙撃の名手なんですが、ピストルの音がとても大きくて。撮影中ずっと驚いていました」と撮影の舞台裏を明かすと、ロウ・イエ監督は「役者にはリアルを体験して、リアルな演技をしてほしいので、僕の撮影現場ではなるべく本物に近い演出を心がけています。大変なことばかりでしたが、僕を信じてついてきてくれた俳優の皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです」と気持ちを語った。

 そしてオダギリも「ロウ・イエ監督の現場では、1つのシーンを何度も何度も繰り返し撮影するんです。リアルを追求する監督のこだわりが、画面に表れていると思います」と映画の魅力を明かした。本作で海外デビューを果たした中島は日本の撮影とは全く違う環境に、「本当に現場ではずっとオダギリさんに助けてもらっていました。オダギリさんがいて本当によかった……。ありがとうございました」と先輩俳優のオダギリに改めて感謝を述べ照れさせていた。

 イベントの最後には、ロウ・イエ監督が日本の観客へ向けたメッセ―ジが求められたが、恥ずかしがり屋の監督は「僕はもうこれ以上話すことはないので、オダギリさんと中島さんにお任せしたいと思います」とキャストへ無茶ぶり。オダギリは「台本になかったんだけどなあ~」と困った顔を見せつつ、「モノクロの映画を映画館で観られるというのは贅沢な体験だと思いますし、音楽もほとんど排除されていて、すごく洗練された映画になっています。これは絶対ケータイで見るような映画ではないですし、早送りなんてもってのほかですよね。この贅沢な体験をぜひ劇場で楽しんでいただければと思います」とメッセージを残し、イベントは幕を閉じた。

 登壇者:オダギリジョー、中島 歩、ロウ・イエ監督、マー・インリー脚本家・プロデューサー
 MC:汐月しゅう

公開表記

 配給:アップリンク
 全国順次公開中

(オフィシャル素材提供)

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