2月9日(金)公開の映画『夜明けのすべて』(配給:バンダイナムコフィルムワークス=アスミック・エース)が、現地時間 2/15(木)~25日(日)開催予定の第74回ベルリン国際映画祭【フォーラム部門】に正式出品されることが決定した。
ドイツのベルリンで毎年2月に開催されるベルリン映画祭は、カンヌ国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭と並ぶ世界三大映画祭のひとつとされ、日本の映画人では巨匠・黒澤 明や山田洋次をはじめ、2021年に『ドライブ・マイ・カー』で世界的評価を得た濱口竜介監督の『偶然と想像』が銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞、行定勲が『パレード』(10)、『リバース・エッジ』(18)にて【パノラマ部門】国際批評家連盟賞を、荻上直子が『彼らが本気で編むときは、』(17)で【パノラマ部門】テディ賞審査員特別賞を受賞するなど、名だたる映画監督たちが評価されてきた。
三宅 唱監督作品としては、2019年の『きみの鳥はうたえる』(フォーラム部門)、昨年の『ケイコ 目を澄ませて』(エンカウンターズ部門)以来2年連続、3回目のベルリン国際映画祭選出となり、自身の長編監督作品が全てベルリン映画祭に招待されていることになる。本作『夜明けのすべて』が選出された【フォーラム部門】は、新しい視点を含む大胆で革新的な作品を集めた部門で、強い個性や多様性のある物語が選出されている。“生きづらさ”を抱えた二人の男女の特別な関係性を描いた本作が、国境を越えてどのような視点をもって評価されていくのか、注目が集まる。
さらに本作で上白石萌音と共に主演を務め、パニック障害を抱えた青年・山添くんに扮した松村北斗は、昨年声優として出演した『すずめの戸締まり』(22/新海 誠監督)が第73回ベルリン国際映画祭に正式出品されており、今年で2年連続の招待となる。松村は同作で、アニメ界のアカデミー賞とされる第51回アニー賞で声優賞(映画部門)へのノミネートを果たしたばかりで、声優初挑戦にしての快挙に世界中から脚光を浴びている。
この度のベルリン国際映画祭出品決定にあたり、三宅 唱監督、主演の松村北斗、上白石萌音、さらには原作者の瀬尾まいこより、以下コメントが届いた。
コメント
三宅 唱監督
『夜明けのすべて』原作者である瀬尾まいこさんに感謝申し上げます。そして、すべての俳優、すべてのスタッフの美しい仕事を誇りに思います。ベルリンを皮切りとして世界中のさまざまな人々に『夜明けのすべて』を無事に届けられるよう、またどんな反応があったかお知らせできるよう、引き続き大切に進めていきます。国内外問わずさまざまな状況下を生きるみなさんが心穏やかに映画を愉しめるような世の中に少しでもなることを心より願っています。
松村北斗
この歴史あるベルリン映画祭への参加が決まったことを『夜明けのすべて』チームの一員としても松村北斗個人としても本当に誇りに思います。
この映画は大きな世界の小さな街の話です。
誰もが生きづらさを感じる今に、生きることが少し楽になる願いを込めた映画です。
そんな映画が世界に届くことを本当に幸せに思います。
世界中の誰しもが自分なりの生きづらさを抱えていると思います。
そんな方々に願いを込めながら参加したいと思います。
上白石萌音
映画の一員として、そしてこの映画を好きないち観客として、とても嬉しいです。
描かれているのは、世界のどこで暮らしていても感じ得る心の機微です。
作品の温もりが海を超えて、誰かの心をすこしでも軽くできますよう願っています。
瀬尾まいこ
ベルリン映画祭への正式出品、本当におめでとうございます。
三宅監督、スタッフの皆さん、出演者の方々が丁寧に、小説を温かく深い世界にして下さったことに感謝しています。
私たちの生きている今の世界を離れることなく、すぐそばにいてくれる見た人の心をそっと照らしてくれるこの素敵な映画を、海外の方にも見ていただけると思うと嬉しいです。
Barbara Wurm(Berlinale Forumディレクター)
男性はパニック障害を抱え、女性は極度のPMSに悩まされている。彼らの会社は社員にとんでもないものを提供する。というとそのようには聞こえないかもしれないが、実は小津安二郎の世界そのものなのだ。ここの人々は気配りができ、気づかないうちにお互いに良いことをしている。
私も、私のチームも皆この作品が大好きって、もう言ったかしら?
また、映画祭への出品情報と合わせて、本作のロング予告が解禁された。
この度解禁となるロング予告は、山添くんの「男女の友情が成立するかっていうどうでもいい話をする人がよくいますよね。それって相手にもよるし答えなんてないし、僕はどうでもいいと思うんですよ。ただ明らかなことがひとつだけ分かりました」という印象的なセリフから幕を開ける。同じ部屋にいるのに、友達や恋人のような親密さではなく、少し不思議な距離感と空気感に包まれたふたりがこの物語の主人公、山添くん(松村北斗)と藤沢さん(上白石萌音)である。
月に一度のPMS(月経前症候群)で自らをコントロールできなくなり、薄暗い部屋でひとり思い悩んだり、雨の中のバス停で倒れ込み警察官に介抱される藤沢さん。パニック障害を抱えたことで電車に乗れなくなるなど以前のような日常生活を送れなくなった山添くん。自分ひとりだけではどうすることもできない“生きづらさ”を抱えるふたりの姿がありありと映し出される。栗田科学という同じ職場で働くふたりは、やがて互いの“生きづらさ”を知り、“生きづらさ”を抱えた者同士、職場や日常生活で相手を救いたいという気持ちが芽生え始める。「自分の発作はどうにもならないんですけど、3回に1回くらいは藤沢さんのこと助けられると思うんですよ」と伝えた山添くんは、PMSの症状が出ている藤沢さんの気をそらして、心を和らげるために洗車に誘い、温かい飲み物を差し入れる。一方で藤沢さんは、山添くんの恋人・大島千尋(芋生 悠)から「藤沢さんみたいな方が会社にいてくれて良かったです。ありがとうございます。彼と向き合ってくださって」と感謝の言葉を受け取るようになる。さらには、ふたりを見守る職場の同僚や前職の上司との触れ合いを通じて笑顔を見せる様子も描かれ、「いつか夜明けがやってくる、その時まで。」というテロップが示すように、ふたりの関係はもちろん、それぞれの心もまた“夜明け”に向かって変化していることが伺える。ロング予告の最後は、帰宅中の路上で藤沢さんが「また明日」と声を掛け、互いにひとりの日常に溶け込む姿で幕を閉じる。まるで、夜が明けたら、今日よりも良い明日が待っていると言わんばかりに。
「この世界は動いている。今ここにしかない闇と光。全ては移り変わっていく。新しい夜明けがやってくる」という藤沢さんの言葉は、あるシーンのナレーションの一部だ。この言葉の通り、移ろいゆく世界で生き、向き合い、互いに支え合うことで、ふたりもまた少しずつ移り変わっていく。そんなかけがえのない瞬間がたくさん詰まった本作。いつかやってくるふたりの“新しい夜明け”は一体どんな景色なのだろうか、ぜひ劇場で見届けてほしい。
公開表記
配給:バンダイナムコフィルムワークス=アスミック・エース
2024年2月9日(金) ロードショー
(オフィシャル素材提供)