映画『笑いのカイブツ』公開記念初日舞台挨拶が都内で行なわれ、キャストの岡山天音、仲野太賀、松本穂香、板橋駿谷と瀧本憲吾監督が登壇して作品について語った。上映後の登壇となったので、かなり突っ込んだトークが繰り広げられた。
本作は、コンテンツ配信サイト「cakes」で連載され、書籍化された“伝説のハガキ職人”ツチヤタカユキの半生を描いた同名私小説を映画化。世の中の不条理にもがきながらも「笑い」に人生を捧げる不器用すぎるツチヤ(岡山)と、その熱量に突き動かされていく周りの人たちの人間ドラマが描かれる。
主人公で、15歳から6年間、一心不乱に大喜利番組に投稿し続けたツチヤを演じた岡山。実在の人物で、笑いに取り憑かれた男を演じることになり、岡山は「どうアプローチすればいいか、考えながらツチヤタカユキの生き様がよりクリアにストレートに届くように演じました。ツチヤさんご自身ではなく、あくまでも小説の主人公を演じていました」と撮影を振り返る。
クランクインから数年たち、岡山は「今日という日を心待ちにしていました。ちょっとびっくりしました。味わったことない感慨で。この日を心待ちにしていたので、無事にこうして皆さんに観ていただけてとても幸せ」としみじみ。
瀧本監督は初の長編映画で「天音くんや他の役者たちと話し合いながらコミュニケーションを取らせてもらいました」と話し、十分の手ごたえがあった様子。「公開できて、誇りに思います」と感慨深い様子。
ツチヤが想いを寄せるヒロインのミカコ役を演じた松本は「新年になって初めての映画って自分の中で大事にしているので、皆さんもこの映画で新しい年をスタートしてもらえたら……」と笑顔を見せる。
劇中でキーパーソンになっているピンク役の菅田将暉について、松本は「眼の前で見ていて、スゴいなって……。何回聞いても菅田さんのピンクの言葉が響きすぎて、映画を観ているかのような迫力がありました。映画になった時にはスゴいシーンになるんだろうなと確信しました」と菅田との印象的なシーンをあげ、撮影時を振り返っていた。
劇中、仲野と板橋が演じる人気芸人ベーコンズの漫才の演技指導は『M-1グランプリ2023』で王者となった令和ロマンが行っている。
ベーコンズの西寺役を演じた仲野は「令和ロマンの『M-1』優勝はびっくりしました。なんて幸先がいいんだ、と。今日の舞台挨拶で言うことが決りました。『僕らの漫才指導は令和ロマンさんがやっています』」と笑顔で話した。さらに、「手取り足取り教えてもらいました。ネタの落としどころや観客の笑い待ちのタイミングなども解説してもらいました。めちゃくちゃ心強かったです」と令和ロマンに感謝たった。
西寺の相方・水木を演じた板橋も「そう! チャンピオンに教えてもらいました。スゴイことです」とご機嫌な様子。高校生の頃にM-1出場経験があるという板橋。「中川家さんが優勝した年です。(予選で)マイクに手が当たったことだけがウケました(苦笑)」と話した。また、満員の観客を見渡した板橋は「センスがいい! この映画を選んでくれて!」と客席に感謝の気持ちを伝えた。
実際にふたりが観客の前で漫才を披露するシーンも。撮影では一発撮りでフル尺の漫才を披露。観客の笑い声は足していないそう。仲野は漫才師役を演じるのは、初めてだと明かし、「気持ち良かったですね。なんか漫才っていいなって改めて思いました」と話す。板橋も「舞台には2人っきり。漫才やっている人は楽しいだろうなと思いました」と演じたことに充実感をにじませた。
後半、事前に映画公式SNSで募集したファンからの質問に答えるコーナーも。「お互いの演技を見て“役者のカイブツ”だと感じたのは誰?」という質問に、岡山の名前が挙がった。仲野は「ツチヤがジュースを買いに行くシーンの後ろ姿が印象的。セリフもないし表情も見えないけど、走りながらコケる後ろ姿がめちゃくちゃ“ツチヤらしさ”を体現していていて、天音ってホント、いい俳優だなとしみじみ思いました」と話す。松本も「天音さんはツチヤを演じていてずっと苦しそうだった。闘っているんだろうなと思いました。尋常じゃない集中力でした。すごいお芝居を目の前で見させてもらいました」と役者として”憑依型”の岡山を絶賛していた。
最後に岡山は能登半島大地震を受けて「大変な時期を過ごしている方たちもいると思いますが、皆さんが安心してエンタメを味わえる日が一刻も早く来ることを祈っています」と客席に向かって呼びかけた。
登壇者:岡山天音、仲野太賀、松本穂香、板橋駿谷、瀧本憲吾監督
(取材・文・写真:福住佐知子)
公開表記
配給:ショウゲート、アニモプロデュース
全国公開中
(オフィシャル素材提供)