イベント・舞台挨拶

『枯れ葉』トークイベント付先行上映

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 12月15日(金)よりユーロスペースほか全国公開されるアキ・カウリスマキ監督(『ル・アーヴルの靴みがき』『希望のかなた』)の最新作『枯れ葉』(英題:「FALLEN LEAVES」)の主演を務めるフィンランドの国民的女優アルマ・ポウスティ(『TOVE/トーベ』)が初来日。来日を記念して、12月6日(水)にアルマ・ポウスティとアキ・カウリスマキ監督の大ファンである俳優・松重 豊のトークショー付き『枯れ葉』先行上映が行われた。

 主演作『枯れ葉』を引っ提げて来日したアルマ・ポウスウティ。「こんにちはー! ありがとう!!」と日本語で満面の笑みを浮かべ、「実は今日はフィンランド106年目の独立記念日。そんな特別な日をカウリスマキ映画の雰囲気の中で皆さんとご一緒できて光栄です」と満席の会場に向けて挨拶した。続いて、アキ・カウリスマキ監督の大ファンである、俳優・松重 豊が大きな花束を手に登壇。その髪型は、カウリスマキ監督の『レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ』にオマージュを捧げたリーゼント・スタイルというこだわりぶり。「僕は自分が出ている映画の舞台挨拶にも行かないほうですが、アキ・カウリスマキ監督の作品ならば髪の毛をおっ立てても出たいと思った。とにかく大ファンでございます」と熱弁すると、アルマはその髪型に「ファンタスティック!」と大笑い。松重は「アルマさんに笑ってもらえるなんて……幸せな気持ちです!」と大興奮だった。

 約6年ぶりのアキ・カウリスマキ監督復帰作『枯れ葉』を先んじて鑑賞した松重。「引退すると言った人がもう一度作るというのは日本でもあることですが、よくぞ戻って来ていただいたと思った。そしてどんなテイストになるのかと思ったら、『パラダイスの夕暮れ』、『真夜中の虹』、『マッチ工場の少女』のいわゆる労働者三部作に連なるものだった。しかもアルマさんがカティ・オウティネンを上回る演技をされていて……魅了されました」と絶賛した。一方のアルマは「引退撤回を一番驚いているのはアキ監督自身だと思います。意欲的に盛り上がり、脚本も指が勝手に動いて書いた結果、労働者3部作に連なる4作目が生まれたそうです。そして監督業に戻ってきただけではなく、私たちのような新しい俳優を迎え入れて作ってくれたのも素晴らしいことだと思います」と述べた。

 松重は、アキ・カウリスマキ監督の作品の魅力について「世の中が分かりやすい作品を要求している中で、それとは逆行している作風ではあるけれど、81分という短い中に物語が凝縮されている。そこに置かれた役者の表現力は問われるものです。言葉で説明したり過剰な演技をしたりすることなく、一瞬一瞬の表現に満ち溢れている空間がアキ・カウリスマキ監督の作品。そこに触れることで僕らの信じる表現が世界のどこかにはまだあるぞと思わせてくれる」と熱弁。

 そして松重は「今回の作品の脚本の分量はどのくらいですか? 早口でしゃべれば日本だったら15分で終わるセリフ量ですよね?」とアルマに質問。これにアルマは「確かに、私の人生の中で出合った一番短いページ数の脚本でした」と笑わせつつ「でも珠玉の一冊であり、素晴らしい文学であり詩的で、慎重に選ばれた言葉が使われています。アキは沈黙の巨匠。一行のスーパー・スターだと思います。ちょっとした言葉にそのキャラクターの性格やヒントが散りばめられていて、足すことも引くこともできない。まさにピュアで正直な脚本」と教えてくれた。「でもひとつだけ書かれていなかったのはウインクのシーン。あれは、撮影のときにアキが『やってくれ』と言ったんです」と笑顔で打ち明けると、松重は「これは貴重な話を聞けた」と大興奮。

 そして、松重の興味は尽きず、俳優ならではの視点で「監督からは具体的にどんな演出や指示があるのですか?」と質問。アルマが「セリフは覚えるべきだが、読みすぎず練習や稽古はするなと言われました。そして撮影は基本的にワン・テイクで終わります。俳優としてはとても怖いことですが、唯一のオンリー・ワンの瞬間がフィルムに焼き付けられます。それは二度と出来ないもの。すべてがワン・チャンス。そして、アキはカメラを覗いて、すべての配置を自分で動いて決めて、準備が揃うとカメラの横でアクション!と声をかける。モニター・チェックも一切しません。なぜならば何が撮れているのかを把握しているからです」と巨匠の演出術を明かすと、松重は「ワン・チャンス……。その緊張感、僕も好きです!」と大喜びだった。

 今度はアルマが松重に「日本でもワン・テイクで撮影する監督はいますか?」などと質問。これに松重は「北野 武さんなんかはそうです。テストというか、もう回していこうか……みたいな感じです」と答え、「テストを重ねて固まっていく芝居もあるけれど、一回しかできないものを切り取って映画が出来上がるほうが僕はいい。究極的なことをいうと、ドキュメンタリーに近いものになればいいと思っている」と俳優としての理想像も告白した。

 そして、松重はアキ・カウリスマキ監督作への出演も熱望。「もしそんなチャンスがあるならば、旅費から何から全部出してでも行きます。セリフなしだっていい! バーのウェイター役でも何でもいいから!」と前のめりになると、アルマも「松重さんはすでに髪型の準備も出来上がっているので、ぜひとも出演してほしいです」と太鼓判を押していた。

 また、来年6月には、『枯れ葉』の日本での公開を記念し、アキ・カウリスマキ監督が共同オーナーを務めている映画館「キノ・ライカ」への訪問やヘルシンキ近郊の撮影スポットめぐり等、カウリスマキファンの心をくすぐる「キノ・ライカとアキ・カウリスマキの世界スペシャルツアー」が実施されると聞いた松重は、「スケジュール何とかならいかな」と本気で悩む姿を見せた。

 まだまだ質問し足りないと漏らす松重に、アルマは「このような素敵な機会をありがとうございました。とても楽しかったです!」と感謝を伝え、大盛況のうちに舞台挨拶は幕を閉じた。

 登壇者:アルマ・ポウスティ、松重 豊

公開表記

 配給:ユーロスペース
 12月15日(金)よりユーロスペースほか全国ロードショー

(オフィシャル素材提供)

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