第70回サン・セバスティアン国際映画祭で主演俳優賞に輝いたフランス映画『Winter boy』(12月8日全国公開)。その来日PR舞台挨拶が11月7日(火)に都内映画館で実施され、主演のポール・キルシェ、プロデューサーのフィリップ・マルタン、そして音楽を担当した半野喜弘が出席した。
主人公リュカを演じたポールは、主演2作目にして第70回サン・セバスティアン国際映画祭の主演俳優賞を最年少で受賞した逸材。しかも母は映画『トリコロール/赤の愛』のイレーヌ・ジャコブで父も名優ジェローム・キルシェ、兄弟も俳優という俳優一家の出身であり、本国フランスでは“新たな新星”と将来を期待されている。
本作はメガフォンを取ったクリストフ・オノレ監督の自伝的要素を多く含んだ青春ドラマ。約300人が参加したオーディションの中から大役を射止めたポールは、念願の日本公開に先駆けてのお披露目に「この場所に立てて、そして日本の皆さんに作品を受け取っていただけて本当に最高です!」と主演映画を引っ提げての初来日に好青年スマイルを見せた。作品についてポールは「オノレ監督の自伝的映画ではあるし、彼の実人生が源だと感じられる物語。でもオノレ監督が最も興味を持っていたのは、今日の若者を語ることだったはず。オノレ監督は自分の持ち物や読んだ本、手袋などを僕に渡してくれたりして、違う形で彼の人生を僕に継承してくれた」と解説した。
プロデューサーのフィリップ・マルタンにとって、オノレ監督作品を手掛けるのはこれで6作目。大役を射止めたポールについて「彼が来たのはオーディションが始まって3ヵ月目くらい。すでに200人近くの候補者を見ていた中で『もう一人候補者がいる』と言われてテスト・ビデオで見たのが、ポールだった」と回想。そのテスト・ビデオはポールが自宅でリラックスしながらギターの弾き語りなどをしている様子を捉えたものだったそうで「映像を見た時にオノレ監督と二人で『この人だ!』と思った。まさに一人の俳優が出現した瞬間だった」と一目ぼれだったという。
一方、音楽を手掛けたジャ・ジャンクー監督の『山河ノスタルジア』をきっかけに、オノレ監督から直々に作曲のオファーを受けたという半野。しかし大まかなテーマを教えられただけの状態で「作品をイメージした写真や詩的な文章、ある青年がギターを弾き語りしている映像を渡されて、撮影前までにテーマ曲も作ってほしいと言われた。6曲くらい作って送った後にラッシュ・フィルムを見せてもらったら、主演はギターを弾き語りしていた青年で、しかもその母親役がジュリエット・ビノッシュだった。すべてを後から知りました」と思い出し笑い。さらに「作品の全貌が分かったところで新しい曲を作るのかと思いきや、『最初に送ってもらった曲のすべてがパーフェクトだった』と言われて追加作曲もなし。20数年間映画音楽をやってきたけれど、初めて撮影後に一曲も作らずに仕事が終わりました」とまさかの舞台裏を明かして、観客たちを驚かせた。
これにポールは「撮影中は監督も含めてみんなで半野さんが作曲してくれた音楽を聴いていました」と振り返り、プロデューサーのフィリップ・マルタンも「こんなにスムーズに事が運んだのは初めて」と半野の才能に感謝すると、半野は「次は映像を観てから曲を作りたい、とオノレ監督に伝えておいてください」と二人に伝言を託していた。
ポール扮するリュカの母親を演じたのは、フランス映画界の大女優ジュリエット・ビノッシュ。ポールは「共演期間は短かったけれど、偉大な女優で感銘を受けました。撮影初日から強烈な存在感と物語にリアリティを与える力を持っていて、母性的感覚で僕に接してくれた。山中ロケでは夜になると僕らに手料理を振舞ってくれました」と大女優の優しさに感激していた。
そんな本作の日本公開は12月8日。主演のポールは最後に「悲劇を乗り越える若いエネルギーと家族のエネルギーを本作から感じてほしい」と日本の観客に向けてアピールしていた。
登壇者:ポール・キルシェ、半野喜弘、フィリップ・マルタン
公開表記
配給:セテラ・インターナショナル
12月8日(金)よりシネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
(オフィシャル素材提供)