少年たちの瑞々しい初恋を描いた実話ラブ・ストーリー『シチリア・サマー』(原題:Stranizza d’Amuri)が、松竹配給にて11月23日(木・祝)より全国公開する。
11月21日(火)、映画の公開を記念し、小説家の中村 航をゲストに迎えた特別トークショーが開催された。代表作「100回泣くこと」や「トリガ―ル!」など、手掛ける作品の多くが映像化され話題の小説家・中村 航。数々の恋愛小説を世に贈り出してきた彼は、本作をどのように観たのか? 自身の初恋エピソードを披露する場面も。恋愛をテーマに映画を深堀りし、観客も大満足のイベントとなった。
上映後、観客の大きな拍手で迎えられた中村は、会場を見渡し、「今日はよろしくお願いします」と挨拶。イタリアで大ヒットを記録した映画がいよいよ公開となるが、初日の11月23日は中村の誕生日ということで、意外な共通点が明らかとなった。
はじめに映画の感想を問われると、「とてもおもしろかったです。最初から最後まで目が離せませんでした。2人の恋愛の美しさや無邪気さの背景に悲しみがあって、すごく考えさせられました」と印象を語る。「ニーノが天使みたいで、これは好きになりますよね」と続け、主人公を演じたキャスト2人の魅力についても触れた。とくに、劇中に何度も出てくるニーノとジャンニがバイクで二人乗りをするシーンがお気に入りだそうで、「どのシーンも綺麗でしたが、バイクで二人乗りするシーンがすごく印象に残っています。僕が小学生の頃、実際にイタリア製のバイクがあって、それが懐かしくて。2人乗りっていいですよね。『100回泣くこと』でも坂を下る場面で、バイクの押しがけ(※エンジンを車両で押して始動させる手段)のシーンがあるんです」と自身の代表作と重ねながら映画を楽しんだという。ほかにも、「セリフで心に残っているのが、後半、ジャンニとの関係に気づいたニーノの叔父さんが『秘め事にしていれば100年だって続けられる』とニーノに言うセリフがあり、当時の2人を救える言葉はそれしかなかったんじゃないかと心に残りました」と語った。当時の南イタリアは保守的な風土が色濃く、2人の純粋な愛を受け入れることができない家族の葛藤も描かれている中、「最初はニーノの甥、トトの目線が気になって。ジャンニと母親の関係性や、街にたむろしている不良とかいろいろな人の視点が描かれていて、それが土地の呪縛のようで、どこにも行けない感情や行動が浮き彫りにされているように感じました」とコメントした。
また、普段恋愛小説を執筆する際は自身の経験を見つめ直し、文章にスライドさせているそうで、「やっぱり、リアリティが命だと思う。人を好きになる理由は書けば書くほど嘘臭くなるんです。言語化した時はすでに恋に落ちているので、その前の段階の、理由を言語化したい」と持論を明かした。「今回も、1980年代、小学生の頃の自分はどう過ごしていたのか思い出しながら観ていたんですけど、りえちゃんっていう女の子が席が近くて、放課後に漫画を持ってきて見せてくるんですよ。何だろうと思って見たら、“中村りえ”って名前が書いてあったんです。彼女が結婚を意識した瞬間だったんですかね(笑)。5年前くらいにりえちゃんに会ったんですけど、僕のこと好きだったよね?って聞いたら、とんでもない、かつむらくんが好きだったと(笑)」と微笑ましい初恋エピソードを明かし、会場の笑いを誘った。
最後に、中村は「最後の2人の決断は、前向きな気持ちや愛を選んだと思うんですけど、第三者としてはどうにかうまくやってくれ……!と願いながら観てしまいました」と2人の強い意思が感じられるラストについて言及した。小説家らしい観点で映画を解説し、観客も大満足の様子で大盛況のうちにイベントは幕を閉じた。
登壇者:中村 航
MC:奥浜レイラ
公開表記
配給:松竹
2023年11月23日(木・祝) 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか公開
(オフィシャル素材提供)