この度、映画祭最終日となる11月26日(日)に、「第24回東京フィルメックス」の授賞式が実施された。
東京フィルメックス・コンペティションを始め、各賞の受賞結果が発表され、べトナム、イラン、モンゴル、韓国の作品が賞に輝き、今年も未知の作品との出合いに盛り上がった会期が終了した。
タレンツ・トーキョー・アワード2023受賞結果
まず始めに発表されたのは、「タレンツ・トーキョー・アワード」。「タレンツ・トーキョー」とは、2010年より東京フィルメックスと同時期に実施されている映画人育成事業のこと。東京都、アーツカウンシル東京、タレンツ・トーキョー実行委員会の共催、およびベルリン国際映画祭との提携、ゲーテ・インスティトゥート東京の協力によって実施されている。今年のフィルメックスにも、卒業生たちの作品が多くランナップされ、豊かな才能が世界へ羽ばたき、そしてフィルメックスという場所へ戻ってきている。
スペシャル・メンションは、「Free Admission」(アンジェリーナ・マリリン・ボク(Angelina Marilyn BOK)/シンガポール)と、「Water Has Another Dream」(オーツ・インチャオ(OATES Yinchao)/中国)へ贈られ、「タレンツ・トーキョー・アワード2023」は、「彼がこの東南アジアらしい物語を語る時、彼の個性や即興性、自信を見ることができ、私たちは、また少し彼の物語を知り、彼の物語を好きになります。この才能を発見できたことが喜ばしく、完成するのが楽しみな作品」という評価された、「Mangoes are Tasty There」(サイ・ナー・カム(Sai Naw Kham)/ミャンマー)が受賞。サイ・ナー・カムからは、ビデオメッセージが寄せられ、「プロジェクトが止まってしまったこともあったが、サポートをもらって再び進めることができた。ありがとうございました」と感謝の言葉を述べていた。
観客賞は『冬眠さえできれば』が受賞!
11月25日(土)までの上映作品を対象に、観客の投票で決定する観客賞は、モンゴルの作品『冬眠さえできれば』が受賞! ゾルジャルガル・プレブダシ監督の登壇は叶わなかったが、「たくさん人との愛と、親切の気持ちと、そういうたくさんの努力で作られた映画。
あまりにも恵まれていない環境で生活する子どもたちの声を映画で叫びたい、彼らによい機会を与えられる映画をつくりたい、映画を作ってたくさんの人に見せたい、モンゴルの社会やこういう環境に済んでいる子どもたちにいろいろなよい影響を与えられる社会を作りたい、というたくさんの人の願いで作られた映画。その心が観客の皆さんにも届いてとても嬉しい」と、社会問題を変えたいという願いを込めた作品だったことにも触れたメッセージが披露された。
学生審査員賞は『ミマン』が受賞!
学生審査員賞とは、審査員の専任から賞の運営まで、全て東京学生映画祭の手で行われる賞。「巧みな脚本と映像設計に魅了された。開発が進み変わっていく街の中で。 記憶を紡ぎ、覚えていることが、世の中に対する希望なのではないか」という選評から、韓国の作品『ミマン』が受賞!
登壇したキム・テヤン監督は、「映画の先生にいわれた言葉がある。映画を作るときはたくさんの人が関わって、そして、映画が公開されると、観客の皆さんもその一員になる。そのこと自体、本当にロマンチックで大切が気持ちなので、申し訳ない気持ちでなく、ありがたい感謝する気持ちで撮りなさいと。これからも映画を撮り続けられるように頑張りたい」と、映画作りの原点ともいえる言葉に触れ、今後への意欲も語った。
審査員特別賞は『冬眠さえできれば』、『クリティカル・ゾーン』の2作品へ!
審査員特別賞は2作品に贈られた。まず、1作品目は「的確な映画的表現と嘘のない観察で、苦闘する若者たちの姿に寄り添っている」と評された、モンゴルの作品『冬眠さえできれば』が受賞。観客賞と合わせて、2冠に輝いた。
ゾルジャルガル・プレブダシ監督からのメッセ―ジでは、「東京フィルメックスは、とってもスペシャルなところ。2017年にタレンツ・トーキョーで、企画段階で参加してタレンツ・トーキョー・アワードをもらった。それが大きな励みになり、この映画を作り終えることができた。また、プロデューサーのフレデリック・コルヴェともタレンツ・トーキョーで初めて出会い、この映画を一緒に作った。そんなフィルメックスで賞をもらえることが何よりも本当に嬉しい」と、フィルメックスとの深い縁に感謝していた。
共同プロデューサーのバトヒシク・セデアユシジャブと出演俳優のガンチメグ・サンダグドルジは来場が叶い登壇。サンダグドルジは「実は初めて映画に出演した。すると、その映画は、カンヌまで行き、それから世界をまわって今回東京まで来られたことを嬉しく思っている。モンゴルの子どもたちがよい教育を受けられるように、それから対立がなくなるようにと、メッセージを発信している映画なので、今後ともこのメッセージが世界に発表されて、良くなっていくことを願っている」と初出演だったことも明かし、セデアユシジャブは「初めてプロデューサーを務めた。今までドキュメンタリーに関わってきたが、子どもの教育がよくなり、平等な教育が受けられるようにというメッセージがあった映画なので、すぐに参加を決めた」と話した。二人とも、監督と同じ強い願いを持って参加したことが改めて伝わってくる挨拶だった。
2作品目は「制約の中で、この映画作家はユニークで説得力のある方法で、攻撃的な体制に立ち向かう力強い映画芸術作品を作り上げた」と評されたイランの作品『クリティカル・ゾーン』が受賞。アリ・アフマサデ監督の登壇は叶わなかったが、「オルタナティブなシネマ、アンダーグラウンド・ムービーに、そちらに注目してくれて、認めてくださって嬉しい。いつの日かその場に参加してお会いできたら。それを楽しみにしている」とメッセ―ジを贈った。
最優秀作品賞は『黄色い繭の殻の中』が受賞!
最高賞である最優秀作品賞には、「映画における永遠の探求を、野心的かつ愛おしげに描いている」と評された、ベトナムの作品『黄色い繭の殻の中』が受賞! ファン・ティエン・アン監督は、映画祭が上映する機会をくれたことへの感謝を述べ、「つねに、独立映画を応援してくださって、独立映画の存在を支持していただいていることへ、感謝している」と、映画を愛する人が集うフィルメッックスの観客への気持ちも伝えた。また「特に今回はプロではない役者たちが頑張ってくれた作品でもあるので、彼らのために捧げたい。この賞は名誉な賞で、誇りに思っている。この誇りを彼らに捧げたい」と、チームへのあふれんばかりの思いも伝えた。
講評
式の最後に、審査員のワン・ビンから講評が贈られた。映画祭を振り返り、「今回フィルメックスに集まった映画というのは、アジアの若い映画の作り手たちの素晴らしい作品の数々だった。若い力のある監督たちが作品を作り続けていることが、このフィルメックスでよく分かった。このアジアの国々の作品というのは、本当にだんだんと良くなっていると思う。以前は限られた国や地域の中で作られた作品しか見られなかったが、今では、アジアの異なる地域、異なる言語の素晴らしい作品が各地で出てきたこと、これが最近の大きな特徴だと思う」とフィルメックスを通じて、アジア映画の成長を感じたと話した。また、これまで作品は出品していたが、ワン・ビン自身がフィルメックスへ参加するのが初めてだったと明かし、審査員全員が非常に審査を楽しんだとして、今年の映画祭を締めくくった。
「第25回東京フィルメックス」開催情報については、後日公式サイトなどで発表予定となっている。